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第1850話 不詳 投稿日: 04/05/01 02:52 ID:P/fvbzxy
 大EU町
1
「なんてこった…」
ある朝、ニホンちゃんが登校すると、靴箱のところでアメリー君が凹んでいました。
「どうしたの?アメリー君。」
最近何かと災難続きのアメリー君、またイラク君の家でひどい目にあったのかと思いきや。
彼が黙って指差した先には、今日の壁新聞がありました。
「なになに?・・・へえ、EU町のみんなって仲がいいんだねー。」
EU町はニホンちゃんたちのお祖父さんのころまでは、町全体を巻き込んで喧嘩に明け暮れていたのですが
第2次町内大喧嘩で家の規模が軒並み縮小し、しょうがなくフランソワーズ家主導で仲良くすることになったのです。
最初は反対していたエリザベス家もついに納得し、今ではEU町内会といえば商売では一致団結が当たり前になっていました。
そのEU町内会に、今度はポーラちゃんたちが入った、という記事でした。
「仲良くするのはいいことじゃない。ロシアノビッチくんのどさくさでポーラちゃんたちはひどい目にあったしね」
のほほんというニホンちゃんに、アメリー君はついに大声を出してしまいました。
「何がいいんだよ! これであいつらは全体で家の規模も、お金も、家族の数もボクを抜かすんだぞ!
あいつら、ついにEU町をほとんど統一しやがって……。どうしよう。」
さすがはアイムナンバーワンのアメリー君、よほど悔しいようです。
今でこそそこそこ仲がいいとはいえ、アメリー君の家は過去にいろいろやってますからね。
徹底的に自分中心で嘆きつづけるアメリー君に、ニホンちゃんも声をかけられずにいました。
2
そんな彼らの横をカナディアン君が静かに通りすぎ、タイワンちゃんとチューゴくんが罵り合いながら通りすぎ、
カンコ君もニダニダいいながら通っていきます。
彼らも彼らで忙しいのです。いつでもニホンちゃんにかまっていられるわけではありません。
そして、ついにEU町のみんなが歩いてきました。
お揃いの青地に十二の星を配した制服に身を包み、歓喜の歌を合唱しながらの登校です。
アーリアちゃんやポーラちゃんたちは少し恥ずかしそうですが、マジャール君は意外に堂々と合唱に加わっています。
「あら、アメリー君にニホンちゃん、ごきげんよう。」
頭に天使でもいるかのような幸福そうな表情で、そう声をかけてきたのはフランソワーズちゃんでした。
「あ……おはよう。フランソワーズちゃん。それにみんな。」
状況に圧倒されたニホンちゃんの返事はしどろもどろ、アメリー君に至っては返事すらできません。
「これからは25家で力を合わせてやっていくことになりましたわ。ユーロともども、よろしくお願いしますわね。」
エリザベスちゃんも言います。アメリー家もニホン家も、彼らにとっては大口のお客さまなのです。
「……まだ負けたわけじゃないぞ。お金の取り分の問題だってあるし、絶対に盛り返してやる。」
何とか立ち直ったアメリー君、打って変わって挑戦的な目つきでにらみつけます。
そんなアメリー君の視線を鼻先で流し、フランソワーズちゃんは優雅に微笑みました。
「まあ、お手柔らかにお願いしますわ。どっちが勝つかはわかりますけどね。オホホホホホホホホ!!!」
高笑いを残し去っていく町内会の面々、悔しげなアメリー君、おろおろするだけのニホンちゃん。
三者三様の朝はこうして過ぎていくのでした。

解説 不詳 投稿日: 04/05/01 03:14 ID:P/fvbzxy
大EU町 後書き

ソースはこれです。
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040501-00000092-mai-int
EU,ついに旧東欧圏の諸国も加盟し25ヶ国の大所帯になりました。
欧州憲法、単一通貨とどんどん国家としての枠組みを整えてますが、さて、どうなることやら。
アメリー君の反応は創作です。実際は欧州経済圏の拡大って事でそれほど悲観することでもないでしょうけど。
それにしても19世紀以前は想像すらできないような状況になってますな。
欧州帝国なんて、ローマ以来でしょうし。

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