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第2055話
九鬼唯 ◆/siqg9Zg7k
投稿日: 04/11/21 09:57:38 ID:zUOwanFk
【tanasinn的世界】
1.遭遇
ある日の帰り道、今日も学校でイジメにイジメ抜かれたニホンちゃんはとぼとぼと夕暮れの町を歩いていました。
なんとかチューゴくんやカンコくんとなかよくする方法はないものか。そんなものはありません。ニホンちゃんはひとつ溜息を漏らしました。
「おじょうちゃん、ちょっとまちな」
「――?」
ふと、呼び止められて振り向くと、いかにも浮浪者といった風体の男が腕を組んで木箱に腰掛けていました。
もちろん、人見知りするニホンちゃんはおびえました。ひょっとしてひとさらいかもしれません。
「ニダー、いらないかい?」
「……ニダー?」
「そう、ニダーだ」
男は足元のダンボール箱を拾い上げて、中身が見えるように差し出しました。
ニホンちゃんがおそるおそる覗き込むと、涜神的な、なざしがたい蛆虫のような物体が、精液にも似た白濁色の粘液を引きながらダンボールの底でニダニダと不気味に蠢いていました。
「ひィッ!」
そのあまりのおぞましさとおそろしさ、そして不快感と吐き気を催す物体に、ニホンちゃんはたまらず逃げ出していました。
「ムダだよ。ダンクンの呪いからは誰も逃れることができない」
2.発生
ニホンちゃんは自宅に着いた後も、あの物体のことがなかなか頭から離れませんでした。
「おい姐さん、大丈夫か?」
ろくに食事もとらずにずっと机の上に突っ伏したままの姉を気遣って、ウヨくんがそっと肩を叩きました。
「……うん、だいじょうぶ」
ニホンちゃんはうしろを振り向いて力なく微笑みました。
「ちょっと嫌なことがあったの。それより宿題やんなきゃ……」
すこしは気も紛れるかもしれないと思ってランドセルを開くと、同時にニホンちゃんは椅子ごと後ろに倒れこみました。
「おい、姐さん、どうした!?」
死人のような土気色の顔で後退るニホンちゃんにただならぬものを感じたウヨくんは少し躊躇した後に机の上のランドセルを覗き込みました。
するとどうでしょう!ランドセルの内側を、根の国から這い出してきたとしか思えない、おぞましい物体が蠢いていました。
「うわあああ!なんだこりゃ!!」
ウヨくんはランドセルを引っつかむと、庭に放り捨てて燃やしてしまいました。ランドセルが消炭になった後も、棒でかきまわして調べましたが、謎の物体が生きている様子はありませんでした。
「姐さん、もう安心だぜ。それよりあれはなんだったんだ?」
「ニダーよ……」
「へ?なんだそりゃ」
「わからないわ。でも、すごく不安なの、その名前を聞くと……」
3.侵蝕
あのような騒動があって、ニホンちゃんはなかなか寝付くことができませんでした。
ココアでも飲んで気を落ち着けようか。
ニホンちゃんが布団から起き上がると、ふと、闇に包まれた食堂から囁くような声が聞こえてきました。
「どうぽがにつていにぎやくさつた」
「しやざいとばいしようをようきうしる」
「うりならまんせい」
泥棒?それとも幽霊?ニホンちゃんは震える足を引き摺るようにして声が聞こえる方――キッチンの排水溝を覗き込みました。
排水溝から、白いヤキソバのようなものがあふれだしていました。が、細動するそれはヤキソバなんかではないことは明白です。
「イヤあああああッ!」
ニホンちゃんが絶叫して回れ右をすると、ぐしゃっとバナナを踏み潰すような感覚を覚えました。
――キッチンの床いっぱいにニダーがこびりついていました。いえ、床だけではありません。食卓から壁、天井まで家のすべてが……
「どうぽがにつていにふみころさたあ」
「につていのぐんこくしぎにはてつていこうびしる」
「うりならまんせい」
「ういではんあぽじだんくんまんせい」
ざーっと怒涛の如く押し寄せてくるニダーに、ニホンちゃんは絶叫しました。
4.寄生
「姐さん、姐さん!」
「う……ん……」
ニホンちゃんがゆっくり目を開くと、ウヨくんが心配そうに顔をのぞきこんでいました。
きのう、あのあと、いったいどうなったのでしょうか?
「こんなとこで寝て、どうしたんだよ?」
ニホンちゃんは昨夜の出来事をすべて話しました。
「姐さん、それは悪い夢でも見たんだよ。無理もないよ、きのうあんなことがあったんだからな……」
「そうかしら……」
キッチンを見回してみても、家中を覆いつくしていたニダーの痕跡はどこにもありません。
身体を調べてみても、どこにも異常はないようでしたので、結局ニホンちゃんは夢だったと思うことにしました。
朝食は食べる気がしなかったので、その日はすぐに学校へ行きました。
「おはようニダ」
「あ、カンコくんおは……」
昇降口のところでうわばきを取り出しながら背後を振り向いた、その時――
ニホンちゃんは言葉を失いました。
「ん? どうしたニダ?」
カンコくんの、身体のいたるところから皮膚を突き破って顔を出した無数の触手――それは、きのうのおぞましい物体でした。
顔をひきつらせて後退るニホンちゃんの腕を、カンコくんはがっしりと掴んでニダリと笑いました。
「さあ、ウリと一緒に教室まで行くニダ」
END
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