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第1541話 名無しさん 投稿日: 03/05/27 04:02 ID:XBMUtU5B
「羊を食べると」
 今日の給食は羊の焼肉、皆美味しそうに食べています。けれど一人だけ箸もフォークも
手もつけていない人がいます。ニホンちゃんです。これでも色んな食べ物を口にする彼女
ですが苦手なものもあります。
 「あれ、食べないの?」
 「うん、ちょっと・・・ね」
 苦笑いを浮かべ答えます。給食のあとのお昼休みニホンちゃんに近づく一つの影。
 「ニホンちゃん、羊が嫌いダスか?」
 オージー君でした。
 「ううん、そういう訳じゃないけど、ちょっと・・・ね」
 はにかんで答えます。その顔にどきっ、としながらもオージー君本題に入ります。
 「それならワスがご馳走してあげるダス。ニホンちゃんに羊の美味しさを教えてあげる
ダスよ」
 「ええっ、そんなあ、いいわ、なんか悪いし・・・」
 「そんなことはないダス、きっとわかってくれるダス。大船に乗ったつもりでどーーー
ーーんと来るダスよ」
 「あうう、じゃあお言葉に甘えて今度の・・・」
 「今日の放課後、楽しみにしてるダスよおーーーーー!!」
 「ええっ、ちょっと、ちょっと待ってよお」
 「やったダスやったダス、ニホンちゃんがワスの家に来てくれるダスーーーーーッ!!」
 「な、なんでこうなるの!?」
 かくしてその日の放課後ニホンちゃんはオージー君の家に行くことになりました。
学校から飛んで帰り料理の仕度をするオージー君、何時にも増して上機嫌です。鼻唄
なんか歌いながら肉を切っています。
 「えらく上機嫌やな」
 調理を手伝う相棒のニュージー君が言いました。
 「え、そうダスか?」
 「ああ、顔に書いてまっせ。ニホンちゃんが来てくれるのが嬉しいて」
 「う、うひひひひひいーーーーーーー」
 なんともしまりのない顔です。実は彼ニホンちゃんに是非羊を食べてもらいたい事情
もあります。
 (ニホンちゃんが羊を食べる→ワスの家の羊肉を買う→ワスの家が儲かる)
 わかりやすい、まあそしたら彼女が鯨も食べなくなるし、とかそんな腹算用もあります。
 (そしてニホンちゃんともっと親密なお付き合いを、うえへへへへへへ)
 ぴんぽーーーーーーーーーーーーん
 にたにた想像して笑ってるとチャイムが鳴りました。
 「あ、来たダスな」
 家のドアまで行き大喜びで開けます。ドアを開けた瞬間オージー君の顔に失望と脱力
が浮かび上がりました。
ドアの前にはニホンちゃんがちょこんと立っていました。けれど立っていたのは
彼女だけではありませんでした。
 「オージー、羊パーティーやるんだって?僕も入れてくれよ」
 「料理なら僕の専門アル」
 「ああら、それはわたくしのことかしら」
 「さてオージー、何を食べさせてくれるのかしら」
 「羊と聞くと僕も我慢できなくて」
 「私も。世界三大料理の一つだし羊にはうるさいわよ」
 「・・・・・・僕もいるよ」
 「なんか皆行きたそうだったから呼んだけど。いいよね?」
 「う、うん、いいダスよ」
 あからさまに嫌な顔をしましたが皆家の中に入れました。
 「おーーーーい、早く出せよ。腹減ったぞお」
 テーブルに着くなりアメリー君が言います。
 「客を待たせるのは失礼アルぞ」
 「レディーを待たせるなんて。だから貴方は田舎者と言われるんですのよ」
 いきなり押しかけて図々しいですがオージー君無視して料理に取り掛かります。
そして数分後ニホンちゃんに分厚く焼いた羊のステーキを出します。それを一切
れ食べてニホンちゃんが一言。
 「・・・ごめんなさい。匂いが」
 ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
 そうです、実は彼女羊肉の匂いが苦手だったのです。それに気付かぬオージー君、
うかつでしたね。
 
大体羊だけ焼いたまま出すなんて料理を舐めているアル。オージー、ちょっ
と厨房を借りるアルよ」
 単に羊肉を焼いただけの料理を見てチューゴ君が席を立ちました。
 「羊をニンニクや生姜で味付け野菜と一緒に炒めてまた味付けをする。これが
羊の野菜炒め。食べるよろし」
 お箸で取って口に入れます。
 「美味しいーー、匂いもしないし」
 ニホンちゃんも皆も満足そうです。
 「・・・チューゴ君、僕のは?」
 「羊は『美』のもととなった程のご馳走アル。その美味しさを知るよろし」
 「けれどそれは野菜に頼りすぎですわね。わたくしの『ラム肉香草パン粉焼き
マヨラー仕立て』如何かしら」
 フランソワーズちゃんでした。むっとするチューゴ君を尻目に自作の料理を出
します。ニホンちゃん大喜びです。
 「おーーーっほっほっほっほ、これが我がフランソワーズ家の料理他の家には
真似出来なくてよ。ね、エリザベス」
 「・・・ふんっ」
 すっかり白鳥玲子か杜若あやめ状態のフランソワーズちゃんに対し口に肉を頬
張りながらエリザベスちゃんぷいっと向こうをむきます。
 「美味しそう。だから僕にも」
 「おっと、僕の料理も食べてくれよ」
 なんと料理が苦手と言われるアメリー君も参戦です。
 「ラムのコーラ煮。ちょっと変わってるけどいけるよ」
 皆恐る恐る口にしますが意外なことに好評です。
 「・・・アメリー君まで・・・」
皆羊料理に舌鼓を打っています。ここで真打登場。
 「ではあたしのシシケバブ。とくとご賞味あれ」
 「美味しいーーーー!」
 「うちの料理は煮込んだものが多いけどどう、焼いたのもいけるでしょ」
 「うん!」
 「・・・僕にも一本・・・」
 「まあ羊は匂いが強いから敬遠してしまうんだろうけどこうしたら匂い
もない。どうニホンちゃん、うちのボーズだよ」
 「これも・・・いい!」
 「あの、だから僕にも・・・」
 ニホンちゃんすっかりご満悦の様子。見ればゲルマッハ兄妹やベトナちゃ
ん、インドネシアちゃん、イン堂君、メヒコ君、マカロニーノ君にアテネち
ゃんと町の東西を問わずいつの間にか来ています。そしてそれぞれの羊料理
を出し合い食べ合っています。羊は大人気みたいです。
 「・・・僕よりも」
 
 しかしここに面白くない人が約一名。
 「ノオオオオオオオオオオーーーーーーーーーなんでワスの考えた計画は
いつもこうなるダスーーーーーーーーーッ!!!!!」
 オージー君でした。主催者なのにもう皆から忘れ去られていました。皆彼
そっちのけでわいわいと飲み食いとお喋りに興じています。
涙がこぼれます。それはぷらーーん、ぷらーーんとクラッカーの様に揺れています。
 「まあそんなに落ち込まへんように。晴れる日もあるさかい」
 ニュージー君が慰めます。
 「けど、またワスの影がこれで・・・」
 涙がぷちっ、と切れて床に落ちます。
 「そんなに言うんならこれ持ってニホンちゃんのとこへいきなはれ。」
 さっと一品の料理を差し出しました。
 「これは・・・」
 「さっきあんたがニホンちゃんに出した奴を蜂蜜とキーウイで味付けなおしたやつ
や。これなら彼女も褒めてくれるで」
 「ニュージー君・・・」
 「おっと、礼はいらん。古い付き合いやしな」
 「・・・申し訳ないダスーーーーッ!!ニホンちゃーーーーーん!!!!」
 ニュージー君がくれた料理を両手にのせてニホンちゃんの席へ駆けていきます。
 「・・・ほんま世話がやけるやっちゃ」
 ニュージー君肩をすくめ苦笑いを浮かべます。ところで
 「だれか僕にも食べさせて・・・」
 完全に忘れ去られている人もいました。

解説 名無しさん 投稿日: 03/05/27 04:14 ID:XBMUtU5B
今回は料理ものです。ソースは
http://www.29notoyo.co.jp/reship.htm
http://user.komazawa.com/~t_ochiai/htm/d01.htm
http://homepage1.nifty.com/yurico/topics/1/ethnic.mongolkai.htm
です。羊料理がこれ程多いとは思いませんでした。今回カナディアン君
の扱いが酷いですがお許し下さい。ちなみにオージー君とニュージー君
のモデルはいなかっぺ大将の風大佐ェ門と西一です。

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