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第7話
放置=ウィン ◆fWnYLnDs
投稿日: 02/05/14 13:05 ID:cjAchUix
地球町のはずれにあるアルカナイカ刑務所。
町内で凶悪犯の中の凶悪犯を収容する最凶最悪の場所。
けたたましいサイレンとサーチライトの明りが止まぬ夜。
その男は全身を拘束具で包んだまま台に乗せられ、廊下を連行されていた。
「―――気をつけろっ!」「接近しすぎるなっ」
「接近距離1mを堅持しろっ」
「銃器類の安全装置は解除しておけっ!」
「猛毒を持つ大型の猛獣と思えっ!」
そして、男はそのまま絞首刑用のテーブルに乗せられた。
身の丈2メートル。体重は150キロはあるであろう。
母から受け継いだ民族特有の顔の形に、父の黒人兵士から受け継いだ巨躯。
それは死を前にしてもまるで動揺していなかった。
「よしッ!これより死刑を執行する!」
「キム=ドリアソくん。最後に言い残すことはあるかね?」
神父の事務的な問いかけに、彼は地獄の底から響くような暗い声で答えた。
「・・・ニホンちゃんに・・・彼女に・・・お兄ちゃんと呼んで欲スィ・・・」
やれやれといった表情で神父と死刑執行官は顔を見合わせると、
赤いスイッチに手を置いた。
「・・・・・・死刑執行!!」
起きてはならぬことが そのとき起こった!!
「死刑執行はなりません!!」
ドアが開くと音と同時に、甲高い女性の声が部屋に響き渡った。
全員がいっせいに振り返る。
そこにいたのは生きた化石と呼ばれるタカコおばさんだった。
彼女はスタスタと執行官たちの前に近づくと、強い口調で詰問し始めた。
「何を考えているんですか!!彼を死刑にして問題が解決するのですか?」
「え・・・いや・・・私どもは与えられた任務を・・・」
「社会全体で考えなければならない問題を、このようにしてごまかすつもりですか」
「し・・・しかし、彼は100人以上の日本人女性を・・・」
「ダメなものはダメです!!!」
彼女はそう言うと、勝手に彼の拘束具を取り去ってしまった。
「ありがとうと言いなさい」と顔に書いて彼を見つめるタカコおばさんに、
彼は優しく微笑むと、彼女の予測しない言葉を呟いた。
「いつも・・・そうだ・・・」
深い、深いため息。
「きみたちはいつも・・・・
つまらぬ人権意識をもたらしてくれる!!!」
ニヤリと口元が歪むと、次の瞬間にタカコおばさんの首はぽっきりと折られていた。
慌てて警備員たちは銃を構えるが遅かった。
2メートルの殺戮マシーンは瞬く間に、その作業を完了してしまった。。
異変に気付いた刑務所の職員が駆けつけたとき、そこに生きてるものは誰もいなかった。
あとに残されたのは壁の血文字のみ
『ヒノモト家に向かう。ニホンちゃんのお兄ちゃんになるために』
「す・・・すごい・・・」
「ニホンちゃん。問題なのはここからなのだ」
シンタローおじさんは顔面を蒼白にした彼女に、追い討ちをかけるように話を続けた。
エリザベス家名物のロンドンタワー。
400年以上にわたりは数万人の死刑囚の血をすすった監獄。
その中でも最も凶悪な人物の処刑がとり行われていた。
「なに?」
少し驚いたような顔で、死刑の執行官は振り返った。
「敗北を・・・知りたい・・・?ハハハ。それが最後の言葉かね」
勝者の持つ余裕を全身にまとい、ニヤリと笑いながら彼は聞き返した。
「では質問しようチョン=ドイル君。」
この結末も君にとって、勝利……とでも言うつもりかね。」
笑うのも無理はなかった。
彼は目隠しをされ、両手両足を電気イスに固定されて座らされ、
ただ処刑を待つばかりの正に敗北者そのものと言った風情である・・・。
「いずれにしろ死の手前……ほんの一瞬ではあるが……
君は自分の夢が実現したことをイヤでも実感できるだろう」
そう言うと彼は電気のスイッチを押した。
バリバリバリバリバリバリバリバリッッッ
流れる電流に激しく体を震わせる。
口からはよだれが流れ、血の涙を流し、挙句の果てに----失禁。
ぐったりとチェアにもたれるチョン。
死を確信した執行官が彼の手首の拘束を外す。
その時!
「ニダ・・・」
(生きている!?)
執行官が驚くよりも速くイスから離れ、彼の背後にチョンは回り込む
そして、耳元でからかうようにささやいた。
「どうしたのかね?緊急事態発生だよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」
慌てて振り返る執行官に、チョンは余裕の笑みを見せる。
「拳銃を抜きたまえ」
すでに彼は唯一無二の必殺武器の『テボドン』を手にかけていた。
「君の腰に下がったイーグル式拳銃でもファルコン式拳銃でも好きな近代兵器の使用を
許可しようといってるのだよ」
「きみたちとウリナラは核とというハンデがあって初めて対等と言われるが、まさに
今はその状況だ。」
しばしの沈黙。
重苦しい空気に耐え切れずに執行官が声にならない雄たけびを上げて銃を撃つ。
「アァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」
ドンッという音がして、確かに銃は彼の鎖骨を貫いた。
だが、チョンの放ったテボドンは彼の存在自体を蒸発させてしまった。
「あと10秒スイッチを切ることを遅らせたなら・・・・ウリの願いはかなったろうに」
ロンドン空港。そこでは一人の日本人が待機していた。
サヨックおじさんである。
「君から最後の手紙を受け取ったときにはまさかと思ったが・・・
本当に現れるなんて・・・
しかも時刻どうり・・・
それでは向かおうか・・・ ヒノモト家へ・・・ 」
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