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第2148話 無銘仁 ◆uXEheIeILY 投稿日: 05/02/05 21:41:04 ID:QNP1+aWY
 「流行り病に気をつけろ」

 ある日の放課後、地球小学校の一階にある保健室に、
チョゴリちゃんが泣きながら駆けこんできました。
「大変ニダ、ウリの兄さんがおかしくなったニダ」
「何があったのですか、チョゴリさん」
養護教諭のセキジュージ先生が、優しく冷静に尋ねました。
チョゴリちゃんの後ろには生気のない顔をしたカンコくんが
遠くを見るような目をして立っていました。
「ウリが間違っていたニダ。ニッテイの次にウリが悪いニダ。
キッチョム兄に謝罪するニダ。賠償するニダ。ウリは独裁者だったニダ」
まるでロボットか何かのように、同じ台詞を繰り返しています。
「確かに、いつものカンコ君とは様子が違いますね」
「そうニダ。いつもの兄さんならもっと自信過剰で軽挙妄動で
自画自賛で我田引水で牽強付会でウリナラチェゴのはずニダ」
兄思いのチョゴリちゃんは、涙で頬を濡らしています。
 そのとき、セキジュージ先生の眼鏡がキラリと光りました。
「ジギャク弁という体の器官があるのは知っていますか」
チョゴリちゃんは首をぶんぶん振りました。
「ジギャク弛緩症候群、通称ジギャク病に罹患すると、ジギャク弁が
正常に機能しなくなります。その結果、普段はジギャク弁が留めている
謝罪汁や賠償汁などの体液が縦横無尽に体内を駆けめぐり、
最悪の場合は死に至ることもある、恐ろしい病気なのです」
チョゴリちゃんには、セキジュージ先生の眼鏡が
ぎらぎら光っているように見えました。
 セキジュージ先生がカンコくんを「実に興味深いですね……」などと
つぶやきながら観察していると、今度はフランソワーズちゃんが
泣きながら駆けこんできました。
「先生、ベスの様子がおかしくなりましたの。診てくださらない」
「何があったのですか、フランソワーズさん」
フランソワーズちゃんが黙って横へ退くと、後ろからエリザベスちゃんが
出てきました。驚いたことにカンコくんとそっくり同じ目をしています。
「ああ、お父さまは、それにおばあさまはどうしてあんな恐ろしいことを
なさったのかしら。わたくしが謝罪して賠償しなければ……」
その顔にはやはり生気がありません。チョゴリちゃんと
フランソワーズちゃんは、セキジュージ先生を凝視しました。
「間違いありません。エリザベスさんも、ジギャク病に罹ったのです」
 セキジュージ先生が二人をベッドに寝かせて体温を計っていると、
今度はアーリアちゃんが青ざめた顔で駆けこんできました。
「大変だ、兄上の様子がおかしい。どうしたらいいのだ」
「何があったので――」
「先生、いいかげん空気嫁ニダ」
ゲルマッハくんもやはりジギャク病に冒されていました。
「ここまで流行するとなると、校内に感染源があるのかもしれません」
セキジュージ先生はいつもの思慮深い表情に戻りました。
 みんなが感染源についてあれやこれやと討議していると、
今度はアサヒちゃんとウヨくんがニホンちゃんを担ぎこんできました。
「先生、姉さんの様子がおかしいんです」
力なく横たわるニホンちゃんの顔をのぞきこむと、生気のない顔で
「大東亜戦争ハ解放ノ聖戦ナレバ英霊ニ哀悼ヲ捧ゲザルハ万死ニ値ス。
毛唐ト非国民ヲ追ヒ出シテ誇リアル豊カナ国ヲ築キマセウ」
などと意味不明なことを口走っています。
 そのとき、セキジュージ先生の眼鏡がキラリと光りました。
「シュウセイ弁という体の器官があるのは知っていますか」
子供たちは口をそろえて知らないと答えました。
「シュウセイ弛緩症候群、通称シュウセイ病に罹患すると、シュウセイ弁が
正常に機能しなくなります。その結果、普段はシュウセイ弁が留めている
外人排撃汁や皇軍復活汁などの体液が縦横無尽に体内を駆けめぐり、
最悪の場合は死に至ることもある、恐ろしい病気なのです」
子供たちには、セキジュージ先生の眼鏡がやっぱり
ぎらぎら光っているように見えました。
 セキジュージ先生は書棚から分厚い辞典のようなものを取り出しました。
「そうかそうか、なるほど。治療のためにはご両親の協力も必要ですね」
「ねえ、ニホンちゃんはシュウセイ病に罹ったのよね。もしかして、
ウヨくんからうつったんじゃないの。言ってることが似てるし」
アサヒちゃんが頬をほのかに赤く染めてそんなことを言いました。
「言ってることが似てる……そうか、そういうことだったんですね」
セキジュージ先生は突然、椅子から立ち上がりました。
「ジギャク病の感染源は、アサヒさんだったんですよ」
事情を知らないアサヒちゃんはひとりきょとんとしています。
「兄さんを変な病気にしたのは許せないニダ。覚悟するハセヨ」
「あたくしの最良のライバルを奪った罪は重いですわよ」
「兄上の仇はわたしが討たねばな」
異常な空気を察知したアサヒちゃんは脱兎のごとく逃げ出しました。
アイゴーという断末魔の声を聞いてカンコくんがつぶやきました。
「それはウリの台詞ニダ……」

※韓国の親北反日は言うまでもありませんが、
英国の歴史教科書も一時期かなり「自虐的」だったそうです。
「歴史修正主義」は本来なら不適当ですが、他に妥当な用語がないので
(「自由主義史観」は自称なので除外)やむをえず使用しました。

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