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第1726話 有閑工房 ◆WOaKOSQONw 投稿日: 03/12/11 16:13 ID:xoKoqANF
『幻蟹大戦?』

 地球町でも美食家で鳴らすチュウゴ君。秋になると期間限定で製造するカニパンも町内
で大人気です。ただ町内はおろか中華マンションでもその争奪戦は激しく、なかなか食べる
ことが出来ないのが辛いところでしょうか。
 売れ行きを見てチュウゴ君も大もうけしようと考えているのですが、最高と言われる
カニパンは、作る職人と機械がそれぞれ一人と一つしかないため、増産もままなりません。
しかも秋でないといいものが出来ないのです。
「ま、いいものは大量に作れないから仕方ないアル…。」
 その分値段が吊上がっているのでまあ良しとしていました。
 ところが…
「ねえチュウゴ君、チュウゴ君のところのカニパンなんだけど…」
「何かあったアルかニホン?知ってのとおり朕の家のカニパンは町内一ィィィー!アルが?」
「チュウゴくん、な、何か微妙にキャラが違うけど…まあいいや、あのね、この間買った
カニパンに髪の毛が入っていたんだけど?」
 こちらも町内では美食家で鳴らすニホンちゃん、食べ物の衛生管理は町内誰もがびびり上がる
くらいですので、こういう事にはやたらとうるさいです。どうもニホンちゃんの美学が許せない
らしく、珍しくこめかみに青筋が立ってます。
「えっ!そ、そんな筈はないアル!店に出すまでみんな気を使って作ってるアル。ありえない
アル!」
 人気商品に関する話だけにチュウゴ君も真っ青になり、ニホンちゃんが持ってきていた
食べかけのカニパンを受け取ると、自主的にその日は休校としたようです。ダッシュで家に
帰ってしまいました。帰り道でハァハァしながら半分食べたのは秘密です。
   *
「ぼん、それはありえないアル。これこのとおりワタシ髪の毛ないアル。それに工場の中で
は絶対に帽子かぶって脱がないアル。」
 ソシュウ叔父さんはふんぞり返って駆け込んで事情を説明しるチュウゴ君に反論しました。
言われてみればその通り。長い黒髪なんか叔父さんの頭には一本もありません。
「それじゃあ誰の髪の毛アルか…」
 チュウゴ君もちょっと困ってしまいました。
「ぼん、そのパン少し食べさせてもらえるアルか?」
「ああ、食べるといいアル。」
 そう言っておじさんは一口パンを食べましたが、瞬間に顔が五星紅旗のように真っ赤になり、
怒り始めました。
「アイヤーーー!!!何てことアルか!こ、このパンはぁっっっ!」
「どうしたアルか!」
「まずいっっっ!」
「い、いや、朕が食べた時はそうは思わなかったアルが…イロンナイミデ…」
「ぼん、チュウゴ家の当主として味覚が鈍いのは失格アル。このパンの焼き加減はわずかアル
が焼き過ぎアル。カニパンのミソは微妙な焼き加減に云々…」
 当主失格の烙印を押されて非常に腹立たしいチュウゴ君ですが、パン焼きには一家言ある
叔父さんには逆らえず、当座の対策を取るために急いで部屋に引き返します。
   *
 次の日――
「というわけで朕の自慢のカニパンの偽物が出回っているアル。そこで対策としてパンの袋
のデザインを変えたアル。こっちが本物アル、以後お見知りおきを宜しくお願いするアル。」
商売人の息子だけに慇懃な態度を取らせたら嫌味なくらいに町内一です。
『ふーん…パッケージ変えたのかあ…でもこれってすぐ朴られるんじゃないかなあ?』
 自信満々のチュウゴ君を尻目に、朴られまくりのニホンちゃんはその程度で偽物対策が出来れば
安いもんだと思っていました。
 案の定翌日にはチュウゴ君の自信失墜とニホンちゃんの予想的中と相成り、偽物も全く同じ
デザインで出回っています。
「アイヤーーーー!なんで朕がこんな苦労しないといけないアルか!」
なんでって、それがチュウゴ家の 伝 統 じゃないですか。
デザイン変更から3日後――
「今度は大丈夫アル。今度は朴られないアル。朕のカニパンにはパンに焼印をしているアル。
その日作った数だけナンバーつけているから安心アル!」
 改めてチュウゴ君自信満々です。改めるまでもなくニホンちゃんは冷めた目で眺めています。
『だーかーらー、有効なら私もやってるっちゅーに…』
 何だか憔悴するまで偽物対策に奔走するチュウゴ君が憐れではありますが、煮え湯の六ダース
くらい平気で飲まされているニホンちゃん、同情なんてこれっぽっちもしません。
 言うまでもなく次の日には同じシリアルナンバーのカニパンが一ダースも出回る始末。
「もうこうなったら朕が直接売り歩くアル。学校なんてモーマンタイ!朕の面子が何よりアル!」
 かなりキレまくりのチュウゴ君、その日のうちに人海戦術で露店を作ると、無期限無断銃剣突撃
精神学校休業(つまりサボリ)に突入し、自らカニパンを売り捌きます。
 しかし巧くいったのはその日だけ。次の日にはチュウゴ君の家のあちこちに『元祖チュウゴ家
謹製カニパン』、『カニパン本家チュウゴ屋』『チュウゴ公認カニパン』という看板で辻売りが
跋扈し始めます。中にはチュウゴ君のカニパンを見本に並べてはいますが、客に渡すのは偽物という
悪徳辻売りも出る始末。
「ど、どうしたらいいアルか…」
 挫折ポーズでしおしおのチュウゴ君ですが、遠目にそれを眺めているニホンちゃんは敢えて助言
はしません。意地悪でもなんでもなく、言ったってやりっこないからです。つか、出来ないから
ですが…。
『がんばってねー。大変だねぇー(^^)。あ、タラバパン焼いてたんだった。帰って食べよーっ
と。』
 同じく冬の風物詩を思い出していそいそとお家に帰るニホンちゃんでした。

おしまい

解説 有閑工房食彩記 ◆WOaKOSQONw 投稿日: 03/12/11 16:28 ID:xoKoqANF
解説・珍味・右往左往
※ グルメまっしぐらの上海ガニ真贋ドタバタ事件から。上海ガニの人気の高さにかこつけて、
偽物が最近跋扈しているそうな。何せ朴李上等のお国柄、朴られるのは外国企業とは限りませぬ。
金づるとあらば国禁を平気で犯し、足の引っ張り合いもへいちゃらら(w
※ 産地表示、焼印、専門店販売、すべて効き目なし。レストランでも本物を『今からこれを
料理します』とか言いながら実際は偽物でお客に出したり…などと真贋を巡って骨肉の争いが
展開されとります。偽物の中には食べただけで食中り起こすものもあるそうだから、本物も
ブランド失墜につながる事態だけに頭の痛いところでしょうな。さてはて、謝罪と賠償は一体
誰にするんでしょーか?

ソースとか何とか
↓あ、これね。大閘蟹(上海蟹)9月から11月頃蘇州近郊の陽澄湖産のものが最高なんだとか…
ああそうさ、ウリは食べたことなんてないさ(w
ttp://www.shanghai.or.jp/life/konok/19.html
↓血統書つき上海蟹
ttp://www.sponichi.co.jp/society/photonews/2003/09/05-2.htm
ttp://www.cnip.org/news/46/4638.html

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