戻る <<戻る | 進む>>
第2531話 U-33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2006/06/24(土) 10:42:42 ID:9KWCdP0D
『イフタール』

 給食当番のニホンちゃん、給食室からおかずのバケツを受け取って運ぼうとしたら、いつもより
ずっと軽いことに気がつきました。
「あのう、量が少ないんですけど、これで1クラス分なんですか」
 ニホンちゃんが聞くと、給食のおばさんは、
「イスラム班の子たちの分がないからね」
 と答えました。
 ネシアちゃんやペルシャちゃん、トル子ちゃんたちイスラム班は、今日から断食月だったのです。

 お昼休み、みんなの食事中も手持ちぶさたにしているトル子ちゃんたちにニホンちゃんが尋ねました。
「昼間ずっと何も食べちゃいけないって大変ね」
「慣れてるから大丈夫。それにね、日が暮れたらいつもより豪華なお夕食なの。イフタールというのよ。
みんなでテーブルを囲んで、おいしいものをたくさんいただくのよ」
 ニホンちゃんは、それを聞いて少しの間考え事をしていました。そして、何かを思いついたようでした。
「それすごく楽しそうね。ねえ、今度うちでイフタールしない。みんなで」

 数日後、日暮れとともにニホンちゃんのおうちに、イスラム班の子たちが集まってきました。
 ペルシャちゃんは甘い甘いお菓子、トル子ちゃんはケバブと自慢の一品の持ち寄りパーティーです。
 テーブルの上にお料理が並べられ、すっかり準備が整いました。
 そこへ、ニホンちゃんが小さなお皿を一枚持ってきました。ニホンちゃんは、お料理を少しずつその
お皿に取り分けると、部屋を出て行きました。それからしばらくして、チーンという澄んだ金属音が
聞こえてきました。ほどなく戻ってきたニホンちゃんは、みんなに言いました。
「頂き物をお仏壇にお供えしてきたの」
 みんな一瞬目が点になりましたが、すぐにそんなことも忘れ、お食事会が始まりました。

 楽しいひと時はあっという間に過ぎて、夜も更け、お開きの時がやってきました。
 ニホンちゃんは、みんなに終わりの挨拶をしました。
「今日は楽しかったわ。また、みんなで集まりたいな」
 そして、最後にこう言ってみんなを凍りつかせたのでした。
「暮れには、クリスマスも一緒にしようね」

解説 U-33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2006/06/24(土) 10:44:18 ID:9KWCdP0D
(ソース)
ちょっと古いネタですが、小泉内閣メールマガジンから。
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2005/1027.html

なお、このメールマガジンの6月15日号に作家の村上龍さんが『脱「二項対立」ということ』という文を
寄稿しています。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2006/0615.html


この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: