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第1549話 名無しさん 投稿日: 03/06/02 04:58 ID:fZFVJTo0
                 「雪の宴」
 はじめに 
 この物語を読まれる前に永月弥生さんの『ニホン草紙』と『こっぱーさんの秘密基地』の
『ニホンちゃんアニメ化キボンヌ』のキャスティングを読まれるといいかもしれません。


 「さ、姉さん行こう」
 「うん」
 ある金曜の夕方ウヨ君にせかされニホンちゃんが玄関を出ます。
 「皆待ってるよ」
 「そうだね、なにしろ滅多にないパーティーだものね」
 ニホンちゃんは桜色の着物、黒髪に桜をつけています。ウヨ君は羽織袴で胸に菊です。
 「ロシアノビッチの奴、また酒ばかり出すんじゃないだろうな」
 「まさか、今回はサンクトペテルブルグ館の記念パーティーでしょ。そんなに無茶苦茶じ
ゃないと思うよ、多分」
 そういいつつ二人は門を出ました。するとそこには一艘の橇がありました。
 「お待ちしておりました、日之本さくら様、武士様。我がロシアノビッチ家まで送らせて
頂きます」
 品の良い服装の男性が一礼しました。
 「まさかこれに乗って」
 「あの、お池は?」
 二人は恐る恐る答えます。
 「ご心配なく。この橇は海も渡れます故」
 「・・・水陸両用なのね」
 かくして御者に引かれ二人はロシアノビッチ家へと向かいました。
 二人はサンクトペテルブルグ館通称『海館』の前に着きました。他のロシアノビッチ家の建物とは
全く異なる西欧風の建物が目の前にありました。
 「うわあ、綺麗ねえ」
 「ああ、奴の家のものとは思えない位繊細な外観だな」
 「あ、二人共今来たとこ?」
 タイワンちゃんが声をかけてきました。小柄ながら均整のとれた身体を紅のチャイナドレスで包み
梅のイヤリングをつけています。
 「あ、タイワンちゃんも招待されてたの」
 「うん、本当は予定に入ってなかったらしいけど」
 「そうだったの」
 ニホンちゃん少し哀しげな表情を浮かべます。
 「まあ細かいことは言いっこなし。さ、早く入ろ」
 「うん」
 館の中は豪華に装飾されたダンスホールでした。三人をロシアノビッチ君が出迎えます。
 「ようこそ、我が館へ。存分に楽しんでください」
 酒も飲まず端整にタキシードを着こなした彼はまるで別人でした。金の髪と蒼氷色の瞳が貴公子然
とした容貌を引き立てます。
 「あれほんとにロシアノビッチ?」
 「どう見ても別人だよお」
 ホールにはすでに皆がいました。
まずアメリー家の男三人組がいました。三人共タキシードを着こなし見事な男伊達、
アメリー君の胸には黄色の薔薇、クーロイ君はハナビシソウ、パツキン君はモクレン
です。
 「こんばんわ、三人共決まってるね」
 アメリー君が声をかけてきました。
 「ありがと。アメリー君達も格好いいよ」
 「なんかニホンちゃんにそう言ってもらえると嬉しいね」
 「ほんと。エリザベスなんかシカトだもん」
 「こんなイケメンが目の前にいるのにな」
 ちょっと古い表現ですね。
 「そういう軽さがよくないアル」
 チューゴ君がきました。やはりピシッと着こなしています。ただしいつもの人民服
やクンフー着ではなくこれまたタキシードです。胸には白牡丹です。
 「チューゴ君・・・」
 「ん、どうしたアルか?」
 「いえ、普段と雰囲気違うなって・・・失礼ね。御免なさい」
 「別にいいアル。」
 すっと口元に微笑を浮かべます。
 「まあ今日は楽しもうよ。ロシアノビッチが折角招待してくれたんだし」
 マカロニーノ君軽やかに、かつ颯爽と登場。デージーの花を口にしています。
 「ニホンちゃん、今日は何時にも増して綺麗だね。そんな君に出会えてぼかあ幸せさ」
 すすす、と手をニホンちゃんの肩に持っていきます。
 「マ、マカロニーノ君?」
 「今宵は二人で心ゆくまで楽しもうよ。時の流れなんか無視してね」
 右手でニホンちゃんを抱き寄せ左手をその白いあごに持っていこうとします。しかし
その手を誰かが掴みました。
  「全く何時まで経っても進歩のない奴だ」
 ゲルマッハ君でした。やはりタキシードですが金色の髪を後ろに撫でつけ前髪を数本垂らした
その姿はさながら哲学者です。胸には青の矢車菊。
 「兄上、どうした」
 アーリアちゃんもやってきました。
 「え・・・・・・」
 彼女の姿を見て皆息を飲みました。薔薇の様に赤いドレスに青いブレスレット、髪飾りは赤の
矢車菊です。いつものやもすれば棘棘しい印象はなくまるで一輪の花でした。
 「ど、どうしたのだ皆。私の顔に何かついているのか?」
 皆の思いもよらぬ態度にアーリアちゃんも驚いています。
 「い、いえ。なんかいつもと違うなあって」
 「うん、なんか別人みたい」
 「そ、そうか?私は何も変わらないが」
 知らず知らず顔も赤らんでいます。そこへお嬢様コンビ参上。
 「ああら皆さんここにいらしたのね」
 「招待されてなかったかと心配しましたわ」
 エリザベスちゃんは白のダイヤをあしらい胸に深紅の薔薇を飾ったドレス、フランソワーズち
ゃんは青のドレスに白手袋、髪と胸には赤い百合です。
 「流石に皆さん見事に着こなしてますわね」
 「コルシカ、貴女も見習いなさい」
 「ふんっ」
 コルシカちゃんは白礼服に赤いタイ、青い上着という服装です。ドレスでないのがフランソワ
ーズちゃんにとってしゃくのようです。
 「ああ、橇が寒かったわ」
 トル子ちゃんは黄色のフリルいっぱいのドレス、手には赤いチューリップです。髪はアップです。
 「けど中は立派ね。綺麗な建物だし」
 インドネシアちゃんもきました。純白の軽めのドレスとドレスと同じ色のジャスミンが日に焼
けた肌と短めの黒い髪によく合います。
 
「ふう、ロシアノビッチ家は寒いわ。けど来たかいがあったわ」
 紫苑ちゃんは緑のドレスに同じ色の手袋、砂色の髪にオリーブの花、手にはオリーブの実が。
 「そうだね、僕には丁度良い寒さだけど」
 「ん?誰?」
 「また忘れられた・・・・・・・・・」
 カナディアン君はタキシードに楓ですか。ケベックちゃんはフランソワーズちゃんと同じ格
好ですね。もうお兄ちゃんを無視して彼女のほうへいっちゃいました。
 緋色の法衣のヨハネ君もきました。紫のドレスの香ちゃん、白のラスカちゃん、金のベガス
ちゃんも一緒です。それぞれ胸にハナズオウ、ワスレナグサ、ヤマヨモギがあります。
 「やっぱりみんな綺麗ねえ。なんかわたし負けそう」
 「そうでもないよ、ニホンちゃんも可愛いよ」
 タイワンちゃんがフォローを入れます。
 「可愛いい?」
 「い、いや、綺麗、かな」
 「よかった」
 乙女心も複雑ですね。そこへタイラン君にエスコートされベトナちゃんがやってきました。
 「さ、行こう」
 「え、ええ」
 ベトナちゃん何処か恥かしそうです。けど青いドレスに胸の大輪の淡い赤の蓮は彼女の白く
すらりとした身体によくあっています。

 「皆さん」
 皆楽しくお喋りに興じているとロシアノビッチ君がマイクで挨拶を始めました。
 
挨拶も終わり一同乾杯です。次々と出される料理を楽しみお喋りに興じています。
 「皆楽しんでる?」
 ロシアノビッチ君が皆のところにやってきました。
 「わざわざ遠いところから来てくれたんだ。存分に楽しんでね」
 お酒の入っていない彼は没落したとはいえやはり良家の子弟です。振る舞いも紳士的
て気品があります。
 「ニホンさんも皆も今日は楽しんでね。僕の家のささやかな宴を」
 言葉使いまで違います。
 「おい、あれ本当にロシアノビッチか?」
 「影武者かもしれないアルな」
 「まさかとは思うけど・・・」
 「ひょっとしたら悪いものでも食べたんじゃないの?」
 長い付き合いのはずですが普段飲んだくれている彼ばかり見ている一同ひそひそと囁
きあっています。
 「ああらロシアノビッチ君今日は礼儀正しいわね」
 フラメンコ先生が出てきました。炎のように赤いドレスに手にはこれまた真っ赤なカ
ーネーションです。
 「せ、先生何言ってるんですか。僕は何時でもこうですよ」
 ロシアノビッチ君妙に焦っています。妹達の前だからでしょうか。どうも違うようです。
 「ああら、そうかしら。いつもの腕白振りはどこへいったの?」
 フラメンコ先生意地悪そうに笑います。
 「困ります先生、苛めないでくださいよ」
 「あら、私苛めてなんかいないわよ」
 「どうかしたんですか?」
 ひょっこりと小柄な女性が顔を出してきました。その人の顔を見てロシアノビッチ君顔
がお酒を飲んだ時よりもずっと凄く顔を赤らめました。
その人はハプスブルグ先生でした。小柄ながらふくよかな身体を鳥の羽の様に白く
軽いドレスで包み両手は絹の手袋で覆われています。その大きい胸はドレスと同じ色
のエーデルワイスで飾られています。
 「あ、ハプスブルグ先生」
 「はい」
 清らかでとても澄んだ天使の様なソプラノの声でした。
 「あ、あ、あ、あの、今日の宴楽しんで頂いているでしょうか?」
 「ええ、とても」
 「そ、そそ、そうですか。でしたら光栄です」
 どうも声がどもっています。何か先生に言おうとしますが中々言えないようです。
そこへ彼を呼ぶ声がしました。
 「あっ・・・」
 一瞬とても残念そうな顔をしました。
 「先生、それではこれで失礼します」
 挨拶してそそくさと行ってしまいました。けれど皆(ハプスブルグ先生以外)気付い
ていました。行く彼の表情がやけに嬉しそうなのに。
 次は屋外でダンスです。まず灯りが消されその中でパートナーが選ぶのです。
 「やった、ニホンちゃんだ!」
 ニホンちゃんのパートナーはパラ雄君でした。彼は思わず跳び上がってしまい
ました。
 「ううん、フランソワーズか」
 「何か文句ありまして?」
 アメリー君はフランソワーズちゃんとですか。
 「少しは上手になりまして?」
 「真っ暗闇で選ばされるとは思わなかったアル」
 チューゴ君はエリザベスちゃんとですか。
 「よりによって貴様か」
 「つれないなあ、ハニー」
 アーリアちゃん、あからさまにマカロニーノ君を睨みます。
 「よ、よ、よ、宜しくお願いします」
 「はい」
 ロシアノビッチ君はハプスブルグ先生とです。手が震えていますね。
 「あ」
 上から何か降ってきました。
 「雪・・・・・・・・・」
 雪でした。白く冷たい氷の結晶がちらちらと降ってきます。
 「綺麗ね」
 「うん、この中で踊るのもいいね」
 雪の中を皆優雅な曲に合わせて踊りはじめました。曲と踊りに合わせ結晶も空
を舞いました。
皆がダンスに興じている頃吹雪が荒れ狂うロシアノビッチ家の広大な庭を一人さ迷い歩
く人がいました。言わずと知れたカンコ君です。
 「ニダーーーーーーーーッ、ロシアノビッチの奴ウリを招待しないとはどういうつもり
ニダーーーーーッ!!」
 服はあちこち凍っていて杖をついています。
 「歩いていこうにもこの庭は広すぎるニダーーーーー!しかも熊や虎や狼までいるなん
てどういう庭ニダーーーーーーーーーーーーッ!!」
 恨のエネルギーで身体を温めているのでしょうか。元気ですね。
 「池で水を飲もうとしたら恐竜まで出てきたニダ!危うく食われるところだったニダ!
ロシアノビッチにしゃ(略」
 どうも相当酷い目にあったみたいですね。
 「腹が減ったニダ!食い物が欲しいニダ!」
 すると目の前に一匹の小さい猪がいました。
 「・・・あれを喰うニダ」
 そろり、そろり、と近寄ります。
 「もう少しニダ」
 そこへ後ろからズシーーーーーーーーン、ズシーーーーーーーーンと足音が近づいてき
ました。
 「ニダ?」
 振り向いたカンコ君の顔が恐怖に引きつりました。
 アイゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーーーーーー
 アイゴーーーーーーーー
 アイゴーーーーーー
 アイゴーーー
 アイゴー
 いつもの叫びが吹雪の中に消えていきました。
 宴は日曜の夜に終わりました。最期の挨拶も終わり皆が館で記念撮影をしよう
としたその時です。一台の巨大な橇が何かを運んできました。
 「何?」
 「はい、先程庭で面白いものを発見しましたので皆さんにお見せしようと思い
運んできました」
 橇に乗っていた使用人の人が言いました。
 「面白いもの?」
 「はい、これです」
 「ええっっっ!!!!???」
 一同それを見てロケット花火の如く跳び上がりました。
 それは巨大な氷の塊でした。氷の中で巨大なマンモスが子供を襲う敵を踏みつ
けていました。その足の下には断末魔の凄まじい形相のカンコ君がいました。
 「これは一体どういう現象だ?」
 「絶滅してるだろ、マンモスって」
 「この馬鹿何やったんだよ」
 「まともな事出来ないのかよ」
 「ほんとに斜め上行くなあ」
 「どうしろっていうんだよ、おい」
 氷を溶かされカンコ君は復活しました。けれどしばらくの間霜焼に悩まされた
ようです。マンモスについてはロシアノビッチ君は何も言いません。ひょっとす
ると今も彼の家の庭にいるかもしれません。

解説 名無しさん 投稿日: 03/06/02 05:22 ID:fZFVJTo0
156を
今回のソースは
http://www.ru-travel.com/evt.htm
http://www.cc.rim.or.jp/~matu-mik/baruto.htm
にてかの国が招待されなかった話とUMAネタのマンモスです。マンモスの話は下記
http://homepage2.nifty.com/te2/b/b065.htm
なお花は
http://www.gardener.co.jp/usaflower.html
http://www.hana300.com/aakokka.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/leontopodium-alpinum.html
http://www.kirin.co.jp/brands/kokochi/cont/l_carnation.html
http://www.inh.co.jp/~hayasida/report4.html
がソースです。
に訂正します。申し訳ありません。

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