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第2559話 黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2006/07/22(土) 15:14:04 ID:Nry9GXlp
   「 シマの見直し 」

 ここはアメリー家の一室。
 地球町の地図を前にして、
 アメリー君とエリザベスちゃんが何やらお話しています。
「家の力はお金だけじゃないわ。
 立地の良い所を押さえて初めて、力の独占が出来るのよ」
「我がアメリー家も不動産の見直しと荷物の移動で大変さ。
 特にリュー君の所の件がね」
「似たようなケーススタディーとしては、ウチがマルタの所を引き払った例かしら。
 当分あそこで喧嘩は起きそうにないから、もう何も置いてないけど」
 するとアメリー君は笑いました。
「何言ってるんだよ、俺のお蔭だろう、ベス。
 トル子ちゃんとマカロニーノが俺と組んでいれば、あそこは暇さ」
 エリザベスちゃん、格下扱いには我慢できません。
「まあ、あなたそんな調子だと日之本家とは話が纏まらないんじゃ無くて?」
 するとアメリー君は少しムキになりました。
「日之本家全体としてはウチと組んでて良かったはずだ。
 大体俺はリュー君を追い出したりしてないぞ。お前の方が酷いだろ」
 反論されても、エリザベスちゃんは冷たい笑みを浮かべています。
「あら、マルタはマカロニーノの家の食事に慣れちゃって今更帰ったりしないわよ。
 それに、あの家をまた使うことになるかもしれないし。私たちでね」
 それを聞くと、アメリー君も満更でもない顔で言いました。
「ま、立地の良い所だからな。マルタには悪いけど」
「あら、これは親切よ。喧嘩の起きるような所に帰るよりは今の方がいいわ。
 それにマカロニーノの家はバイブルクラスでもマルタと宗派が同じだし、
 私より話が合うでしょ」
「だったらマルタはマカロニーノのところで、ずっと暮らすってことか?」
「言わせないと気が済まないようね。
 あそこはビクトリア家がナッチ会と戦った聖地よ。たとえ他人の家でもね。
 追悼の儀式の度に侵略だの宗派だの揉めるなんて、御免だわ」
「それで通るんだからいいよな。ウチはリュー君のところが頭痛の種さ」
「でも、日之本家にお金ださせて荷物の整理をするんでしょ?」
「おい、身無し子の家と金持ちを一緒にするなよ。それなりの違いがあって当然だろ。
 勝者たるウチの方が一部引き払うんだからさ」
「シッ」
 不意にエリザベスちゃんが人差し指を口に当てました。
 コンコンとノックする音がします。
「お兄ちゃん、ベスお姉ちゃん、クッキー持ってきたよ」
 ラスカちゃんの声です。
「サンキュー、入っておいで」
 ラスカちゃんがクッキーを持って入ってきました。
「お邪魔してるわラスカちゃん。あたしも紅茶を持ってきたからラスカちゃんもどうぞ」
「ありがとうベスお姉ちゃん、ご馳走になりまーす」
 アメリー君とエリザベスちゃんは、無言で目を合わせて話題を切り替え、
 その後は取り留めの無いおしゃべりで午後の紅茶を楽しみました。

 その翌日、ラスカちゃんが校庭にいるとニホンちゃんと会いました。
「あら、ラスカちゃん。この間は大歓迎してくれてありがとう」
「ねえ、ニホンお姉ちゃん、ちょ、ちょっといい?」
「なあに?」
「ラスカ、お姉ちゃんと姉弟そろって仲良しだから言うんだけどね」
「どうしたの?まじめな顔して」
「じ、自分の家のことは自分でした方がいいと思うよ」

   おしまい

解説 解 説 投稿日: 2006/07/22(土) 15:17:37 ID:Nry9GXlp
重要なところにあるために激戦地となった沖縄とマルタ島
http://www.janjan.jp/world/0508/0508230335/1.php
大国によって守られる国もある一方で、基地として利用され、戦場にされ、
戦争が終われば縁を切られる国もあります。

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