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第2392話
ab-pro
投稿日: 2005/11/20(日) 17:25:02 ID:F/nLIrjH
コツン
何かが窓に当たる音がして、マカオ君は緊張しながら、二階にある自分の
部屋の窓のカーテンの隙間から、おそるおそる外を覗きます。
「おーい、マカオ。ウリニダ」
押し殺した声が、窓越しに微かに聞こえてきました。マカオ君の視線の先、
庭の茂には、今やマカオ君が一番会いたくない存在、キッチョム君の姿があ
りました。
辺りに気を配りながら茂みに身を隠して、以前の手順道理にマカオ君を呼
び出そうとするキッチョム君。
しかし、以前ならすぐに頷いて庭に出てくるはずのマカオ君は、一瞬だけ
複雑な表情を見せた後、そのままカーテンを堅く閉め、いくら待っても出て
くる気配はありません。
しばらく待って、また小石を窓に投げるキッチョム君ですが、今度はもう
マカオ君は外を窺おうともしません。
「・・マカオは意気地なしニダ!
しかし、これは困ったニダ・・・・」
地団駄を踏みたくなるのを何とか堪えて、キッチョム君は静かにその場か
ら離れていきます。
キッチョム君は今、ピンチなのでした。
「キッチョム君は引き籠もりをやめて、家の人への暴力を止めましょう」
ユーロ班の面々が中心になって、学級会でこんな呼びかけをキッチョム君
にしようと議論になり、多数決の末に賛成多数で可決されて、大仰な学級会
のお知らせのプリントがキッチョム君の家に届けられたのはつい先日のこと
です。
そして、以前にニホンちゃんやカンコからくすねていた鉛筆などの他に、
タイラン君やマカオ君など、10人ぐらいから文房具などをくすねていたこ
とがばれそうになっているキッチョム君。
もう、アメリー君の追求から何かと庇ってくれるチュウゴ君も、内心冷や
やかな視線を向けてきつつあり、まさに大変な状況なのですが、キッチョム
君が今、一番困っているのはそんなことではなかったのです。
「アメリーがマカオを虐めるのを止めるまで、もうウリは次の6人会議に
出る気はないニダ!」
チュウゴ君の家で行われていた、キッチョム君に引き籠もりを止めて貰お
うというお話し合いの合間。以前キッチョム君に盗まれた鉛筆を返してもら
おうと、二人っきりでのお話し合いに臨んだニホンちゃんに、キッチョム君
はそう宣言しました。
「・・でも、あれはキッチョム君がアメリー家謹製のダラー・カードを偽
造して、マカオと一緒に売りさばいていたのがばれたから、罰として謹慎し
ているだけじゃ・・・」
「そんなのアメリーの陰謀ニダ!
ウリがそんな悪事を働くなんて、誰も信じない妄言ニダ!」
真顔でそう答えるキッチョム君に、思わずその場に転けそうになるニホン
ちゃんですが、キッチョム君の台詞は更に続きます。
「だから、ニホンには助けて欲しいニダ。最近、アメリーとニホンは仲が
良いニダ。ニホンがマカオの謹慎を解いて欲しいと頼めば、きっと助けてく
れるニダ。
そしたら、ウリはニホンを感謝してやるニダ!!」
まったく自分勝手な言い分ですが、それをさも当然と言い切れるキッチョ
ム君は、ある意味凄い役者です。
さらに仲介してくれたら以前にウリの筆箱に紛れ込んだかもしれないニホ
ンの鉛筆を探してみてやるかもしれない、というキッチョム君の勢いに、思
わず身を乗り出したニホンちゃんですが、その時でした。
ぐるるるるる・・・・
唐突に鳴いた彼のお腹の虫の鳴き声に、一瞬言葉を失うキッチョム君。
可愛らしい女の子の前での不始末に、顔を真っ赤にしてしまうキッチョム
君ですが、そんな彼にお構いなしに、彼のお腹の虫は更にその存在感を示す
ように連続して鳴き続けます。
必死に笑いを噛み殺すニホンちゃんに、いたたまれなくなったキッチョム
君はしどろもどろに言葉を何とか紡ぎ出しました。
「う、ウリのお小遣いをマカオに預けているニダ!
それがマカオが謹慎して家から一歩も出てこなすから、お小遣いを返して
貰えないニダ。もう暫くおやつ無しニダ。
ニホン、何とか助けて欲しいニダ!」
最後は涙目になってニホンちゃんにお願いするキッチョム君ですが、何と
か爆笑の衝動を抑えたニホンちゃんはこう答えたのでした。
「ハハ・・・、ごごめんね。
そうだ。じゃあ私の鉛筆を返してくれたらアメリー君にお願いする件、考
えても良いわよ」
そう、今キッチョム君は困り切っているのです。
end
最近、仕事であちこち飛び回っているab-proです。
今回は以前書いた作品の続編です。
ソースは、
www.chunichi.co.jp/niccho/051119T1545.html
交渉中に困窮の具合を述べるなど、相当キッチョム君は困っているようですね。
追記 同じネタの作品が上がってる^^;
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