戻る <<戻る | 進む>>
第2300話 Mitstein 投稿日: 2005/07/12(火) 17:44:22 ID:+CLr5ZH3
久々に投稿させていただきますね。
  Österreich, Sie schönes Land in Zerstörerhand?
 いつもハプスブルク先生の周りには生徒が沢山集まってきます。しか
し、一昔前に生徒達が全く寄ってこなくなったことがあるのです。それ
はいつものように先生が自分の家に生徒達を呼んで、上がらせたところ
から始まりました。
「先生、お邪魔致します。」
「お邪魔します。」
 ヨハネ君とウヨ君を先頭に生徒達が先生の家に遊びに来ました。
「いらっしゃい。いつものように楽しんでってね。それじゃあ、何か出す
から、この部屋でちょっと待っててください。」
 みんなを部屋へ案内すると、微笑みながらキッチンの方へと廊下を歩い
ていきました。
「先生のお屋敷は、いつ見ても立派です〜。」
「ああ、壮大な感じがするよな。」
「ラスカもこういうお家にあこがれるー。」
 ウヨ君、ヨハネ君、ラスカちゃんをはじめとして生徒達が先生の家の事で
話しが盛り上がっていたその時、
「よそ者は、出て行け!お前らが来るとこの家が腐っちまうんだよ!この家
の全員がお前らを嫌ってるんだ。早くうせろ!」
 見たことも会ったこともない如何にもヒステリックで狂気じみたやせた中
年の男が、今にも飛び掛ってきそうな勢いで入り口から怒鳴っていたのです。
みんなは慌てて先生の家から逃げ出していきました。
「みんなー、ってあれ!?どこ行っちゃったの!?」
 部屋はもぬけの空。あの男の姿もありません。先生は心配して、来た生徒
全員の家に電話を掛けたのですが、先生が話そうとした瞬間みんな切ってし
まうのです。その晩、先生は何故?と理由をひたすら考えましたが分かりま
せんでした。
 次の日、学校でも廊下を歩くたびに生徒は彼女を避け、職員室でも冷たい
視線が注がれました。一番辛かったのは授業中誰にも反応してもらえなかっ
た事でした。先輩のフラメンコ先生にも避けられ、もう誰にも学校内の人に
相談できる人はいない事に絶望し、放課後屋上のベンチでさめざめと泣いて
いると、
「先生どうしたんだ?」
「アーリアちゃん、グスッ、私どうしたらいいの?突然学校中のみんなが私
を避けるようになって、グスッ、どうしてなの?」
「・・・という事は、先生には心当たりがないと?」
「ええ、そうよ、グスッ、全く。何が何だかさっぱり。」
「ウヨから昨日聞いたんだが、先生の家で、ある男が俺や先生はお前らが嫌
いなんだ。早く出てけと怒鳴って、みんな先生に呼ばれたのに裏切られたと
思ったみたいなんだ。その話しが学校中に・・・。」
 先生の手がワナワナ震えだし、怒りのオーラが漂い始めました。
「なるほど、そうだったのね。ハイダーあいつ〜。アーリアちゃん、教えて
くれてありがとう。後、一つお願い事があるんだけど、ウヨ君に明日の放課
後私の家に来るように伝えてくれる?私から伝えても、まだ聞いてくれない
と思うの。」
「は、はい・・・。」
 先生にビビッているアーリアちゃんの返事を聞くとすぐに先生はいつもの
マイペースぶりからは信じられないスピードで階段を下っていきました。
翌日の放課後、強張った表情のウヨ君が先生の家にやってきて、
「先生!」
「待っていたわ。上がって。」
 あの部屋に案内すると、
「ちょっと耳貸して。ヒソヒソ・・・いい?」
「分かりました。信じましょう、先生の事を!」
「じゃあ、お菓子持ってくるわね。」
 そういって一昨日と同じようにキッチンに向かうふりをして廊下のマイセ
ンの大きな壷の陰に身を潜めました。1分もすると、
「また、あのアマよそ者つれてきやがったな・・・。」
と独り言を言いながらハイダー氏が階段から降りてきて、ウヨ君のいる部屋
のドアを開け放って、
「また来たのか、二度と来るなと言ったはずだ!!あの女も・・・。」
「私はそんな事一言も言った覚えは全くないわよ。」
 
いつものエメラルドグリーンの瞳がキラキラ輝いている先生はハイダー氏
の後ろにはいませんでした。全身に怒りの炎まとった先生でした。バシッと
ハイダー氏にビンタを一発喰らわせ、
「『よそ者』ですって?何それ?私達同じ人間でしょ?あなただけが勝手に
人の優劣作れるの?しかも、純粋な子供たちに何てことしてくれたの!
そんな事をしたからにはこの家から出てってもらうわ!出てって!!顔も
見たくない!!」
 ハイダー氏を追い出した後、先生はウヨ君に向き直って、屈んで強く抱き
しめ、
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。あなたやみんなを傷つけてしまっ
たわ。でも、信じて!ウヨ君やみんなの事が大好きって事を。」
「分かりました、でも、せ、先生、い、息ができ、ない・・・。」
「ごめんなさい・・・、本当に・・・。」
「分かりましたから、く、苦しい・・。」
 次の日、先生の周りにはいつも通り沢山生徒が集まってくるようにな
りました。良かったですね、先生。
・・・・ここは、とある場所、暗い部屋。あのハイダー氏と何人かの
黒い影が集まっています。
「くくく、我々は、この狂った世界をリセットする!その時まで待つの
だ!」
                       Das Ende?

解説 Mitstein 投稿日: 2005/07/12(火) 18:00:45 ID:+CLr5ZH3
長々とごめんなさい。ネタは1999年10月始めの総選挙に、外国人排斥
主義を主張し、第2党として入閣したオーストリア自由党の話題。しか
し、観光産業でなりたっているオーストリアには到底無理なことでしょ
う。EU14カ国、米、イスラエルの制裁で、孤立したもののJ=ハイダー
が党首を辞任した事で、2000年9月に制裁が解除されました。
 先生の発言は反自由党デモ隊のプラカードを参考にしたのですが、これ
じゃ綺麗事ですか。しかし実際そうは言っても・・・。
ttp://www.kojinkaratani.com/criticalspace/old/special/ohji/wd_000303.html
ttp://manbow.ciao.jp/correspondence/austria5.html
ttp://manbow.ciao.jp/correspondence/austria7.html
日本語のサイトではこれらが分かり易いと思います。
それと「ニホンちゃん」4周年を迎えていたのですか・・・、知らなかった。

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: