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第1951話 シェロ 投稿日: 04/08/09 00:34 ID:dkRSGjzw
〜 Granpa's memories 4 〜
カイグンがヤマトと共にいなくなってから、アメリー家の我が家への攻撃はさらに熾烈を極めた。
まるで、あいつの死を嘲笑うかのように。
家族で囲んでいた食卓のあった部屋も、彼らの投げ込んだ火炎瓶のせいで、もはや消し炭しか残っていない。
「いつまでやってんだよ。所詮黄色い猿が、白様に勝てるわけねぇんだよ。
さっさとそれを認めて、奴らの靴を舐めちまえ。楽になれるぜ」
私の中の悪魔が語りかける。それは、私の本音だったのだろうか。
しかし、まだ私達は屈するわけにいかなかった。
ここで屈したら、カイグンの死も、ボロボロになりながら今までやってきたことも、すべて無駄になる。
そう、すべて無駄になるんだ。
私達を駆り立てる炎は、まだ、消えてはいなかった。

「ヒロヒト、いい話がある」
薄ら笑いを浮かべたニッテイが、大きな筒を持って私の部屋にやってきた。
「どうした?」
私が尋ねると、ニッテイはその筒を置いて、恐ろしいことを話し出す。
「これ、知ってるか?爆竹や火炎瓶よりも、もっともっと強力なヤツ。
そう、花火だよ。これ、アンクルサムに叩き込んでやらねぇか?
これがあれば、あの野郎も、ウチの家みたく消し炭にできるぜ。
それだけじゃねぇ、それを見る周りの連中も、これの威力でひれ伏すだろうよ。
ひ、ひひ、どうだ、すげぇいい話じゃ」

パン!

ニッテイが話し終わる前に、私は思わず、彼の横面を張り倒していた。
弟を殴ったのは、これが初めてだったかもしれない。
「大馬鹿野郎!!」
私は大声で叫んでいた。
噂で花火の持つ威力は知っている。確かにそれを使えば現状は急転するだろう。
周りの白い連中はみな私達に恐れおののき、ひれ伏すだろう。
でも、それだけはやっちゃいけない。それは人の道に外れること。
私達が始めた喧嘩のルールは、守らなければならないと思った。
死んだカイグンも、きっと望んではいなかったろう。

・・・・・・そう思っていたのは、私達だけだったのか。
ドーン!!

家中に爆音が轟く。あの音は、ヒロシマの間から聞こえた。
思わず私とニッテイは駆け出していた。
ヒロシマの間に駆け込むと、そこには、

なにも、なかった。本当に、なにも。

また轟音が響く。見晴らしの良くなったそこから見えた景色は、思い出したくもない。

「花火だ・・・・・・・・・・・・・」
ニッテイは立ち尽くし、呆然と呟く。
「ヘイ!いるだろニッテイ!ヒロヒト!ウチの花火は凄いだろ?
次はどこがいいんだ?リクエストに応えてやるぜ!HAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
アンクルサムが高笑いしているのが聞こえる。

・・・・・・そうか、君達は、そうなんだね。
私もニッテイもその場にへたり込んだ。

・・・・・・もう、疲れた。わかった。わかったからもう、やめてくれよ。頼むからもう、許してくれよ。なぁ。  (続)

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