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第2144話 シェロ 投稿日: 05/02/03 02:03:41 ID:b5MwYN3o
「月明かり〜ある少女のモノローグ」

「ごめん!ホント無理!ごめんね!」
そう言ってニホンちゃんは、あたしを締め出した。
エリザベスちゃんのとこもダメだし、あぁ、参ったな。今日どこで寝よう。
とりあえずここいても意味ないし、ちょっとプラプラしようかな。

野良犬が、餌を探してうろついてる。

ニホンちゃんの家の隣はいつもにぎやかだ。
「アイゴー!これはニッテイの陰謀ニダ!ニホンに謝罪を要求汁!!」
あの子はいいよね。帰る家があるもの。

あたしには、温かい家庭っていうのの記憶が、ほとんどない。
あたしが小学校入る前くらいに、みんなばらばらになっちゃったから。
オス饅堂に間借りしてたあたしの家は、区画整理で取り壊されちゃった。
その時、エリザベスちゃんちの人に、家を建ててあげるとか言われたけど、
その約束は守ってもらえなかった。
あたし達の借りてた土地は、周りの人の家に全部持ってかれて、あたし達はその人たちの家に居候することになったの。
で、あたしはトルコちゃんちにそのまま預けられた。

「あなたはウチの子になるんだから、ちゃんと言うことを聞きなさい」
いつもあたしはトルコちゃんに言われる。同じ本を読めとか、お行儀よくしろとか。
あたしがパパからもらった絵本は、トルコちゃんに破られた。
だからあたしも頭にきて、大喧嘩して飛び出してきちゃった。
あそこには正直、もう帰りたくないな。
あたしはあたしの生きたいように生きたいだけなのに。誰もわかってくれないもの。


あたしの家族は皆一緒。同じような目にあってる。
おねぇはペルシャちゃんちで、あたしみたいに苛められて、
あにぃはイラク君に、生ごみ投げつけられたりしてた。
そして、パパとママは・・・・・・どこにいるかもわからないんだ。


あたしが間違ってるのかな。言われたとおりに、
ママからもらった名前を捨てて、
パパから教わった生き方を捨てて、
トルコちゃんちの子になったら、ちょっとは楽になれるのかな。

「わかんないや。オレ馬鹿だもん」
あたしはそう独り言ちて、橋の下で新聞紙に包まる。
あの野良犬とおんなじ。
明日も当ても無くさまよって、歩き続けるんだ。

月明かりの下で。

解説 シェロ 投稿日: 05/02/03 02:23:32 ID:b5MwYN3o
「傷だらけの少女」の続きのようなものでございます。

クルディスタン(クルド人の土地の意)と呼ばれる地域は、そのほとんどがオスマントルコ領でした。
第一次大戦の講和条約(トルコ・連合国間)セーヴル条約によって一度はクルド自治領が認められますが、
その条約は実質、クルディスタンの分割統治で、その後オスマン帝国崩壊⇒トルコ共和国成立の流れの中で、
クルディスタンはトルコ・シリア・ペルシャ帝国(イランパーレビ朝)・イラクに分割、併合され、その名前を史上から消すことになります。

当時は民族主義絶頂期であったこともあり、少数民族であるクルド民族は同化、抹殺政策を受けるわけです。
それに対してクルド民族は、テロという手段で抵抗するわけです。
でもって虐殺されたりしてるということが、以下のサイトで記されてました。
ぐぐるのキャッシュで失礼↓
ttp://www.google.com/search?q=cache:wV3fQ3v6ADgJ:www.itrek.jp/~rafiq/nanmin/kurudo.html+%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%80%80%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%89&hl=ja
こっちもわかりやすく書いてます↓
ttp://www1.odn.ne.jp/~cbq97680/
wikiです(どぜう氏多謝!)↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%89%E4%BA%BA


オレっ子なのは仕様ですw
×絶頂機⇒○絶頂期

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