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第1589話 無銘仁 ◆uXEheIeILY 投稿日: 03/07/14 23:03 ID:dmLKVRZ3
 前回は恥ずかしい初投稿うpしてしまった無銘仁です。まったく失礼
いたしました。今回はもうちょっとまともに仕上げたつもりですが、自
分でも気づかないうちになんかやらかしてる恐れがあります。ぜひとも
厳し〜いツッコミをお願いします。

 「アメリー君の月世界探検」

 地球町の所属する地方には全部で九つの郡とひとつの市があります。
それぞれの郡はひとつ以上の町村で構成されます。だからここはかなり
広い地方なのですが、不思議なことに人が住んでいるのは地球町だけで
す。実は、他の場所は人が住める環境ではないのです。また、それぞれ
の境界が不毛の土地や大河やいろいろで、簡単に隣の町や村へは行けな
いのです。

 さて、地球郡は地球町と月村の二つから構成されています。月村は長
さが地球町の四分の一しかない小さな村です。月村は地球町から38万
cm離れていて、断崖絶壁の上にありました。到底人間の力ではたどり着
くことが出来ません。冒険心のある人々は月村へどうしても行きたいと
思い、熱気球を作り出しました。少し昔の話ですから、アメリー家とそ
のころ大富豪だったロシアノ家がお約束の競争を始めました。どちらが
先に月村まで行けるか、意地の張り合いです。


 最初はロシアノビッチ君が優勢でした。「すぷうとにく」気球の安定
飛行に地球町で一番早く成功したのです。その一方で、アメリー君の試
作気球「ぱいおにあ」シリーズは次々墜落しています。それを尻目にロ
シアノビッチ君の無人気球「るな」シリーズは続々と月村へ飛んでいき
ます。アメリー君焦りました。
「このままでは番長の地位が危ない。俺は地球町一でなければならねえ
んだ!」
 そう確信し、悲壮にも今月のおこづかいを全部気球につぎ込むことを
決断しました。
 コーラもハンバーガーも我慢してただただ気球を造るアメリー君。目
が既に飛んじゃってますね。苦労の甲斐あって今度の「れいんじゃあ」
シリーズは打ち上げに成功。月村より向こう側の撮影では「るな」に先
を越されましたが、月村の詳細な様子がわかる写真を撮ることが出来ま
した。あれれれ、アメリー君ちっとも嬉しそうじゃありません。どうし
たんでしょう。
「ロシアノビッチめ、せっかく追い付いたと思ったら今度は有人気球を
成功させたか……俺があいつを追い越すにはいったいどうしたらいいん
だろう……」
 そうです、ロシアノビッチ君の「ぼすとおく」は人が乗れる気球だっ
たのです。これにはアメリー君もかないません。憮然として肩を落とし
ます。一通りため息をつくと、アメリー君は立ち上がりました。自由と
正義の盟主がこのままではいけません。
「よぉ〜し、こうなったら俺の気球には人を乗せて月村まで往復させて
やる!」

 やれやれ、アメリー君とうとう来月のおこづかいも前借りでつぎ込ん
じゃいましたよ。そうとう本気のようですね。とりあえず「さあべいや
あ」シリーズを造って月村の状況を把握したアメリー君、いよいよ本命
の有人気球、「あぽろ」を造ります。熱源には「さたあん」を採用しま
した。幾度も実験を重ねました。途中でアメリー君を乗せたまま墜落し
怪我をしたこともありましたが、アメリー君は不屈の闘志で立ち上がり
ました。実験を終えたアメリー君、満を持してあぽろ11号機打ち上げ
に臨みます。いよいよアメリー君が月村へ行くというので、地球町のお
友達もアメリー君の家でテレビの前に集まって気球に積んだカメラから
の映像に釘付けになっています。
 打ち上げは成功でした!「あぽろ」は見事に月村へ向かって飛んでい
きました。アメリー家の広大な居間の一角から歓声が起こっています。
「さすがはアメリーだな。やつは言った事は必ず実行するんだ」
ゲルマッハ君が感心しています。
「ロシアノビッチが来てないけどどうしてるネ?心配アルヨ」
チューゴ君、親友を気遣います。豪快なロシアノビッチ君でもこのまま
「あぽろ」が成功してしまえば気落ちするに違いありません。
 そして遂に気球は月村に着陸しました。気球から銀光りする全身タイ
ツの少年が降りてきます。
「あの趣味の悪い服はなんですの?まったくアメリー家はファッション
が分かっていないと以前から(以下略」
ファッションにうるさいフランソワーズちゃんの文句に理系のスウェー
デン君が答えます。
「あれは趣味が悪いんじゃなくて、月村の厳しい環境から身を守るため
の服だよ。あれがないと1分も生きてられないよ」

 星条旗を掲げてアメリー君が月村へ第一歩を記します。ガッツポーズ
をとるアメリー君。腕に力こぶが浮き出ています。緊張して力が入って
いるのかな?
"That's one small step for a man, one giant leap for mankind!"
「エリザベスちゃん、あれはなんて言ってるの?」
アメリー君の言葉が得意ではないニホンちゃんが尋ねました。
「これは私個人にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な雄飛
である。ってとこね。他にも訳し方はいくつもあるでしょうけれど」
 その後いくつかのミッションを終えたアメリー君は地球町へ無事帰還
し、みんなの祝福を受けました。ロシアノビッチ君はというと、有人飛
行は先を越されたので諦めて、地道に月村の資源を回収していたようで
す。くだらない競争を続けるよりその方が得と判断したんですね。
 そして現在の五年地球組では……
「ねえ、わたしも月村に気球送ったよ。みんな忘れてなぁい?」
ニホンちゃんがご機嫌斜めです。そう、アメリー君たちからはずーっと
後ですが、ニホンちゃんも「ひてん」を打ち上げたのです。これは気球
の操縦を練習するためだったので人は行きませんでしたが。

「ウリだって宇……うぐぅっ!」
カンコ君が何か言いかけました。いよいよウリナラ脳が稼動を始めたよ
うです。しかし肝心の部分を言う前に隣に座っていたタイワンちゃんの
肘打ちで沈められました。まあ言わなくても何を言おうとしたか大体想
像はつくんですけどね。
「あんたはそもそも月村へ行けるような気球をもってないじゃないの!
(あたしも持ってないけど……)」
カンコ君、「アイゴー!」と叫ぶことしかできませんでしたとさ。


 おまけ
 引きこもりのキッチョム君が自室から遥か遠くに気球を眺めます。
「馬鹿な弟と違ってウリには「てぽどん」気球があるニダ。出力不足な
んかケンチャナヨ〜。いざ地球町を飛び出すニダ!」
キッチョム君、飛び出すのはいいけどニホンちゃんちの池に残骸を落と
して迷惑かけるのはよそうね。

解説 無銘仁 ◆uXEheIeILY 投稿日: 03/07/14 23:08 ID:dmLKVRZ3
 最初の段落ですが地方=太陽系、郡=惑星系、市=恒星、町=惑星、
村=衛星ってことです。また、気球=ロケット・人工衛星と理解して
ください。今回のソースは
ttp://www.moonsystem.to/apollo/
他、「月探査」などで検索すると出てくるページをかなりの数参考にい
たしました。ちなみにアメリー君がつぎ込んだおこづかいは1960年
前後の水準で300億ドル。やっぱり番長は違いますね。なお、「ひて
ん」に興味のある方はこちらをごらんになるとよろしいかと。
ttp://www.isas.ac.jp/j/index.shtml
キッチョム君の話はテポドン領空通過墜落事件です。古いですが。
 NASA工房による宇宙開発話は既出ですが、月に焦点を当てて別の
側面から書いたということでご勘弁を。あんまり諷刺になりませんでし
たが、月世界探検の浪漫を目標に書きました。ではご意見ご批判お待ち
しております。

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