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第1815話
有閑工房 ◆WOaKOSQONw
投稿日: 04/03/29 13:56 ID:IBJElG90
『HONEY LOASTED PEANUTS』
「兄上、何だまた漫画を読んでいるのか。」
「アーリア、そう馬鹿にしたものではない。中々含蓄に富んでいるし、活字のみと比べて
訴えかけるものも多い。勿論絵入りで描写すると言うことは読み手の想像力を減殺する
きらいがあるが、反面文化の相違による共通認識の壁を簡単に越えてしまう効力もある。」
「なるほどな。しかし兄上、」
「なんだ?」
「色々分析しているようだが読んでいるのは面白いからだろう?」
「…」
「…」
ゲルマッハ君は少し顔が赤くなりましたが、黙ってごまかすのが一番と思ったのか、何事も
無かったかのようにまた読み始めました。
『しかし兄上、最近好きな哲学書も読まずに漫画ばかり。そんなに面白いのだろうか?』
アーリアちゃん、ゲルマッハ君が嵌っているので興味を持ち始めたようです。
『餅は餅屋。うん、こういうことはニホンにでも聞いてみようか…』
ちょっとした好奇心。子供には大切なことですが、それがアーリアちゃんを襲う全ての不幸の
始まりでした。
*
次の日の学校で、アーリアちゃんニホンちゃんに早速尋ねます。
「漫画?アーリアちゃん漫画読むの?」
「読んだ事はない。最近兄上がよく読んでいるのでどんな物だろうかと興味を持ったんだ。」
「ふーん。でもアーリアちゃんてどんなお話がすきなの?」
「いや、その辺は適当に見繕ってくれればいい。いわゆる研究のためだしな。」
「んー、わかった。そしたら帰りにうちによってかない?実際に見た方がいいと思うし。」
「別に兄上と同じでもいいんだが…」
「だぁめ。女の子用のもあるんだから。そっちにしようよ。」
「女の子用?種類が色々あるのか?」
「うん。女の子用男の子用…(中略)…で、最近は学習帳にもあるよ。あれ?アーリアちゃん?」
アーリアちゃん途中でついていけずに頭の中が真っ白になっていました。
『こ…これはもしかしたら侮れない研究かもしれない…私に、理解できるだろうか…』
軽い恐怖を覚えつつその日の放課後ニホンちゃんの家に向かいました。
ニホンちゃんの部屋に入ったアーリアちゃん。改めて本棚の漫画の多さに感心してします。
『これだけの供給があるということはつまり需要があるということ。こう並ぶとすごい迫力だな。』
アーリアちゃん、ゲルマッハ君の家には立派な革表紙の本や事典、図録なんかは当たり前の
ように置いてあります。しかし子供向けの本といえば絵本が少々あるくらい。『絵心がない』と
いうことでEU町のほかの子達からもからかわれる事も多いです。特に女の子向けの本は絶無に
近く、暇なときなどは仕方なしにゲルマッハ君から男の子向けの物語を借りたりしていました。
「さ、そんじゃあどんなのにしましょうかねえ…」
ニホンちゃんはお茶とお菓子を運んでくると、早速本棚からひょいひょい何冊か引っ張り出
します。
「えーと、やっぱベルばらにぃ、硝子乃仮面とかは外せないよね。そんでもってこれとこれと
これと…」
「おい…ニホン…」
戸惑うアーリアちゃんの目の前にあれよあれよという間に漫画が積み上がります。
アーリアちゃんのそんな表情を意に介せず、ニホンちゃんはそのうちの何冊か手渡すと、にっこり
笑って呟きました。
「コワクナンカナイヨ…スグキモチヨクナルカラネ」
「ん?何か言ったか?」
「え?別に何も?」
アーリアちゃん怪訝な顔をしましたが、特にこだわりもせず読み始めます。そんなアーリアちゃんを
ニホンちゃんは荷馬車に乗せて売られてゆく子牛を眺めるような目でひそかに見ていました。
*
さてそれから3日経ち、アーリアちゃんは順調に蟻地獄に引き摺り込まれています。ゲルマッハ君
より確かに出来は悪いですが、今まで規律正しく真面目に授業や宿題をこなしていたアーリア
ちゃんが、授業中に居眠りしたり、宿題を忘れたり、掃除をサボって矢のように家に帰ったりとまるで
別人になってしまいました。
さすがにフラメンコ先生もその変わりように面食らってしまい、ゲルマッハ君に相談しますがこちらも
要領を得ません。アーリアちゃんほどでないにしろ、ゲルマッハ君も最近精彩を欠いています。
二人ともおかしいとなると教師としては家に連絡するのが常道。程なくして家でテレビにかじりついて
いたアーリアちゃんと、両手に紙袋を提げて帰宅したゲルマッハ君は、両親からきつーいお灸を据えられ
てしまいました。規律と自律にうるさい家の方針に則り、二人ともテレビと漫画は一日30分の規制を
かけられ、ちょっぴり意気消沈です。
次の日アーリアちゃんはニホンちゃんから借りていた漫画を大量に持って返しに来ました。
「大丈夫だよ、アーリアちゃんちっともおかしくなんかないよ。だって好きなものを好きって言ってる
だけだもん。」
ニホンちゃんは罪人を赦すキリストのような優しい目でアーリアちゃんに語りかけます。
「そう…言ってくれると助かる。」
アーリアちゃんはにかみながら答えます。家の人に最近漫画ばっかり読んでいるのを随分
咎められていたのでしょう。それからアーリアちゃんとニホンちゃんはおにゃのこ漫画について
迸る情熱と共に熱く語り合い、お互いの知識を深め合いました。
*
さてその週の土曜日、乙女心と欲望は子供には理性のタガをぶっ壊すのが世の常。最近は
授業中に漫画を持ち込んで耽読するまでに堕したアーリアちゃんにニホンちゃんが更なる悪魔の
囁きをします。
「…漫画交換会?」
「そ。やっぱりお小遣いにも限りがあるでしょ?だから誰かの家にお泊りして皆で持っている漫画
回し読みしましょうって会なの。勿論大人とか男の子にはヒミツ(はあと)。」
「う…うむ、なかなか興味深い…な。」
アーリアちゃん普段どおりを装おうとしていますが、顔には行きたくて仕方ないと出ています。
しかし心のどこかに、今の自分の状況が親たちに快く思われていないのが咎めているようです。
「ただし、」
「ただし?」
「お菓子は持ち込み。そんで漫画買うために毎回500ウォーン貯金してるの。」
「そ、そうか。それは残念だ。」
「え?どうしたの?」
「実は今月、漫画を買いすぎてな、恥ずかしいことだが、そんなお金持っていないのだ。」
そういうとアーリアちゃんしょんぼりしてしまいました。ものすごく心残りですが、最近の自分の
行動が問題なのも自覚しているからでしょう。
そこでニホンちゃんすかさずフォローアップ。
「でもアーリアちゃん来てくれるんだったら、今回初めてだし、お金なんかいいよ。」
「え?しかし…」
「あ、気にしないで。始めて参加する人はいつもそうしてるの。」
「そうなのか、そ、それじゃあ、参加…させてもらうかな。」
「うん。皆にもそう言っとくね。」
アーリアちゃん、他愛もなく陥落してしまいました。しかし、げに恐ろしきはニホンちゃんの感染
能力。その威力は刺すコロナも真っ青です。
「ああ。で、その会はいつやるんだ?」
「今日。」
「今日なのか…。」
「あ、都合つかなかったら無理しなくていいよ。何か悪いし…」
「い、いや、無理なんかしていない。分かった。頑張ってみる。」
そういうとアーリアちゃん考え込んでしまいました。どうやって言い訳するか考えている
んでしょうね。端から見れば人生に深く思い悩んでいるように見えるのが得といった所。
まあ、そんな得しても仕様がないでしょうが。
念押しもせず、ニホンちゃんはその場を去ります。その直後にニホンちゃんがタイワンちゃんや
ネシアちゃんと、蟻の巣に熱湯を流し込むような目線でアイコンタクトを交わしたのには、誰も気が
つきませんでした。
*
さて、その日の放課後、息せき切ってニホンちゃんの家にやってきたアーリアちゃん。右手に漫画
の入った紙袋、左手にはコンパクトにまとまったお泊りセットで、夜戦準備は万端です。
「ようこそ…」
ニホンちゃん満面の笑みで迎えます。その後にはやはりニコニコと笑いながらタイワンちゃん、
ネシアちゃん、チョゴリちゃんが迎えてくれます。
「い、いやあ、改めて言われると照れるも…」
そう言いかけたとき、さらにニホンちゃんが近付いてきて、耳元でボソッと囁きます。
「戻れない世界へ…」
「……………………え?」
アーリアちゃんはタイワンちゃんとネシアちゃんに優しく両手を拘束され、ニホンちゃんの部屋へと
消えて行きましたとさ……アーメン。
おしまひ
解説
有閑工房 ◆WOaKOSQONw
投稿日: 04/03/29 14:00 ID:IBJElG90
解説・ダンケ・無間地獄
※ グーテンモルグ同士諸君!今回は我が戦列に加わりし栄光の民族に敬意を払ってお送りした。
独逸に於いては我らが同士が着実にその数を増し、嘗て我等が近代化の規範として独逸に教鞭を
乞うたのと、全く逆の現象が起きつつある。
曾は開国後に欧州を席巻せしジャポニズムともまた趣が異なる。ジャポニズムとは欧州の価値観に
根底を置く日本評価であるが、この度は日本の価値観による欧州への文化進出である点が特筆
される。
括目せよ同士諸君!我等が礫蹄に世界は続く。今こそ我らは共に肩を組み、我らを揶揄し、貶めた
勢力に対し鉄の乾坤を投ず!ジーク!カイザー!ジーク!ハイル!(w
※ とまあナチヲタ風解説はこの辺にして、ドイツにてヲタが増殖中というネタをご提供。ドイツでは
少女漫画というジャンルが今までなかったのだとか。アキラを契機として日本製アニメがドイツに大量
供給され、社会生活不適合者をじわじわ増殖させているようです。ようこそドイツ国民の皆さん、この
終わらない世界へ…シャレニナッテネエカナ?
※ 檀家ソース
↓始まったドイツのマンガ・ブーム
http://www.okada.de/jing/manga/manga.htm
ここのマンガ関係記事一覧からリンク色々ありますので読むと理解が深まり、抜け出せなk
…ウワナニスルヤメ(PAM(PAM(PAM
↓アニメ雑誌「兄マニア」…すんません「アニマニア」ですた←確信犯
ttp://www001.upp.so-net.ne.jp/yoshizu/diary/outer/animania.htm
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