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第20話
ナナッシー
投稿日: 2002/12/29(日) 22:50 ID:LfJgTIow
「愛と悲しみの単発ドラマ小説『ニホンくん』」
地球小学校、放課後の廊下。
他の生徒達の多くが家路についている頃、一組の少年と少女がそこにいた。
傾きかけた夕陽は、床に二人の影を映し出している。
「謝罪して、謝罪してよぉ!」
その少女は少年に詰め寄った。
少年の胸倉を両手でつかみ、涙で潤んだ瞳でまっすぐに見つめている。
少年は目を合わせられないのか、うつむいたままで口をつぐんでいた。
何も言わない少年に対し、少女の表情は一段と曇る。
「ニホンくん、どうして謝ってくれないの?自分のしたことが分かってないの?」
少年―ニホン―はうんざりした顔で吐き捨てるように言った。
「・・・カン子ちゃん、僕が君に何をしたって言うんだよ・・・」
少女―カン子―は、愕然とした。
驚きのあまり、整形した顔が元に戻りそうだった。
「ひどい・・・ひどいよニホンくん・・・アイゴォ」
カン子は膝から崩れ落ち、顔を両手で覆った。
時折嗚咽を漏らしながら、背中を震わせている。
その少女の姿に胸を掻き毟られる思いのニホンだが、
泣かせてしまうようなその理由に思い当たる節が無い。
「ね、ねぇ、忘れたのなら謝るけど、カン子ちゃんが何に対して
怒ってるか分からないから、それだけでも教えてくれないかな?」
優しく問い掛けるニホンの言葉に、カン子はゆっくりと顔を上げた。
その瞳には明らかな抗議の色が見て取れたが、カン子は早口で答えた。
「ニホンくんは前に無理矢理私の服を剥ぎ取って、私を水の中に突っ込んで、
汚れを知らない私の体を散々弄んだじゃない!
私の心も体もあれだけ嬲り尽くした挙句、覚えてないなんて言わせないわ!
この鬼畜ニホン!人でなし!クズ!鬼!キムチ!反省して!謝罪して!」
「・・・・そ、そんなこと・・・ん?」
律儀なまでに一生懸命記憶の中を隅々まで検索したニホンの頭に、
既に色褪せたおぼろげな思い出が一つ浮かび上がった。
「それって、3・4歳の頃一緒にうちのビニールプールで遊んだ時のこと?
あの時は確かカン子ちゃんの方から仲良くして欲しいって言って来たんじゃん。
水着も持ってないって言って勝手に服脱いでたし。
それを今頃になって、も、弄んだとか言われても・・・」
少し頬を赤くしながらカン子を見つめるニホンに対し、
顔全体を見事なキムチ色に染め上げたカン子は目を充血させながら反論した。
「そんな記憶無いわ!捏造よ!でっち上げよ!
男らしく反省して謝罪して!今すぐしてよ!あなたは謝罪すればいいのよ!」
「・・・カン子ちゃん、ムチャクチャだよぉ。理由も無いのに謝れなんて・・・」
「・・・そう、どうしても謝罪しないつもりね・・・
わかったわ・・・それなら私にも考えがあるから・・・」
やおら立ち上がったカン子は身を翻しそのまま下駄箱へ向かった。
カン子が突然態度を変えた事と、その言葉に妙な不安感を覚えたニホンは
カン子の背中を追いかけ、靴を履き替える彼女に恐る恐る問い掛けた。
「・・・ねぇ、『考え』って何?」
「ふふ、別に。ただ、あなたの家の前で裸で
『ニホンくんは私を性奴隷にした』って3日ぐらい泣き叫ぼうかと」
靴を履き終え、その顔に魔女的な笑みを浮かべてカン子は振り返った。
ある種の恍惚感が宿るその瞳にニホンは背筋を凍らせた。
(・・・本気だ・・・この子は絶対に本気だ・・・)
人一倍世間体を気にするニホンに対するこの脅しは悲しいほど効果的である。
もはや逃げ場の無いこの状況下では、理不尽な謝罪強要を受け入れるしかなかった。
「・・・わかったよ、謝るよ。あの時はごめん・・・・これでいい?」
「ダメ」(0.1秒)「え?」
「謝罪したからってそれで終わりと思ったら大間違いよ。
それ相応の誠意が伺える態度が必要なの。分かる?・・・賠償よ
私の心と体を汚した事に対する慰謝料きっちり払ってもらうわ」
上気し嬉々として頬が紅潮していくカン子とは対照的に
ニホンはみるみる青ざめてゆく。
「そ、そんな・・・」
「払わないつもり?そう、それなら・・・」
「わ、わかったよう・・・これでいいんでしょ」
ニホンはポケットから取り出した財布から、お札全部を引き抜いてカン子に手渡した。
だが、彼女は侮蔑の目つきでニホンを見ている。
「足りないわ。ぜ〜んぜん足りないわ!
私の純潔奪った罪がこんなはした金で埋め合わせられると思ってるの!?」
「え、ええ〜!?」
「ま、今日のところはこれだけで勘弁してあげる。
でも、また要求するからね。ちゃんと用意しておくのよ」
呆然と立ち尽くすニホンを置いて、軽い足取りでカン子は玄関を出ていった。
校門をくぐるところで、髪をお団子にまとめた少女がカン子を待っていた。
「上手くいったようね」
「ええ、チューゴさんが教えてくれたとおりにやったら上手くいったわ」
「当然!ワタシの計画に失敗なんて無いのよ」
するとチューゴは近寄ってきたカン子の手のお札から、その半分をひったくった。
「チューゴさん何するの!?」
「指導料ってやつよ。足りなくなったらまたニホンくんから貢いでもらえば?」
「うん・・・そうだね」
笑顔を作ったカン子だったが、チューゴはその表情の影を見逃さなかった。
「でも、あんた、ニホンくんのことが好きなんじゃない?
本当はこんな付き合い方したくないんじゃないの?」
「!そ、そんなこと無いよ!あんな奴のこと・・・」
「ふ〜ん、じゃあ昔『大きくなったらニホンくんのお嫁さんになる〜』
って言ってたのはだ〜れだったのかな〜?」
「チュ、チューゴさん!」
「・・・ま、ワタシにはどうでもいい話だけどね」
(本気になれば、いくらでもニホンくんと付き合うことはできるんだし・・・)
チューゴの考えなど知るよしもないカン子は、そこで彼女と別れとぼとぼと家路についた。
一方、呆然としているニホンの横にいつのまにか人影が現れ、声を掛けてきた。
「よっ、どうした人気者、顔が悪いぞ?」
「・・・こういう時は、顔色が悪いって言うんだよ・・・」
茶化した声の主をあえて憮然とした顔で睨み返す。
だが、気心の知れた親友の姿を改めて確認すると、すぐに表情を緩ませた。
「悩み事か?よし、このタイワン様が一瞬で解決してしんぜよう」
「うるさいなぁ、あっち行ってろよ〜」
「にゃにを〜、親友が悩みを聞いてやるって言ってるんだぞ?
友達甲斐ねぇぞ?さ、言ってみそ?お兄ちゃんがしっかり聞いてやるぞ〜」
「いつから君が僕の兄貴になったんだよ?」
「これから。さ、秘密と悩みを分かち合って俺達は本当の兄弟になるんだ!」
「じゃ言わない」
「アイヤー、そう言うなよ俺達の仲だろ〜ブラジャ〜?」
しつこく絡んでくるタイワンを鬱陶しそうに追い払う仕草を見せたニホンだが、
タイワンが本気で心配してくれているのは分かっていたし、そのおどけたセリフも
自分を元気付けるために口にしていることも理解していた。
だから、本音を口にするのが苦手なニホンにとって、この親友の存在は何よりも有難かった。
「ちぇ、しょうがないなぁ」
「へへっ、じゃ行こうぜブラジャー?」
「ブラジャーって言うなー!ヽ(`Д´)ノ 」
「い・や・だ・ね、ハッハッハッハ」
「ただいま」
家に着いたカン子は決して返事が返ってこない言葉を口にした。
自己破産した両親は共働きで外で今は馬車馬のように働いている。
お陰で少しずつ生活状況は良くなってきてはいる。
だが、両親は「日ノ本家に負けるな」を合言葉に仕事に精を出しているため
夜遅くになるまで家には帰ってこない。
また、姉のキッチョムは部屋に引きこもりがちで、
カン子はここしばらくその顔も見てないし、声も聞いていない。
時々、妙なうなり声を上げたりしているが、そういう時は聞こえないフリをしている。
何をやっているのかも分からず、最近アメリーから犯罪の道具を作っている
という話を聞いて驚いたほどだ。
沈んだ表情で自室に入り、ドアを閉めた。
カン子は鞄を床に放り出し、うつ伏せにベッドに倒れこむ。
肢体を放り出したまま、その日のことを思い返しては自己嫌悪に苛まされる。
長いため息をついて、写真立てがおいてある枕元に視線を移した。
そこには、爽やかな笑顔のニホンがいた。
(チューゴさんのように頭も顔もよくない私)
(アメリーさんのようにお金も持ってないからプレゼントも買えない私)
(こんな私が、どうやったらニホンくんに振り向いてもらえるの?)
(ごめんね・・・私こんな方法でしかニホンくんと付き合えない・・・)
カン子は枕をその小さな胸元に引き寄せ、体全体で思い切り抱きしめた。
「・・・ニホンくぅん・・・・」
どんなに思い焦がれても、今その抱きしめたい相手はここにはいない。
両の瞼を閉じ、せめて夢の中でと願いながら、
カン子はゆっくりと浅い眠りに落ちていった。
解説
ナナッシー
投稿日: 2002/12/29(日) 23:01 ID:LfJgTIow
ども、ナナッシーです。
以前「読者イラストコーナー」にうpされてた飛鳥様の
「男女逆転バージョン@アジア」のイラストに触発されて作ってみましたが・・・
嫌韓でも笑韓でも風刺でも無い、ただクソ長い駄文になってしまって鬱鬱鬱・・・
シリアスも向いてない模様・・・あうあう
しかも書いてる途中でなぜかカン子ちゃんに萌えてしまった私って一体・・・ぐはぁ
最後に、誰も見てないかもしれませんが、みなさんよいお年を。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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