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第2115話 マンセー名無しさん 投稿日: 05/01/13 22:22:25 ID:eQMJHMRb
さわさわさわ
風のひと吹きごとに稲の海にさざ波が渡ります。
わぁ
歓喜の声が誰からともなく上がります。
此処はベトナ家のお庭。手入れの行き届いた水田が
一面に広がっています。

「・・ニホン家の庭に似ているな・・」
黒字に金の大きな柄の刺繍が入ったアオザイを着た
アーリアちゃんが短い感想を云います。
「うん、ホントだ。きれいで広い田圃だよねぇ。
 ベトナちゃん家もお米いっぱい食べるからだろうねぇ。」
こちらは青の上着と白のパンツを合わせた、
これもアオザイを着たニホンちゃんです。

そう、地球組のみんなはベトナ家にお泊まりに来ているのです。
昨日はみんなでお買い物をしたり、ホーチミンさんの案内で
ベトナ家ご自慢の地下要塞を見学したりで一日を過ごしました。
そして、昨夜のうちに女の子達はベトナ家の伝統衣装”アオザイ”
を注文したのです。みんなで頼んだ、と言っても其処は年頃の
女の子、仲良し同士でお揃いを造る子もいれば、ここぞとばかりに
自己主張の強いデザインを試す子、自分の家のシンボルカラーをどうだ
と云わんばかりに取り入れる子と様々です。景色の良いテラスでの
お食事会は、そのままお互いのセンスの品評会に早変わりです。
でもみなさん、早く食べないとビーフンが伸びますよ・・・
「おほほほ、随分と質素なデザインです事。質素な体型に
 とてもよくマッチしていましてよ。」
豪奢な金髪に合わせたシャンパンゴールドの生地に細かい刺繍が入った
衣装に身を包んだフランソワーズちゃんがいつものように先制攻撃です。
「そう仰る貴女こそ、有りもしない中身を上辺だけ飾ったその金色が
 とても良くお似合いよ。」
と、これもまたいつもの様に優雅さに刳るんだ毒舌で応戦するエリザベスちゃんは、
ホワイトパープルで自分の出自の良さと清潔さを主張しています。

その隣で、マイペースにお料理をほおばり続けるのは赤字に白い
縁取りの服に身を包んだインドネシアちゃんです。
どうやらアジア町東南地方風のお料理がお気に入りのようですね。

あぁ、タイワンちゃんがにこにことニホンちゃんとお料理の分けっこを
しています。もちろん彼女はニホンちゃんとお揃いのデザインをチョイス。

一方、皆に逆らうようにフランスパンのバゲッドサンドと香りの高い
コーヒーを独り楽しんでいるのは、白地に青の縁取り、胸に青のダビデの
星をあしらった衣装を纏った紫苑ちゃんです。
目の前のステーキやサラダと云い、やはりみんなとは一線を画しています。

だん!と勢いよく両手をテーブルに叩付けて、
「またそうやって他人の家で他人と違った事をしてトラブルを起こす!
 あんたとアメリーのお陰で一体どれだけのアジア町の人達が・・・」
と紫苑ちゃんを詰問し始めるアサヒちゃんの服は当然のように真っ赤・・・
「また、こいつかよ・・」と云う周囲の無言の非難をよそに更に言い募
ろうとするアサヒちゃんでした。ちょっと空気が澱みかけています。
ところが、「違うのよ・・」と呟く様な一言で皆の注意は一斉に別の
子へと向かいます。

えっ、と一同が振り向く先に居るのは困ったように微笑むベトナちゃんです。

「一体、何が違うんだ?」
一同の疑問を代表するようにアーリアちゃんが問いかけます。

「・・紫苑ちゃんはちゃんと私ん家のお料理を食べてるんだよ・・」

彼女の云う事には、元々お家が近い関係でベトナ家には
チューゴ家風のお料理もアジア町東南方面のお料理も元から有り、
その上でフランソワーズ家風のお料理も少し前から始めたんだそうです。

「だから、紫苑ちゃんが家でフランソワーズ家風のお料理を食べるのは
 変じゃないんです。」

静かに言い終わるベトナちゃんに心なしか紫苑ちゃんが微笑んだように
見えます。くすっと微笑み返すベトナちゃん。
みんなの空気もまた和やかになった瞬間でした、が---
「でも何でわざわざフランソワーズの家の料理を始めたのよぉ?
 ちょっと唐突じゃない?」タイワンちゃんが口を尖らせます。
「其れは、ですわねぇ」やれやれ、と言いたげに口を開くのは
フランソワーズちゃんです。
「・・すこし前に我がフランソワーズ家がこちらを支配していた時期の
 名残ですわねぇ。」
いつものように云いにくい事をさらりと宣うフランソワーズちゃんです。
和みかけた空気も一瞬で凍り付きます。

「流石フランソワーズ家。栄光は全て思い出の中なのね。」
「あわわ、何かあっても仲良うしてな、ニホンちゃん・・」
「私だって怖いんだよう・・」
「ニホン、頼る相手は私だろう。」
「(・・もしもし、モサドか?再び冷戦勃発の可能性アリ。至急軍に・・)」
他の子達もあまりの緊張感に取り乱し始めます。

静かに目を合わせるフランソワーズちゃんとベトナちゃん。

永遠のような数瞬の静寂を先に破ったのはフランソワーズちゃんでした。
「・・本当に、我が家のお料理を此処までご自分達のモノにされたのね。
 このパン、コーヒー。他のお皿も全部。全く侮れません事。
 用心しないとこのままではお料理で追い越されかねないわ。」
ほほほ、と微笑みかけるフランスワーズちゃん。
「もちろん、負けません。お料理でも、お勉強でも、体育でも。」
微笑みながら静かに、しかし力強く宣言するベトナちゃん。
そう、彼女の纏うアオザイは純白。
まるで今のベトナ家のような白です。

解説 マンセー名無しさん 投稿日: 05/01/13 22:37:48 ID:eQMJHMRb
どうも、昨日 577-579 のベトナ家ネタを
投稿した者です。性懲りもなくまたベトナネタ
を書いてしまいました。
まぁ、数年前のベトナ家観光が元ネタですね。

まぁ要するに地球組女子のアオザイ姿が
見てみたかった訳なんですが・・・・
本当にアオザイって女の子が綺麗に見えますよ。
もう、向こうの女学生が純白のアオザイを着て
集団で歩いている姿なんかもう現実離れしている
位でしたから。

あ、ご感想お待ちしています。
非難は(もう書くな、と言うのも含めて)
真摯に受け止めますから。

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