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第1936話 シェロ 投稿日: 04/07/19 02:25 ID:efdQ4eeW
「見せてやるよ、雑草魂」

「はふぅ〜〜〜〜……アキレス様ぁぁ」
ニホンちゃんは目をトロンとさせて余韻に浸ってます。
「どうだい、ブラピーはカッコよかったろ?」
自慢気にアメリー君が語りかけます。どうやら自信作のビデオをニホンちゃんに貸してあげたみたいですね。
「うん、、はぁあ、あの逞しい体に抱きしめられたい……」ほぅとため息をつくニホンちゃん。
その表情を見て「抱きしめてぇ」と湧き出たボンノーを、かき消すかの様にアメリー君は喋ります。
「へ、へへっ、俺の家のビデオは世界一だからね。他にもスゲーの一杯あるぜ。
この前見たろ?「怪人蜘蛛男」、アレの続きも出来たんだ!」
「うそーっ!やだすっごい気になるよぉ」
「それに後、あれだ。地球が暖まったせいで南極の氷が解けちゃったっていう「あさってくん」
うちの得意なCGが一杯あって、地球暖めたらマジヤバイって気持ちになるぜ!!」
「すごいねーっ!そんなの見たらキョートの間のお約束思わず守りたくなっちゃうよ〜っ!」
「うぐっっっっ…………」

そんな二人のやり取りを、面白く思っていない子がいます。
「なーにが怪人蜘蛛男だ。あんなのただヒモで引っ張ってるだけだろーが。
何がCGだってんだ、あんなのただのお絵かきじゃねーかっつの。」
アジア町のタイラン君です。彼もビデオを作ったりしてますが、いかんせん彼の家はお金が少なく、
アメリー君みたいにビデオにお金をかけられません。
お小遣いを沢山もらって好き放題してるアメリー君がうらやましくもあり、ねたましくもあり。
そしてなによりニホンちゃんが彼のビデオを見て大喜びして、彼とばっかり話してるのも、ちょっとアレなんです。
「ちきしょう、やっぱボンボンはモテるのかなぁ、俺だってお金があれば、あんくらいのビデオ作れんのに……」
ため息をついて彼は、椅子で船を漕ぎつつ、窓の景色を眺めていました。
窓はかすかに、彼の体を写しています。褐色に焼けた、逞しい体を。
と、一瞬バランスが崩れて、椅子がひっくり返ってしまいます。大変です、普通の小学生なら後頭部強打確定です。
しかし、そこはタイラン君。「おぉっと!」と叫ぶと椅子から体を一回転させて跳び、綺麗に着地します。
椅子が派手に倒れる音を聞いたニホンちゃんは、その後の華麗なタイラン君の身のこなしをみて、思わず、
「きゃぁ!タイラン君カッコいい!!」と叫びました。

その嬌声を聞いて、タイラン君は何か閃いたようです。
「マジ、俺カッコいい? そっか、ニホンちゃんはこーゆーの好きなんだ!
じゃぁ、こーゆーのばっか集めたビデオ作ったら、喜んでくれるかも!!」
タイラン君の心に炎が燃え上がりました。アメリー君を指差して、宣言します。
「やい!おめーのビデオに負けないもん作ってやっからな!雑草パワーなめんなよ!」
そういって彼はいてもたってもいられず飛び出して行きました。学校はどうするの?

家に帰ったタイラン君はカメラの前で、お父さんに仕込まれた体術の練習をしています。
彼はお金も、CGを作る技術もなにも持っていません。
あるのは、鍛え抜かれたこの体と、燃える魂だけ。
彼の想いは、彼がこれから命がけで作ることになるビデオに乗って、ニホンちゃんに届くのでしょうか。
頑張れ、超頑張れ。火の中に飛び込んで熱くてもやれ。

解説 シェロ 投稿日: 04/07/19 02:32 ID:efdQ4eeW
日本市場を席巻するハリウッドに挑む、全場面ノースタントノーワイヤーのムエタイ映画、「マッハ!!」
近日公開ですね。頑張れタイラン君ということで一本上梓。
風刺がないのはケンチャナヨ^^;

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