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第1828話 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/04/11 00:09 ID:YLOTLOEw
             「謎の男X ロシアノビッチ篇」
 チューゴ君との話を終えたウヨ君はロシアノビッチ家に向かいました。
「今度こそ確かな手懸かりを掴めるかな」
 闇夜に紛れ壁を越えます。そして屋敷に入ります。
「相変わらず中は殺風景な家だな」
 彼は屋敷の中を見て呟きました。クレムリンは外装は華やかですが
その内部は掃除もろくにされておらず壁もうちっぱなしのコンクリート
です。多くの血生臭い抗争が行なわれてきたこの屋敷は何かしら得体の
知れぬ妖気が漂っています。
「真夜中に入ると余計に何か感じるな」
 彼は呟きました。そして闇の中に姿を消しながら奥の部屋へと向かいます。
「前に来た時におかしそうな部屋は全てチェックしておいた。特に奥のあの
部屋はな」
 その部屋の扉の前に来ました。そして鍵を開けます。
「よし」
 中に入りました。そして中に入ります。
 部屋の中は埃の匂いがします。今にもむせかえりそうです。
「参ったな・・・・・・」
 彼は手拭いでマスクをしました。そして部屋の中を調べます。
「何処にあるんだ・・・・・・」
 慎重に、しかし迅速に中を調べます。一枚のフロッピーに手をかけた、その
時でした。
「それならここにあるぜ」
「!?」
 ウヨ君はその声にハッとして後ろを振り向きました。
 その時です。部屋に灯りがともりました。
「なっ!」
 その灯りに目が眩みます。それでも何とか前を見るとそこには
ロシアノビッチ君がいました。
「ようこそ、招待した覚えはねえけれどな」
 彼はニヤリ、と笑って言いました。
「クッ・・・・・・」
 ウヨ君は身構えます。そしてロシアノビッチ君に向かおうと
します。しかし。
「まあそのことは不問にしてやるよ。俺が入れてやったことにしてな」
「!?」
 いつもとは全く違うロシアノビッチ君の態度に戸惑います。
「御前の欲しいのはこれだろ」 
 彼はそう言うと懐から一枚のフロッピーを取り出しました。
「それは・・・・・・」
「キッチョムのとこの首領のデータが入ったフロッピーだ。
くれてやるよ」
 そう言ってそのフロッピーをウヨ君に対して投げました。
「おっと」
 彼はそれを右手で受けました。
「御前にやるよ。好きなようにしな」 
 ロシアノビッチ君はそう言うとニヤリ、と笑いました。
「いいのですか?」
 ウヨ君は不思議そうな顔をして尋ねました。
「何がだよ」
 ロシアノビッチ君は言葉を返しました。
「いえ、俺にこんな簡単にくれたりして」
「何だ、いらねえのか?」
「いえ」
 彼は首を横に振りました。
「事情が変わったんだよ。もうあいつがどうなろうと俺の知ったこと
じゃない。御前やニホンちゃんがどうしようが俺は知らない」
「そうですか」
 ロシアノビッチ君がキッチョム君を見放したことは彼も知っていました。
「ほら、もう欲しいものは手に入っただろ。じゃあさっさと行け。うちの家は
御前のとこみたいに甘くはねえぞ」
「は、はい」
 そしてウヨ君はクレムリンをあとにしました。
「今は奴やニホンちゃんに恩を売っておくのも悪くはねえ」
 彼は窓の外から走り去るウヨ君を見て呟きました。
「いずれあの連中とやり合うことになるだろうからな」
 彼の見た方向の遠く彼方には白い家と何処までも連なる壁、その二つが
ありました。

 第五部完です。

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