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第2222話 Serenoboy 投稿日: 2005/04/20(水) 17:33:51 ID:MkFuGZCV
「花を踏んでは」

「きれい・・・ほんとうにきれい・・・」
それは、ため息が出るような美しさだった。
峰々の藍き、夏。山河燃ゆる、秋。凛として、冬・・・。
木々のぬくもり、せせらぎの響き。四季折々の色が、この家を包みこむ。
萌えいづる 春、さくら 咲く 春・・・。
ほほをなでる風はやわらかく、あまい、やさしい香りがする。

ここはニホン家の「六条の庭」
社殿を背景に広がる池に、清冽な水が、
段落ちの滝と遣水から陽光をきらめかせて注いでいる。
かつてニホン家では、この庭で管絃の遊び、花見の宴、和歌の会と四季折々に風流を楽しんでいた。
今日はこの庭で、ニホンちゃん主催の「桜の宴」が開かれることになったのだ。
「皆様、本日は桜の宴にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
桜を愛でる優雅なひとときを、ごゆるりとお過ごしください。」
白い袿と山吹の襲ねを身にまとった、うるわしい少女が挨拶をする。
「姉さん・・・・・きれいだ・・・。」
ウヨ君が、思わず口にする言葉。ここに居る誰もが、そのあまりのニホンちゃんの美しさに息を呑んだ。
「ニホンちゃん・・・。うーんもう可愛い!!最高!!」
桜とニホンちゃんに見とれていたタイワンちゃんが、ニホンちゃんに抱きついた。
「ちょ、ちょっとタイワンちゃん、やめてよ〜。」
「いや〜、今日はあんまり可愛いからさ。それにみんなにニホンちゃんは私のものだって知らしめとくんだ!えい、えい」
「え、ちょっと違うでしょ、もう、タイワンちゃん、くすぐったいよ」
「えい、こちょこちょこちょ」
ふたりのじゃれあうようなやり取りに、皆思わず笑い出す。
「こらこら、タイワン。あんまりニホンにくっつくなよ。せっかくの小袖が乱れるだろう?」
「まったくだな。そろそろ離れろ、タイワン。」
ゲルマッハがくすくす笑いながら言う。アーリアちゃん、笑いが引きつっている。
「へー、二人ともできてたのか。知らなかったな、タイワン。キミにニホンちゃんを取られちまったのかい?」
「そーよ。残念でした!」
「ちょっと、マカロニーノ君!タイワンちゃん!もう〜。」
口とは裏腹に、ニホンちゃんもくすくす笑っている。
「さー飲むぞ!食べるぞ〜!!」
「あなたねえ〜、本当にデリカシーのない方ですわね。」
「全くですわ。今日のメインは桜で、お酒と食べ物じゃございませんことよ。」
エリザベスちゃんとフランソワーズちゃんが、ロシアノビッチ君にあきれたように言う。
「かてーこというなって、姉さん!花より団子っていうじゃねえか!それに宴ってのは飲んで、食べて、歌って楽しむところだぜ!」
「コ、コルシカ!全くこの子は・・・・。」
「本当ですわね、お姉さま。こんな野蛮人がお姉さまの妹なんて・・・。私が代わりたいですわ。全くうちの愚兄ときたら・・・。」
「ぐ、愚兄・・・・(ガーン)」
相変わらずのケベックちゃん。カナディアン君、ショックのあまり言葉を失ってしまった。
「ケ、ケベックちゃん。そんなこといったらお兄さんがかわいそうだよ・・・・。」
ラスカちゃんはちょっと気が弱いけれども優しい。カナディアン君とラスカちゃん、案外似た者どうしかもしれない。
「いや、最近こいつ生意気だしな。あ〜あ、俺はお前を心の友だと信じてたのにな〜。裏切るなんてな〜。」
「あ、アメリー君、裏切るだなんて〜。」
「あ〜あ、誰かさんが、俺のロケット花火計画に参加しないなんてな〜!傷つくよな〜。」
「アメリー君〜!」
ガキ大将のアメリー君、「心の友」のカナディアン君に、ちくりといやみを言う。カナディアン君は、もはやおろおろするばかりだった。
「アミーゴ!まあ、一杯飲みましょうや!ね!俺たちチーム『那普多』の仲間じゃないっすか!」
メヒコ君が二人をとりなす。二人にグラスをわたし、やや鈍く光る、とろりとした色合いが特徴的な酒を注ぐ。
「おう!気が利くじゃねーか!心の友よ!オラ、カナディアン!いつまでもしょぼくれてないで飲むぞ〜!」
「ちょ、ちょっとアメリー君、飲むって〜!」
「なにいってやがる。貴様この間ロシアノビッチと飲んでただろ!俺の酒が飲めねえってのか!」
「あ、あれは・・・、わかったよ、アメリー君。飲むよ!飲みます!」
「よし!ほら、一気だ!一気!」
「くあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
おお、いい飲みっぷりだぜ!お、おい、カナディアン?」
「おい、アメリー、そこの瓶よこせ!ラッパのみ!いぇい!」
「ラッパのみってお前・・・これテキーラだぞ?」
「さ、さ、アミーゴ!どうぞどうぞ!グーっと行きましょう!」
大トラ、カナディアン君、再び。
「おお、カナディアン、俺のウォッカも飲むか?」
「もちろんだ!ロシアノビッチ!瓶ごとよこせ!商売繁盛!さけもってこーい!!」
わけのわからないことを口走りながら、大魔神へと変身していくカナディアン君。大丈夫?
「あいかわらず美しいな、ここの桜は・・・。桃源郷のようだな。」
タバコをすいながら、一人たたずんでいたクールな策士が思わず口にする言葉・・・。
その様子を伺っていたタイワンちゃんがビールの入ったグラスを持って彼に声をかける。
「・・・・チューゴ。あんたがここに来るなんてね。正直こないかと思った。」
グラスをチューゴ君に渡しながら、思わずたずねる。
「タイワン、俺は面子を大切にする。だがな、実利も大切にするんだ。カンコとちがってな。」
「へえ。やっぱりあんたでもニホンちゃんは無視できないってわけね。」
「・・・当たり前だ。うちの無知でバカな従業員と一緒にするな。全く、あいつらどうしょうもないからな。」
チューゴが、グラスに入ったビールを飲みながら答える。
「あんたがそういう社員教育してるんでしょ?自分ところの会社をまとめるために。
でもあんたもやるね、普段はアルアル言って、バカみたいな振りしているくせにさ。」
「・・・まあな。バカなやつは、俺の演技に引っかかる。」
「やっぱりね・・・うすうす感づいていたけどさ、ホワイトデーのときから」
「お前はバカじゃないようだな。ならどうしておれがニホンだけは敵に回したくないかわかるだろう?」
「まあね・・・。」
チューゴ君は、ニホンちゃんの怖さを知っていた。普段は気弱で華奢に見える美少女が、
いざとなればアメリー君やロシアノビッチ君でさえ圧倒されるような、力強さを持っていることを・・・。
「ニッテイの時代、アメリーはあいつんちをぼこぼこにした。昔ニッテイが支配していた家や土地も失った。
俺んちは勝ったと思っていた。ついにヒノモト家に勝った!正直あいつはもう立ち直れないかと思ったよ。
だがあいつの家はよみがえった。アメリーの家に守られながらとはいえ、この町では相当な力を持っている。」
「チューゴ・・・。」
「ニッテイはな、あのロシアノビッチの家に喧嘩を売って勝ったんだぞ。しかもアメリーの家にも喧嘩を売りやがった。
俺たちがあの白豚どもに犬っころ扱いされていたあの時代にだぞ。そんなやつの孫娘だ、あいつは。恐ろしくないわけあるか。」
チューゴ君は桜を愛でながら答えた。そんな彼の横顔を眺めながら、タイワンちゃんはつぶやく。
「なかなか冷静だね、あんた・・・。見直したよ、ある意味ね。」
「タイワン・・・・。俺と結婚してくれ」
タイワンちゃん、思わず顔を真っ赤になる。
「あ、あんた!なにを寝ぼけたこと言ってるの!」
「なにいってやがる、お前の親戚がこの前二人もうちに来て、お前と俺は許婚の間柄だから、これからもよろしくって挨拶に来たぞ。」
「許婚?おじさんたちまだそんなこと言ってるの?全く・・・。」
「もともとお前んとこのトウキじいさんが言い出したことだぞ?言っておくが。それをあのじいさん、後になって手のひらを返しやがった。
あのじいさん、最初から俺にお前を嫁にやる気なんかなかったのさ。自分ところの家を守るために俺を欺いた。
今じゃ、婿であるお前の親父さんを応援して、お前が俺と結婚することに反対していやがる。たいした策士だよ、あのじいさんは。」
「おじいちゃんが・・・。」
「おまえんところの親戚たちが家を支配していた頃は、あいつらが正統チューゴ家を名乗っていたからな・・・。
ま、おまえの親戚たちは、俺の家との付き合いを大切にしているみたいだし、今は多めに見てやるよ。
俺が優しい顔をしている間に嫁に来るんだな。タイワン。あとで後悔するなよ。」
口元をにやつかせながらも、鋭い目でタイワンちゃんをにらみつける。タイワンちゃんも、その老獪な策士のにらみには怖気ずく。
「・・・・・あんたの嫁になるくらいなら、死んでやるから・・・・。」
タイワンちゃん、目に涙を浮かべながら答える。
「・・・俺はお前に手荒なことはしたくない。できれば妹の香がうちに来たときみたいに、穏便に済ませたいんだ。
そうすればアメリーやユーロ町のやつらも口出ししてこないだろうからな。まあ、ゆっくり考えるんだな。自分の未来を・・・。」
その時、一陣の風が吹き渡り、桜の梢を揺らした。吹き散らされた花びらが、まるで雪のように、
二人を包み込み、そしてお互いの姿が見えなくなった。
タイワンちゃんは、涙をその勝気な美しい瞳から流しながらその場を離れた。
「本当に美しい・・・・。神のみ業でしょうか・・・。はかなく、美しい・・・・。」
ニホンちゃんが、いつもより少し元気のないヨハネ君に声をかける。
「ヨハネ君、よく来てくれたね。何が飲みたい?」
「・・・ありがとうございます。じゃあ、オレンジジュースをいただけますか?」
「なんだよ!なに暗れー顔してるんだよおめーはよ!まるで通夜じゃないか!」
「コ、コルシカさん!」
女の子と見まごうばかりの美貌の少年が、思わず止めに入る。マルタ君だ。
「あ、やべ・・・・。」
コルシカちゃんも気づいたようだ、つい先日、ヨハネ君のおじいさんが亡くなられたことを・・・。
「いいんですよ、コルシカさん。祖父は、天に召されたのです。
いまもこうして、私を天国から見守ってくださっています。主の御許で・・・。」
ウヨ君が、ヨハネ君にグラスを手渡す。ヨハネ君、
手元が少しふらついてグラスを落としそうになるがなんとか受け取る。
「ヨハネ・・・。今日は本当にありがとうな!うちにきてくれて!来ないんじゃないかって心配したぞ?ほら、グラス」
「ありがとう、ウヨ君。いつも優しくしてくれて・・・。まるで天使のようですよね、ウヨ君は。」
「ばーか。今日だけだよ。お前みたいなややこしいやつ、誰が普段から優しくするか。」
天邪鬼だけれども、自然でさりげなく優しいウヨ君。
そんな友達思いで心優しい弟を、ニホンちゃんはうれしそうに眺めていた。
「本当にありがとうね、ヨハネ君。うちはもう大丈夫なの?」
「はい、葬儀も無事終わりました。初めて、アメリー家の当主の方も葬儀に参列してくださったのですよ。タイワンさんのお父さんも参列してくださいました。」
「へえ〜。」
「ヨハネ君のおじいさまは、本当に立派な方でした。」
マルタ君の家には、かつて法王家を異教徒から守るための騎士が居た。
その騎士の末裔は、今はマカロニーノ君の家に居る。
そういう歴史があるため、、マルタ君も法王家の教会の熱心な信者なのだ。
「法王家の当主に選出されてから、町中の家々を訪問し、紫苑さんのお宅や、
アラー組の家の方々とも積極的に話をしていました。このお宅にも伺っています。
この家の家宝の『ミカド』にも、自分から出向いて参拝しておられます。」
「まさか・・・、信じられませんわ・・・。」
「いえ、事実です、祖父も以前私に話していました。」
ヨハネ君が答える。エリザベスちゃんとフランソワーズちゃんはその言葉にとても驚いているようだ。
「え?どうして?」
ウヨ君もニホンちゃんも、二人ががどうしてそんなに驚いているのか分かりかねた様子だ。
「あなたたち、ヨハネ君のおじいさまがどれだけ偉い人なのか
分かっておられないようですわね。うちの家宝『ウィンザー』ですら、それほどの
扱いを受けてはいませんことよ。普通はヨハネ君のおじいさまをリビングにお通しして、
そして家宝を収めてある場所から動かして持って行くのです。
自分から出向いて参拝されるなんて・・・。法王家の当主に匹敵する権威は、
やはり『ミカド』しかないようですわね。」
ウヨ君もニホンちゃんも唖然とする。『ミカド』がそんなに敬意を払われているなんて・・・。
そしてヨハネ君のおじいさんて、そんなに偉い人だったのかと。
「知らなかった・・・。ヨハネ君のおじいさんて、そんなに偉い人だったんだ・・・。」
「お、お前、しっかりしろ」
「うるへ〜!アメ公!いいかあ、ニホン・・・。ひっく、おまえなあ、ひっく、法王家の当主を何だと思ってるんだ?
いいかあ?この町の人口の6分の1が法王家の教会に通っているんだぞ。
しんじられうか?ひっく6分の1だぞう?どーだすげーだろー、ひっく、
かつてはな〜、おめえ、ユーロ町の西地区のほとんどの家がよ、ひっく
法王家の強い影響下にあったんだよなこれがよ、ひっく。
それぐらいの敬意を表されても当然だろ、ひっく。」
「まったく・・・、でもこいつの言うとおりだぜ。ニホン。うちだってヨハネのおじいさんが来るとき、
エリザベスんところの『ウィンザー』、そしてお前のうちの『ミカド』が家まで運ばれるときだけは、
わざわざ家の当主が玄関までホワイトタイを身にまとって出迎えるんだ。
うちの当主がそこまでするんだぞ?まさにこの町最高の権威さ。」
ニホンちゃんとウヨ君は、もはや唖然としてしまった。
「本当に、これだからニホンさんは困りますわ。」
「あんなキムチで脳みそができているような無教養な男の電波を浴びているから、
この町のルールや常識、慣習が分からなくなるのです。」
エリザベスちゃんとフランソワーズちゃんがあきれたように言う。
それにしてもカンコ君、えらい言われようだ。
「そういえば、あの『人間毒電波発生装置』はどうしたんだ姉さん?」
ウヨ君・・・、そこまでいわなくても・・・。そういえばわれらがカンコ君はどこにいったのだろう?
「すいません、ニホンさん、遅くなってしまいました・・・。」
可愛らしいチマチョゴリを着た少女が申し訳なさそうに頭を下げる。
いつもは原色に近い色を身にまとっている彼女だが、今日はパステル調の色合いだ。
その色彩のやわらかさが、春の宴にふさわしい。いつもよりも数段可愛らしく見える。
その場に居る皆が、思わず彼女を見つめる。ウヨ君も思わず見ほれてしまった。
「あ、チョゴリちゃん、いらっしゃい。今飲み物持って来るね。何がいい?」
「あ、お水もらえますニカ?ちょっと走ってきたもので・・・。」
チョゴリちゃんが、息を切らしながら答える。
「チョゴリ、ほら、水アル」
意外な人物がチョゴリちゃんに水を手渡す。チューゴ君だ。
「え、どうして・・・・。」
「タイワンに持っていってやろうと思ったが、見つからないのでお前にやるアル。」
「いいんですか?」
「いいアル。そういえば、俺のかつての属国の分際で、『北東アジアのバランサー』とか
半万年の歴史を誇るニダ!寝ぼけたことをほざいている、
現実と妄想が一致しないと火病を起こす、
地球上から抹殺したい、うざいことこのうえない、
実の妹まで食い物にする最低卑劣な変態痴漢男はどこアル?」
さすがはチューゴ君。悪口に関しては4000年の歴史を誇るだけのことはある。
カンコ君。かわいそうにね。
「あ、ありがとうございます、兄はちょっと・・・・。」
あれ、チョゴリちゃん、なんだか気まずそうですが・・・?
「ま、アレはいないほうがいいな。アレは。たまにはあいつが登場しないのもいい。
ていうか永遠に登場してほしくない。あいつがチューゴに支配されようが、
キッチョムに支配されようが、しらん。勝手にすればいい。」
アメリー君、最近のカンコ君の行動に相当怒っているようです。
「にしてもいや〜チョゴリ、うまく化けたな〜」
「え?」
「お前がすごく可愛く見える。信じられない。」
「ウヨ君、ほめてるのか、けなしてるのか、はっきりしてほしいニダ!」
なんていいながらもチョゴリちゃんうれしそうだ。
走ってきたのに、心臓がよけいにどきどきしてしまう。
そんな様子を見つめるラスカちゃん。
「わたしももっとおしゃれしてこればよかったな・・・。」
アメリー君は、その言葉を聞き逃さなかった。
(ラスカ・・・、お前はじゅ〜ぶん可愛いぞ。ウヨがお前をほめなかったら、俺が
ぶっとばしてやる!!)
某国民的アニメのガキ大将のごとく、妹思いなアメリー君。
可愛い妹に好きな男の子がいることにも軽くショックをうけています。
「何いってるニカ?ラスカも可愛いニダ!まるでお人形さんのようニダ!」
チョゴリちゃん、なんだかんだいってもラスカちゃんは大切な友達のようだね。
ラスカちゃんは白のコットンカーディガンに、桜色のブラウスとワンピースを着ている。
チョゴリちゃんよりも幼くは見えるものの、いつものぬいぐるみ並みの可愛さに
輪をかけた可愛さだ。
「・・・そうだな、本当に今日は人形みたいに可愛いな。ラスカ・・・。」
ウヨ君、恥ずかしそうにうつむきながら答える。
(よし!よくいった!ウヨ!でもなんかむかつくな・・・。)
「相変わらずね〜ウヨ君?両手に花ってところかな?」
さて!ウヨ君をからかうことを生きがいにしている「あの子」の登場だ。
どうやら復活したらしい。
「・・・・タイワンさん・・・・。」
ウヨ君、元気はつらつで健康的な美少女に声をかけられているのに、
なぜか(?)悪魔にでも遭遇したかのような顔をしている。
「よ〜タイワン!!元気ハツラツゥ?うひゃうひゃうひゃ」
あーあ、もう誰に求められないよ、この子。
「カ、カナディアン・・・・飲みすぎだよ・・・。」
「探したアル。どこに行っていたアルか?」
一瞬チューゴをにらみつけるタイワンちゃん、でもすぐにウヨ君に視線を向けて
いつものからかう口調でこういった。
「や〜でもさ〜。ウヨ君、ほんとにもて君だよね〜。この前アーリアとデートしたんでしょ?
ここはひとつラスカちゃんとチョゴリちゃんともデートしたらどう?」
「タ、タイワンさん!なにをいっているんですか!!」
「けけけ」
それぞれ話をしていた全員が、いっせいにウヨ君のほうに振り返る。
  ラスカ「う、ウヨ君・・・、やっぱりそうだったの?」
 チョゴリ「ウヨ君・・・、デートって・・・。」
 ロシアノ「ウヨ〜お前もあんな鋼鉄女落とすなんて、やるもんだな〜ひっく」
カナディア「そ、そうだったんですか?」
  メヒコ「アミーゴ!燃える様な恋をしようぜ!」
エリザベス「信じられませんわ・・・」
フランソワ「あら、エリー。ああいうタイプって、最後の最後は意外ともろいものなんですのよ。」
ゲルマッハ「まさかアーリアがウヨ君と・・・。あいつも、一見さめているようだが、実は相当熱血だからな。」
 アメリー「お前、ラスカとチョゴリだけじゃなくて、アーリアにも手を出してるのか?最低だな。」
 コルシカ「ああ、まさかウヨがここまで女たらしだったとは知らなかったぜ。マカロニーノじゃあるまいし。」
 マカロニ「お褒めの言葉、ありがとう。コルシカちゃん。しかしウヨ君もなかなかだね〜。
      まあ今は僕もマルタ君に首っ丈だけどさ!」
  マルタ「な、なにいってるんですか!マカロニーノさん!でもウヨ君って大人なんだね〜。」
  ヨハネ「そうです!主は生めよ、増やせよとおっしゃっています!
      あなたの行いは、自然の摂理に反する行為です!
      同性愛など許せません!あなたもウヨ君とアーリアさんを見習って・・・」
 チューゴ「くだらんアル。これだから法王家は・・・。何が主アルか?何が神アルか?
      俺はそんなものは信じないアル。にしてもウヨ、やはり
      おまえはニッテイのように、ゲルマン家の人間と結びつくようアルネ?また俺の家に攻め込む気アルか?」
「ちょ、ちょっとみんな・・・。タイワンちゃん〜!どうしてそんなこというの〜?」
「え〜だって事実じゃん?アーリアがウヨ君と肩組んで歩いていたってのは?」
「違いますって、あれは足を痛めたからだっていったでしょう?
あ、アーリアさんもなんとか言ってください!アーリアさん?」
さっきまでゲルマッハ君と一緒にさくらんぼのワインを飲んでいたアーリアちゃんが
いつの間にか居なくなってしまっている。
「アーリアさんなら、池の向こう側で桜を見にいったぜ。
向こう側にはこの前アメリー君ちの桜から生まれた新品種
『ファーストレディー』が植えてあるとかいってな。」
コルシカちゃんがけらけら笑いながらこたえる。
ラスカちゃんもチョゴリちゃんも、その可憐な瞳をうるうるさせながら
「「ニホンおねえちゃん。ちょっと池の向こうでその桜、見てくるね・・・。」」
と、去っていってしまった。
「けけけけけけ」
タイワンちゃんが面白そうに笑う。
・・・悪魔だ、この人は本当に悪魔だ。ウヨ君は本心からそう思った。
「ウヨ、ちょっと話を聞かせてもらおうか?うちのラスカを泣かせておいて、ただで済むと思うなよ・・・。」
ラスカちゃんを、某ガキ大将のごとく可愛がっているアメリー君、目がイっちゃっている。
「ご、誤解です〜〜〜〜〜〜〜。」
ウヨ君は、一目散に逃げ出した。
「あ、逃げたアル」
「みんな、ウヨをとっ捕まえて、あることざらい全部はかせようぜ!」
「おう〜!」
アメリー君だけじゃなくて、チューゴ君やコルシカちゃん、
ほかのみんなも追っかけ始めた。
唖然とするニホンちゃん、そしてその光景を見ながら、けらけら笑うタイワンちゃん。
ニホンちゃんが、タイワンちゃんをにらみつける。
「タイワンちゃん!どうしてこんなひどいことするの?
いくらなんでもこんな嫌がらせするなんて、ひどすぎる。
ラスカちゃんやチョゴリちゃんがどれだけ傷ついたか・・・・。
武士だって、そんないい加減な子じゃない!!」
ニホンちゃん、思わずまくし立てる。
その瞬間、タイワンちゃんの表情が、一気に失われた。
ニホンちゃんは、今まで見たこともないタイワンちゃんのその無機質な表情に
思わず息を呑んだ。
「ごめん・・・、今日私、ホントどうかしてる・・・バカだよね、わたし・・・。」
「え・・・・?」
「・・・なんか怖くってさ、自分の未来が・・・。最近不安で夜も眠れないときもあるんだ・・・。
こんなくだらないことしちゃうなんて、最低だよね、意地悪だよね、あたし・・・。」
「・・・・・タイワンちゃん、泣いてるの・・・・?」
「怖いんだ、なにも見えない未来が。立ち向かっていく勇気がないんだ・・・・。」
いつもは、精一杯チューゴ君にに意地を張っているタイワンちゃん。
でも本当は、とても思い悩んでいることを、ニホンちゃんは知っていた。
タイワンちゃんだけじゃない。誰もが皆、自分たちの
「生き方」を必死でもがき苦しみながら模索している。
ニホンちゃんはそう思いながら、タイワンちゃんを抱きしめた。
「泣いてもいいよ、タイワンちゃん。今は誰も見ていないから・・・」
「う、うわあああああん〜〜〜〜〜〜〜」
さてそのころ、われらがカンコ君はというと・・・・。
「チョゴリ〜!!ここをあけるニダ!今日こそニホンの家に行って、
対馬ぱんつを奪ってやるニダ!それに花見はウリナラが起源なのに、
ニホンは生意気ニダ!宴なんかめちゃくちゃにしてやるニダ!
お前は親日派ニダ!パンチョッパリニダ!親米派ニダ!
ペクチョンニダ!謝罪と賠償を(略)」
チョゴリちゃん、最近のあまりの強烈な毒電波ぶりを知っているから、
カンコ君を物置に閉じ込めちゃったんだね。
この子も、「人生とはなんぞや」と考えることはあるのだろうか?
「人生?決まっているニダ!人生は金と権力ニダ〜〜〜!」

おしまい

解説 Serenoboy 投稿日: 2005/04/20(水) 18:15:48 ID:MkFuGZCV
「花を踏んでは 同じく惜しむ 少年の春、か・・・」
桜の木の下で、一人たたずむ少年。
「俺の『魂』は、どうしても変えられないんだよな・・・」
彼もまた、自分の「生き方」に悩み苦しんでいた。
「中華思想」という『魂』に縛られながら。

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