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第1835話 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/04/18 02:47 ID:aOWoTxYo
             「青い空が消えていく」
「スコット、もうすぐ家の中でシガレットチョコを食べるのは禁止よ」
 アイルちゃんがスコット君にいきなり言い放ちました。
「えっ、何でだよ」
 スコット君はチョコを巻く紙を外しかけたところで指を止めました。
「だってチョコって食べ過ぎると糖分で太るし。虫歯になるし」
「そんなこと俺の勝手だろ。いちいち御前に言われなくても歯は磨いて
いるし運動はしてるよ。心配する必要ないって」
「けれど・・・・・・」
 アイルちゃんはスコット君の剣幕の前に引き下がりそうになります。
ところがここで神は選手を交代することを命じられました。
「わたくしが決めましたの。何か文句はありまして?」
 エリザベスちゃんが手に紅茶を持ちながら華麗に登場です。
「・・・・・・チッ」
 スコット君は舌打ちしましたがどうにでもなるものではありません。
確かに彼は虫歯があるし最近太ってきています。それにアイルちゃんと
彼女、そしてウェールズ君の三人で多数決をしても当然負けます。ここは
涙を飲む破目になりました。そして月日は経ちました。
「いよいよ明日からか・・・・・・」
 スコット君はカレンダーを見ながら忌々しげに呟きます。
「カレンダーが底をつきやがった・・・・・・」
 実はまだまだ終わっていないのですが彼の心の中ではそうでした。
「家の中で食うのが一番なのに」
 そしてその日が遂にやってきました。
 スコット君はベッドから起きました。そしてまずは部屋の中にある
ユニコーンのぬいぐるみを見ます。
「御前も哀しいだろう」
 ユニコーンは何も言いません。ただスコット君を見ています。
「フンッ」
 彼はチョコを出そうとします。ですがもう懐にはありません。
「昨日で全部取り上げられたんだったな。クソッ、忌々しい」
 ユニコーンが泣いているように見えます。赤い涙を流して。
「・・・・・・行って来ます」
 憮然としたまま家を出ます。
「スコット、スカートを履くのはお止めなさい!」
 後ろから姉の声がします。
「いいだろ、これは姉貴が俺にくれた服なんだからな!」
 そう言って玄関を後にします。
「雨かよ。余計気分が悪い」
 街は霧雨が降っていました。彼は機嫌を余計悪くさせて学校へ
向かいます。
「起きた時は青い空が見えていたのにな。どいつもこいつも俺に
何か恨みでもあるのかよ」
 ブツブツと呟きながら学校に向かいます。その時木に留まる一匹
の蝶に気付きました。
「黒いな。うちの空気が悪いせいだな」
 彼はそれを見て呟きました。
「身体に悪いってんならうちの空気の方が酷いだろうが。それを棚にあげて
よく言うよ」
 この家では咳をする人が凄く多いです。それはこの空気のせいです。
「文句ばかり言ってもしようがないな。さっさと行くか」
 そして学校へ行きます。
「・・・・・・成程。面白いことになりそうだな」
 そんなスコット君をを木の上から見る一つの影がありました。
 下校時間になりました。スコット君はイライラした様子で家に帰ります。
「おい」
 そんな彼を後ろから呼び止める声がありました。
「何だよ」
 彼はその声に対して振り向いて不機嫌そうに応えます。
「まあそう不機嫌になるな」
 木の陰からアイアル君が出て来ました。
「御前か。一体何の用だよ」
「おい、機嫌が悪いな。どうしたんだよ」
 何処となくわざとらしい声でニヤニヤしながら近付いています。
「聞いたぞ。御前アイルやあの女からシガレットチョコを食うの禁止された
そうじゃないか」
「・・・・・・家の中だけだけれどな」
 彼は憮然とした様子で答えました。
「まあ怒るなって。折角俺がチョコを御馳走してやろうってんだからな」
「本当か!?」
「俺は嘘は言わないぜ。誇りにかけてな」 
 そう言うとニヤリ、と笑いました。
「わかった、じゃあ信じよう。じゃあ早速くれ」
「ここじゃ何だ。御前は家の中で吸うのが好きなんだろう?ジュースとか
と一緒に」
「ああ」
「じゃあついて来い。いい場所へ連れて行ってやる」
「わかった」
 こうしてスコット君はアイアル君について行きました。そして何処か
あやしげな建物で暫く過ごしました。
 やがて中から出て来ました。
「明日も頼むぜ」
「ああ、これ位なら俺でも払えるしな」
 スコット君はそう言ってその場をあとにしました。その顔はとても
晴れやかでした。
「安いものだな。チョコとそれを食わせる場所を提供するだけで金が
入るとはな」
 アイアル君はスコット君の後ろ姿を見送りながら言いました。
「太陽の光が冷たいな」
 彼は空を見上げて言いました。見れば雨はもう止んでいます。
「この金をあの女への悪戯に使ってやる。そして何時かアイルを俺だけの
ものにするんだ」
 そう言うとその場を後にしました。その後の道には雲のせいでもう光が
差し込んではいませんでした。

解説 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/04/18 02:52 ID:aOWoTxYo
 アイルランドの禁煙のお話です。アイリッシュ=パブで禁煙したら
変なことにならないかな。オチみたいになったら危険ですが。あと
黒い蝶は蛾だったかな。変換しました。ロンドンのスモッグはいまだ
凄いようです。
ttp://news.fs.biglobe.ne.jp/international/tm040329-933132.html
ttp://mymilky.com/main/london4.html
 タイトルのもとになってる曲知ってる人いるかなあ。光GENJIですが。

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