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第1762話
更科うどん ◆bc/WMtRnlQ
投稿日: 04/02/18 23:36 ID:YtVHnwAc
『マグロ経済学概論 ―デモンストレーション効果と歯止め効果―』
「というわけで、勉強会を始めるダス。本日のお題は"ミナミマグロさんを守りましょう"」
「わ〜、ぱちぱちぱち」
「はうぅ・・・・・」
今日のニホンちゃんは、オージー君、ニュージー君と勉強会に参加中。
太平池のお魚を調べる課題に取り組んだりしています。とか言いつつ、当然のように
実態はニホンちゃんをいぢめる為の場であったりします。ご存知の通り食べ物方面では
叩かれづめの毎日で、既に始まる前からニホンちゃんは追いつめられた小動物のような
目をしています。
「さて、ミナミマグロさんはニホンちゃんが釣りすぎたせいで数がおらんように
なってしもたわけやね」
「はう・・・・・」
「ま、ニホンちゃんにはたっぷり反省してもらうとして、ワスはこのままずっと
ミナミマグロさんをターイセツに、ターイセツに守り続けて、皆もう一匹も取らないように
してほしいと思うダス。それで良いダスなニホンちゃん?」
「あ、あの、ちょっと・・・・・」
「良いダスな!!」
しょんぼりするニホンちゃんを油断なく観察しつつ、長年培ってきた絶妙の
アイコンタクトでさりげなく意思疎通をはかる二人。さすがは親友同士、見事な
コンビネーションです。実はオージー君とニュージー君もかなり無茶なお魚の釣り方を
してるとか、ミナミマグロさんが今もなお減っているというカガク的根拠はないけど
緑豆がウザいから今更引くに引けないとか、ニホンちゃんにかわりにお肉を食べて
もらってウハウハとか、そういう事は例によってナイショです。
もうひと押しと二人が口を開きかけたその時、ニホンちゃんがおずおずと手を挙げ
珍しく反論を試みます。
「あの、あのね。わたし自分で調べたけど、ミナミマグロさんは最近ちゃんと増えてるよ。
もう取ってもいいんじゃないかなー・・・・・なんて。あはは」
「あかんやろ」
「駄目ダスな」
内心痛いところをつかれて豹変する二人。こういう時は強気が肝心です。
「うっ・・・・・。じゃ、じゃあみんなで一度ちゃんと調べようよ。ちゃんと納得して
もらえるから。それからならいいでしょ」
「あかんやろ」
「駄目ダスな」
「あの・・・・・・・どうしても、ダメ?」
「ああ、あかんあかん」
「どうしても駄目ダスな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
可哀相にニホンちゃんはうつむいてしまいました。なんだかもう見慣れた光景です。
と思いきや、ここからがちょっといつもと違っていました。
「そう・・・・・・。うふふふ、じゃ、しょうがないわねえ。クスクスクス・・・・・・」
「・・・・・・ええと、ニホンちゃん?」
「な、何ダスか? その微笑みは・・・・・」
なんだか不穏な空気を感じ思わず後じさる二人。ニホンちゃんはそんな二人を
奇妙に優しい目で見つめ、無体な事をさらりと宣言するのでありました。
「わたし勝手に取っちゃうから。じゃ、そういう事で」
「「え、えええっ!?」」
ニホンちゃん、久々にスイッチが入ってしまったようです。やっぱりマグロさんを
狙ったのはさすがにまずかった。クジラさんの夢よもう一度とはいかなかったようです。
というか危ないぞ。二人とも逃げて逃げて逃げてぇ〜っ!!
「ミナミマグロさんが増えてるって証明するためにもたくさん取ってくるから。
楽しみにしててね♪」
「待てぇ〜い! 待ててオイ!」
「そそそんな横暴が通ると思っているダスかーっ!」
自分達のことを棚にあげていきり立つ二人。ニホンちゃんはそんな二人の必死の抗議を
涼しい顔で受け流すと、人差し指を唇にあて、片目をつぶって可愛く微笑みます。
「あら、調べるだけよ調べるだ・け・♪ 勿論その後おいしくイタダいちゃってうふふ」
「それ絶対調査ちゃうやん!! そんなわやくちゃな・・・」
「そ、そうダス! お魚さんを守るのはみんなで集まって決めた決まり事ダス!」
「決まりってどれのこと? 三日前の生徒会のやつ? それとも先々週の全校朝礼のやつ?
集まりってどれ? アジア町のこども会? 学校のHR? それともここの勉強会?
沢山ありすぎてどれを守っていいか判らないわクスクスクス・・・・・」
そうなんです。"お魚さんを守りましょう"は地球町で今もっともCOOLな合言葉。
似たような決まりや集まりが腐るほどあって、もうなにがなんだか判らなかったりします。
でもそれを逆手に居直るとは、失礼ながらかなり斜めu(ry
ニホンちゃんの意外なそしてあんまりな反撃に怒りで口をぱくぱくさせ、なおも
言い募ろうとする二人でしたが、ここで突然ニホンちゃんがにじり寄ってきました。
二人は機先を制されて思わず黙ってしまいます。
「もぅ、二人ともおいたが過ぎたわね。クスクスクス・・・・・」
いつになく妖艶な微笑みを浮かべたニホンちゃんに顎を下から上にさわさわされ、
思わずふにゃあ〜となりかけたオージー君ですが、ニホンちゃんの手がそのまま
喉に伸びていくのを感じ顔色が変わりました。しかし、遅かったようです。
「まぐろまぐろまぐろまぐろ〜〜」ぎゅううぅぅぅう
「く・る・し・い・や・め・る・ダ・ス・・・・・」
「止めや。止めぇー!」
「ま〜〜ぐ〜〜ろ〜〜〜・・・・・」ぎりぎりぎりぎり
「や・め・て・お・ね・が・い・・・・・」
「あの、ニホンちゃん。おーい。その辺で止めといた方が、ええんちゃうか、な? と・・・・」
頭ひとつぐらい違うはずのオージー君を持ち上げたまま、ニホンちゃんはゆっくりと
ニュージー君に向き直ります。
「なぁに? ニュージー君何か問題あるの? うふふふふふ・・・・・」
返答次第では殺される。何故だかニュージー君はそう確信しました。
「いや、問題あれへんのとちゃうか?」
うあ、マブダチを売りやがった!
「まあその、お魚さんを守るために今後もみんなで前向きに努力する必要がないとも
いえないのではないだろうかという見解を示しつつですね、この件はお手打ちという事で
ひとつどないでっしゃろ。というかお願いしますニホン様」
「お・ね・が・い・し・ま・す・ニ・ホ・ン・さ・ま・・・・・」
ぴく「うん! それでいい! 何だかよく分からないけど、二人ともありがとうね。
・・・って、オージー君!? ふぇ〜んなんかオージー君が大変だよ〜!!」
狙っているのかいないのか、とにかくニホンちゃんを怒らすのはやっぱり危険だ。
気をつけよう。オージー君は薄れゆく意識の中でそんな事を思っていました。
おしまい
解説
更科うどん ◆bc/WMtRnlQ
投稿日: 04/02/18 23:40 ID:YtVHnwAc
ミナミマグロ訴訟
ttp://www1.biz.biglobe.ne.jp/~zensui/s00-09-02.htm
ご参考までに
『国際マグロ裁判』 小松正之・遠藤 久著 岩波新書刊
漏れも何だか凄まじくお久しぶりな気がするでつねホルホルホル
…だってここんとこず〜っと忙しかったんだもん。・゚・(ノД`)・゚・。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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