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第2064話 熱血君 ◆O4x3A1GrPw 投稿日: 04/12/03 01:22:32 ID:DN2Y3s2W
              「軟派男の意地 傷跡」
 紫苑ちゃんがマカロニーノ君と一緒にいるようになって暫く経ち
ました。彼女は今では彼の家にいつも遊びに来ています。
「やあ、いらっしゃい」
「うん」
 家のない彼女は必然的にこの家に半分いるようになりました。
見れば彼女の親戚の人も結構います。皆彼の家では色々あっても
仲良く暮らしています。
「けれども最近はね」
 家の主となったムッソリーニおじさんが彼等を快く思っていない
のです。それでもゲルマッハ家やロシアノビッチ家のことを比べる
と天国でした。
「私達ってこうしてずっと誰かに虐められて生きていくのかな、永遠に」
「そんなことないよ」
 項垂れる彼女にマカロニーノ君が声をかけました。
「辛い時は何時か絶対に終わるよ。そんなことはないさ」
「そうかしら」
 けれど今まで虐められてきてばかりだった彼女にその言葉を信じる
ことはできませんでした。彼女の受けてきた虐めは本当に酷いもので
したから。
「貴方は知らないのよ。今まで私がどういった目に遭ってきたか」
 そう言いながら服を脱ぎます。本当ならマカロニーノ君にとっては
とても有り難いシチュエーションですが今回は違いました。
「・・・・・・見て」
 下着だけになった彼女の身体は白く透き通るようでした。けれどそ
の肌にはあちこちに傷がありました。
「これが私の今までの人生よ。傷にならないものでもどれだけあったか」
 マカロニーノ君は何も言えませんでした。紫苑ちゃんは言葉を続け
ます。
「この傷見ても言えるかしら。辛い日が終わるって。私には思えない
わ。物心ついてから、いえその前からずっとこうだったもの」
「言えるよ」
 けれどマカロニーノ君はそんな彼女に対して優しい声で返しました。
「えっ・・・・・・」
 戸惑う彼女の肩にそっと服をかけます。
「まずは服を着てよ。風邪ひくよ」
「え、ええ」
 戸惑いながらも服を着る紫苑ちゃん。そんな彼女に彼は本当に優しい
声で語り掛けます。
「僕の家だってね。ついこの前まで凄いバラバラだったんだよ。それで
一つになったのは最近。それまではいろいろあったなあ」
 多くの部屋に分かれていがみ合ったり企んだりしていた火宅。おまけ
にフランソワーズ家やハプスブルク家も介入してきました。バチカンの
おじさんもこの時の人達はお世辞にもいい人ではありませんでした。
「一つになるまでね。喧嘩もあったし傷つく人もいたよ。けれどね、そ
ういったことを乗り越えて今のこの家があるんだ」
「そうだったの。貴方も」
 いつも明るくて女の子に声ばかりかけている彼ですがその家にはかっ
てそうした歴史があったのです。これは意外なことでした。
「だからね、紫苑ちゃんの辛い日も何時か終わるよ。その日まで頑張っ
たらいいよ」
「ええ」
 それを聞いた彼女は微笑みました。何時だったでしょうか。最後に
微笑んだのは。ナッチ会が出て来てからはなかったような気がします。
スターリンおじさんの台頭からかも知れません。けれどもう笑うこと
さえ忘れかけていたのは事実でした。
 それから少しずつでした。笑えるようになってきたのは。けれどそれ
も短い間でした。

 第二部です。今回はイタリア統一の歴史もスパイスに入れました。

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