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第1760話
有閑工房 ◆WOaKOSQONw
投稿日: 04/02/18 01:08 ID:dQZIN0Mj
『S・O・S !』
ニホンちゃん、今日もいつもの如く呑気にお散歩です。とはいえイラク君の家のことやらなんやらで、
ちょっとした息抜きのようです。
「あれ、ベトナちゃん何見てるの?」
東シナ池をぶらぶらしてると、池のほとりでベトナちゃんがなにやら読みふけっていました。
「あ、ニホンちゃん。これ…」
そう言われてベトナちゃんからためらいがちに差し出されたのは、『アジア町小鳥図鑑』なる写真集
でした。
「へーえ、ベトナちゃん小鳥好きだったんだ。」
「ええと、特別そういうわけじゃないんだけど…」
何だかベトナちゃん、歯切れの悪い物言いです。不思議に思いましたが、図鑑を眺め始め、ニホンちゃん
はみるみる赤面してしまいました。
「ちょっと…、ベトナちゃんこれって…」
「…」
そこに描いてあるのは小鳥たちのかわいい生態には違いなのですが、どの鳥にも大きくページを割いて
説明されているのが、何故だか
『 交 尾 』。
しかも小鳥図鑑を名乗っていながらページの後半に行くに従って鳥が大型化してゆき、あまつさえ動物
が哺乳類になっていきます。
最後の方はニホンちゃん直視できずにパタンと図鑑を閉じてしまいました。
わなわなと震えるニホンちゃんに、ベトナちゃんは叱られた子犬のように上目遣いで見ています。それ
から小一時間ニホンちゃんは
『何で自分がこんな事でベトナちゃんに説教かましてるんだろうか。』
などと考えつつもくどくどとお説教してしまいました。
『でもなんでベトナちゃんがあんな本に興味持つかなあ?』
普段のベトナちゃんのイメージとは少し違う気がしたので、ニホンちゃんも当惑気味です。とはいえニホン
ちゃんもアレの描写にアテられて、少し頭を冷やそうとタイラン君の家に遊びに行くことにしました。
「タイランくーん。」
「やあ、ニホンちゃん。」
アポなし突撃でやってきたにも拘らず、タイラン君は優雅にニホンちゃんをお出迎えです。ニホンちゃんも
少しほっとして家の中に入りまし…
『んんっ?タイラン君の右手に持っているあの本は…』
右足が一歩敷居をまたいだところでニホンちゃん固まってしまいます。確かにあの本は先程ベトナちゃんが
持っていたのと寸分違わぬ例のアレてんこ盛りのやつのようです。
「あの、タイラン君その本って…」
ほんの一瞬タイラン君の顔に狼狽が広がりますが、すぐにもとの顔に戻って全力でごまかしにかかります。
「うん、最近小鳥とかに凝っててね、調べてみるとこれが結構面白いんだよ。どう、ニホンちゃんも、うちの
家の庭って珍しい鳥がいるんだよ。」
「鳥だけじゃなくって他にもいろいろ調べられるもんね、その本。」
「そうそう、特に後は…」
そこまで言うとタイラン君フリーズしてしまいました。
それをニホンちゃんが絶対零度の瞳で突き刺します。
「しばらく、私に近づかないでね。」
捨て台詞を残してニホンちゃんは立ち去りました。
どこに行くのも嫌になって、ニホンちゃんお家に帰ることにしました。晩御飯は親子丼がいいなあとぼんやり
考えつつ歩いていると、後ろから声をかけられました。
「やあニホン、どうしたアルかそんな仏頂面で?そんなんじゃ朕の家にフランソワーズのエスカレーターつけて
しまうアルぞ。」
励ましてんのか脅してんのか判らない口調でチュウゴ君がニコニコと近付いて来ます。ニホンちゃんはベトナ
ちゃんとタイラン君の件をかいつまんで説明しました。チュウゴ君は確かにやつらは最低だというように大仰
に頷いて話し始めました。
「やつらも仕方ないアルね。しかし朕にはアジア町の領袖としての誇りがアルからな、そんな下種な趣味は一切
ないアル。それはあたかもチュウゴ家五千年…」
ば さ っ
興に乗って両手を広げて演説を始めたチュウゴ君のフリースジャケットの下から、なにやら図鑑めいたものが
落ちました。
瞬時に二人の間の空気は凍りつきます。
「アイヤーーーーー!い、いやこれは違うアル!これはさっきカンコの家からボッシュートしてきたものアル!
まったくあいつは子供の癖に、」
「チュウゴ君も同級生だし。」
「いやうわなにいうやめ、ではなくて朕はアジア町のリーダーの務めとして同級生の風紀を…」
「乱してるもんね。」
ちーーーん。
チュウゴ君二の句が告げません。
「さいってーーーー!!」
そう言い捨ててニホンちゃんは走り去ってしまいました。
『うーむ…ニホンのあっかんべもなかなかかわいい…ではなくて!』
「ニホォーーン、ちょと待つアル!誤解アルー!」
必死で追いかけようとしましたが、萌えている間にニホンちゃんを見逃してしまうチュウゴ君でした。
*
「という訳なのよタイワンちゃん、どう思う?」
「い、いやあ…どう思うって言われましても、なんつーかどう答えたものやら…」
次の日、登校中にニホンちゃんはタイワンちゃん相手に怒りをぶつけます。
「みんななんでいきなりあんな図鑑見るようになったんだろ。」
「ま、まあそういう年なんじゃないかなあと…、大人への憧れといいますか挑戦といいますか、とにかくそんな
感じの気がしますねえ。」
「なんでですます調になってるの?タイワンちゃん。」
「なななナニ言ってるかなあニホンちゃん、私は普通よふつう。」
その割にきれいなおでこに浮かぶ脂汗は何なのだろうとニホンちゃんが不審の目を向けます。
「二人ともおはよー!」
そんな微妙な雰囲気のときに元気に声をかけてきたネシアちゃん、そそくさとタイワンちゃんに近付くと爛々
と輝く目でタイワンちゃんに問いかけます。
「ねねねね、昨日のアレどうだった?どきどきもんでしょ!」
「はははは、まあね…。」
「何しらばっくれてんのよ、昨日あんなに喜んでたじゃない!」
ばしーんっ!と背中を一叩きして、ネシアちゃんはからから笑っています。
「ねえ、ネシアちゃん…」
「なあにニホンちゃん。」
「二人で何の内緒ごとかなあ。」
「ふふーん、実は……ね…」
秘密を打ち明ける快感に酔って得意げに喋り始めたネシアちゃんですが、口元だけ笑っているニホンちゃんの
ただならぬプレッシャーに晒されて絶句してしまいました。
「ネシアちゃん…」
「は…はぃ…」
もう蛇に睨まれた蛙状態です。
「小鳥、好き?」
それからしばらく、ニホンちゃんはこの二人とも口をきかなかったそうな。
「どうしたのさニホンちゃん、アジア班のみんな様子変だよ。」
声をかけてきたのはブラジー君でした。アジア班のみんなは約一名を除いてニホンちゃんを腫れ物扱いで、いつ
自分に火の粉が降りかかるか戦々恐々です。
ニホンちゃんはかいつまんで事情を説明すると、ブラジー君は納得顔で言いました。
「なあんだ、そんなこと気にすることないって。」
「気になるよぉ。気になるから怒ってるんだもん。」
「そんな気にしなくっても、僕が明日うちの小鳥図鑑持ってくるから、それ見て機嫌なおしなって、うちは広い
からねえ、ほんとにたくさん小鳥がいるんだよ、はっはっは。」
そう言い置いて、何だか誤解したままブラジー君は去っていきました。
『何だろう…私ブラジー君が誤解するようなこと言ったっけ?』
考えましたが思い当たりませんでした。しかしニホンちゃんに近付く赤い彗星がその思案を中止させます。
「ニホン、ちょっと聞きたいことがあるニダ!」
「なあに?」
ニホンちゃんは内心また面倒なのが来たと思いながら、できるだけにこやかに答えました。
「ニホンは昨日からウリが命がけで写真を撮って廻った小鳥図鑑にあることあること言ってけちつけて回ってる
そうニダな!アレは香と二人で血の滲むような努力を重ねて作り上げたウリが世界に誇る大動物図鑑ニダ!」
そう言うが早いかカンコ君はニホンちゃんの胸倉をつかまんばかりに吶喊してきます。
「ニホンは謝罪しるーーーっ!」
「そう、カンコ君なんだ…」
ニホンちゃんは呟くと、突進してくるカンコ君の奥襟をつかみ、そのまま軽々と投げっぱなしの一本背負いを
決めてしまいました。カンコ君、突進の勢いで教室の後ろまで投げ飛ばされ、気絶してしまいました。窓じゃなくて
良かったね。
その日一日、ニホンちゃんが怖くて誰も声をかけなかったそうです。
「たけしぃーー。きいてよぉーーー」
もうここまできたら信じられるのは弟くらいだという気分になって、学校から帰ると思わずニホンちゃんウヨ君の
部屋に乱入します。
が、
「ア…」
振り返りざま一瞬で固まるウヨ君。持っている本は…瞬殺で焼却炉に放り込まれてしまいましたとさ。
おしまい
解説・鳥鍋・四面楚歌
※お久しぶりの有閑工房です。しばらく書いてなかったので話のまとまりがないのはケンチャナヨ。リハビリ
ニダ。もうずっとリハビリ…に、ならんように努力しますハイ。
※今回は東南アジアポルノ事情…ではなくて鳥インフルエンザの話題おば。しかしポルノでも違和感ない話だ
な。輸入禁止措置は別にいいのですが、輸入国がブラジル以外全滅に近くなっているというのはどうしたものやら。
なんかなし崩しで輸入再開する予感。それ見たことかとアメリカからの牛肉輸入も尻馬に乗って再開しそうなヨカーン
…いや、やめよう。
↓鶏がらソース。方々で乱立してるんでアカヒちゃんの定点観測ページをどぞ。
ttp://www.asahi.com/special/avian-flu/
しかし、こんなんありました。
↓処分法が残酷と保護団体 アジアの鳥インフルエンザ
ttp://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/influenza/news/0217-258.html
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