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第1555話 名無しさん ◆wJjlBrsOG6 投稿日: 03/06/07 13:37 ID:VAcSapSC
   「土にこめた願い」
 少し前リュー君の家はアメリー家が管理していました。喧嘩の結果なのですがそれは
リュー君達にとって気持ちいいものではありませんでした。リュー君達は日之本家への
復帰をいつも訴えていました。
 その願いは少しずつ、しかし確実に実を結んでいきました。日之本家の人達もリュー
君をもう一度家族に迎えたいと願っていましたし話は進みました。
 これは朝比奈家でも同じでした。リュー君に同情した彼等は自分達が主催するコーシ
エンでのボーキュー大会に参加することを認めたのです。リュー君は大喜びでコーシエ
ンに向かい大会に参加し宣誓まで務めました。日之本家の暖かい声援がロッコウに響き
渡りました。
 家の皆の声援の下リュー君はカードを切りました。参加できたことが何よりも嬉しか
ったのでした。悔いのないよう一生懸命やりました。
 結果は最初の勝負で負けでした。けれど悔いはありませんでした。コーシエンの土を
持って家への帰路につきました。
 「え、そんな・・・・・・・・・」
 アメリー家の人がいいました。他所の家の土を持ち込むなんてけしからん、と。リュ
ー君の目の前は真っ暗になりました。
 「持ち帰らせてあげて下さい」
 ニホンちゃんもウヨ君もアメリー家にお願いしました。けれど所詮他所の家です。相
手にしてもらえませんでした。
「いいんだよ、皆。僕は大会に参加できただけで満足だし。気を使わないで」
 リュー君は力なく微笑んで言いました。
 「リュー君、いいの・・・・・・?」
 「うん、心配しないで」
 気遣うニホンちゃんにあえて笑ってみせました。
 「土は駄目でも心は持って帰れるさ。それに」
 「それに・・・?」
 「何時かこの土は僕の家の池にたどり着くし。池を流れて」
 そう言うとニホンちゃんに背を向け手に持った土を池に捨てました。サラサラと池の中
に消えていきます。
 「今は駄目でも何時か持って帰れる日が来る。その時でもいいさ」
 「リュー君・・・・・・・・・」
 リュー君は皆に背を向けたまま立っていました。表情はわかりません。けれど泣いてい
るのは皆わかりました。心の底から泣いていました。
 
 今年もボーキュー大会が行われます。リュー君も参加します。最初は弱かったのに今で
は決勝に出るまでになりました。負けてもリュー君は微笑んでいます。あの時お池に捨て
た土が今は手にあるからです。そしてあの時と変わらぬ日之本家の声援も。

解説 名無しさん ◆wJjlBrsOG6 投稿日: 03/06/07 13:39 ID:VAcSapSC
沖縄県の高校が戦後が初めて甲子園に参加した時の話です。ソースは
http://www.ff.iij4u.or.jp/~narita/ca/news47.html
これです。甲子園は多くのドラマを生み出しましたがこんな話もあります。

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