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第1845話 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/04/24 01:39 ID:l7+Vhd9p
                     「力をつけよう」
 ニッテイさんが健在だった頃のお話です。リクグンさんとカイグンさんが家の
柱として頑張っていました。
 二人には力をつけて喧嘩に勝ってもらわなくてはなりません。そこで二人は
家で最も人気のある白米を食べていました。
 ところがどうもあまり力が出ません。普段の圧倒的な強さは何処へ行ったやら、
という有様です。
「おい、これってまずいんじゃないか!?」
 皆は口々に言います。物騒だったこの時代、二人が満足に動けないとお話にも
なりません。
「これは困ったな」
 ニッテイさんは腕組みをして考えます。二人に何とかして力を取り戻して
もらわなくてはなりません。
「食べ物を変えたらどうでしょう?」
 家でお医者さんをしている人が言いました。
「食べ物をか!?」
「はい。どうも白米だと元気が出ないようなので。ここは麦飯や玄米にしてみたら
如何でしょうか」
「ううむ・・・・・・」
 ニッテイさんはその提案に腕を組んで考え込みました。
「しかし麦飯も玄米もまずいと評判が悪いからのう。それだと二人の
やる気が起こらんのではないか」
「とりあえずものはためしです。二人に食べてもらってみましょう」
 こうして二人に麦飯や玄米を食べてもらうことになりました。
「じゃあ食べてみるか」
 カイグンさんは比較的素直にそれを聞き入れてくれました。それに
対しリクグンさんは白米じゃないとやる気が出ないというので嫌がり
ました。
「悪いけれど俺はこっちのほうがいいや」
「そうですか」
 そしてロシアノビッチ家との喧嘩になりました。麦飯を食べている
カイグンさんは順調に勝利を収めていきます。それに対してリクグン
さんはどうでしょうか。
「やばい、身体に力が入らない」
 ロシアノビッチ家の大勢の大男達を前に体調不良です。これはかなり
危険です。
「畜生、バロン森の言う事なんてまに受けるんじゃなかったぜ・・・・・・」
 バロン森とはリクグンさんの部下のお医者さんです。この人が強硬に
白米を食べるよう勧めたのです。
「ウラーーーーーッ!」
 そうこうしている間にロシアノビッチ家の連中が襲い掛かって来ます。
リクグンさんはふらつく足を必死に動かしながら彼等に向かって行きます。
「こうなりゃやぶれかぶれだ。死ぬ気でやってやらあっ!」
 ホウテンでの大喧嘩は何とか勝ちました。しかしそこで限界にきて
しまいました。
「何とか勝てたからよかったものの・・・・・・」
 流石にリクグンさんも参りました。それからは麦飯を主に食べるように
しました。
「だけどあの男はまだ白米を食べろとて言っておるのだな」
 ニッテイさんはリクグンさんに尋ねました。
「・・・・・・ええ。しかも自分の責任を認めようとしません。必ず力をなくす
元凶のバイキンがあると言ってまだ必死に顕微鏡を覗いています」
「・・・・・・困ったのう。こうした頑固で無責任な体質がはびこらなければ
よいのだが。サヨックにもその傾向があるしのう」
 ふう、と溜息をつき日之本家の将来に心配するニッテイさんでした。

解説 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/04/24 01:43 ID:l7+Vhd9p
 今回のソース。旧日本軍と脚気のお話です。あと渡部昇一さんの
『かくて昭和史は甦る』も参考にしました。
ttp://www.mars.dti.ne.jp/~akaki/igaku02.html
ttp://www.down.ne.jp/ish/ijn/kaiyo/mugimesi.html
 森鴎外は爵位が欲しくて外国への手紙にバロン森とかはったりで
書いていたそうです。彼の作品は舞姫とか高瀬舟とか読みましたが。
こうした一面もあるんだなあ。

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