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第42話 ナナッシィ 投稿日: 2003/12/26(金) 00:-16 ID:BjhlQCZU
『本当にこれでいいのか、私の○○回目のクリスマス』

雲ひとつ無い澄み渡る青空。燦々と輝く太陽が、その頂上に手をかける頃。
こちらアメリー君ちでは、毎年恒例のクリスマスパーティーの準備が慌しく進んでいました。
名物の巨大クリスマスツリーの設置、明るい部屋の飾りつけ、参加者全員分の席の用意等等、
アメリー君が陣頭指揮を取る中、ラスカちゃん、ベガスちゃんが甲斐甲斐しく動き回っています。
何しろクラスメイト全員が入るような大部屋を使うのですから、その忙しさは野戦病院さながらです。
「兄さん、この辺の飾りつけどう?」
「ん〜? ま、こんなもんじゃないか? 次あっちの方頼む」
「おにいちゃ〜〜ん! ほしがもげた〜〜!」
「あ〜、今行く!」
両親は子供達のパーティーゆえほとんど手を貸さずに子供達に任せ、暖かく見守っています。
その辺りに、子供達を成長させる鍵があるのでしょうか。と、その時、玄関の呼び鈴が鳴りました。
「ん? パーティーは6時からなのに……随分と気の早い奴がいるんだな」
アメリー君は準備を妹達に任せ、客を出迎えるため玄関に向かいました。

「はいー、どちら様――」
玄関ドアを開けて隙間から顔を覗かせたアメリー君の目に飛び込んできたのは、白い羽毛のついた
赤い服と、同じく赤い三角帽子でコーディネートされたサンタさんスタイルの――

「メリィクリスマス、アメリー! お口の恋人カンコ君が――」
 『 ガチャン 』

アメリー君は何も無かった事にして、パーティー会場の準備に戻りかけました。
早速当然のように、外からファビョリ声が聞こえてきます。
「コラァ! なじぇ締め出すニダ! ニホンの時は家族総出で歓迎してたじゃないかニダカ!
 実質的にミンジョクサベツニダ! 嫉ましいニダ! ああ嫉ましくて癇癪起こるニダヨォ!」

 『 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンピンピンピンピンピンピンピン…… 』

F5アタックを彷彿とさせる怒涛の指捌きで猛然と呼び鈴を連打するカンコ君。
北斗の拳ならもう半万回は死んでます。
(ったく、何でこのクソ忙しい時によりにもよってアイツの相手せにゃならんのYO……)
大きな溜息をついたアメリー君は諦め顔で振り返るとと、ドアノブにのろのろと手をかけました。

後ろ手でドアを閉めたアメリー君は、全然目に表情の無い不自然な笑みとわざとらしく両手を広げた
あからさまにやるきのないオーバーアクションでカンコ君を迎えました。
「やぁ、カンコ。メリークリスマス。まあ歓迎したい所だが、まだ準備が出来てないから、適当に
 またバラ園でも見てとっとと帰ってくれYO」
明らかに本音は最後の一言にあるようですが、そんなこと気にするカンコ君ではありません。
「心配無用ニダ。ウリはパーテーの準備を手伝いに来てやったハセヨ?」
ピクリと、アメリー君の眉が動きました。ニダニダ笑顔のカンコ君の顔を、頭の中で色々な打算を
渦巻かせながら、じっと見つめます。文字通り猫の手も借りたい状況の今、ニダーさんの手でも
無いよりはましかもしれません。アメリー君はドアノブに手をかけました。
「……じゃ、早速会――」
「クリスマスという事で今日は特別にウリの手料理をご馳走してやるニダ。食材も準備して来たニダヨ」
アメリー君の言葉を遮って、カンコ君は傍らに置いてある袋をぽんぽんと叩きました。
「……ハァ?」
一瞬、何を言われたのか分からずそのままの姿勢で、目の前がホワイトアウトするアメリー君。
後頭部に大きな汗粒を垂らし、その作り笑いの口元を引き攣らせながら、もう一度聞き直しました。
「……お前の?……手料理を?……パーティーで?……出せと?」
「ニダ!」
一点の曇りも無いその笑顔に、最高に嫌な予感がして思わず顔を背けるアメリー君。
と、不意に下げてしまった視界の中に、カンコ君が持参してきた袋が入ってきました。
一見何の変哲も無い布袋ですが、その袋の口から奇妙なものが飛び出ているのが目に付きます。
茶色い角状のそれらは途中で手の平状に、妙に最近見覚えのある枝分かれの仕方をしていました。
アメリー君の頬が本格的に引き攣ってきました。
「……カンコ……もしかして、これはトナカイの角じゃないか?」
「あー……それはちょっとした遊び心というヤツニダ。ケンチャナヨ」
「ケンチャナヨって……遊び心にしても、こいつは……」
と言って、アメリー君がその角に手を伸ばして触れようとした所、


 『ぴょん』『ぼさ』

袋が飛び跳ね、アメリー君から一歩遠ざかりました。
「…………」
手を伸ばした姿勢のまま、目を丸くしたアメリー君が呆然と立ち尽くしている間に

 『 ぴょん、ぼさ、ぴょん、ぼさ、ぴょん、ぼさ、ぴょん、ぼさ、ぴょん、ぼさ 』

袋はどんどん二人から逃げるように飛び跳ねながら遠ざかっていきます。
数秒間、その後姿(?)をアメリー君とカンコ君はならんで眺めていました。
と、先に我に帰ったカンコ君が叫びました。
「コ、コラ〜! 往生際が悪いニ――」
「Ha!」
が、駆け出そうとした矢先、アメリー君の足払いによって庭の土に熱い接吻をしていました。
「……ったく、いくらなんでも生きてるトナカイの肉をクリスマスに食えるわけねぇYO……」
はき捨てるように呟いたアメリー君は、倒れたカンコ君の後頭部を一瞥すると、必死に飛び跳ね続ける袋の背中(?)に向かって駆け寄りました。

「よ〜しよしよしよし、いい子だね〜、も〜大丈夫だからね〜」
跳ねる袋にドウブツ王国っぽく迫るアメリー君。ご丁寧に目尻まで緩ませています。
背後から捕まえ、抱きしめながら安心させようと優しい手付きで、なでなでなで〜……
「わっ……とと、暴れるな暴れるなYO!……今出してやるからなっ……っておい!」
ですが、一向にコミュニケーションが取れない……というか逆に死に物狂いの暴れ方になってきました。
と見るや、アメリー君速攻で強行手段に転換。尤も、寧ろ彼的にはこちらの方が真骨頂。
うめき声をあげて暴れるのを言葉では優しく宥めながら、やたらめったらに繰り出してくる蹴り(?)や頭突き(?)をマウントポジションで強引に押さえ込みます。何故かハァハァするアメリー君。
そのまま、右手を角に、左手を袋の口にかけ、一気にひっぺがえしました。
すると、袋の中から……

「……………………へ?」

    ……角のはえたカチューシャをつけ……
 
           ……トナカイ色のビキニを着た……
 
                   ……涙目で震えるチョゴリちゃんが出てきました。

「――その後、ファビョッたチョゴリとアメリーに二人がかりで袋叩きにされたニダ!
 その上アメリーには出入り禁止にされたハセヨ!全部ニホンのせいニダ!反省シル!謝罪シル!」

さて、こちら場面変わって日ノ本邸。コタツを挟んで正面に向かい合って
口角泡飛ばしながらキムチ色のカンコ君と、みかんをはもはも頬張るニホンちゃんの姿があります。
カンコ君は、顔中に痣や擦り傷を作り、頭も所々頬骨のように出っ張っていました。
一方、ニホンちゃんは困惑、不安、憐憫、諦観各々大さじ1/4ずつ混ぜ合わせた複雑な表情です。
「……なんでそこで私が反省する余地が出て来るのか、さっぱりわかんないんだけど……」
「何を言うニダ! 女体盛りはチョッパリの文化スミダ! 女体盛りを食べさせようとして
 ウリが酷い目にあったニダから、それはチョッパリの劣等豚足文化のせいニダ! 賠償シル!」

  『 ボン! 』

ニホンちゃんの顔が火がついたように真っ赤に染まり、頭からはシュワシュワ蒸気が発生し始めました。
「し、知らないもん……私、そんなの知らないもん!
 宴会芸とかお座敷遊びとか玄人産業とかよくわかんないもん!」
「……なに取り乱してるニダ? 何かあやすぃニダ……」
もともと細い目を当社比20%(目測)ぐらいに細めてニホンちゃんをじーっと見つめるカンコ君。
あうあうと視線を泳がせるニホンちゃん、ふと思い出したように胸の前でポンと両手を合わせました。
「そ、そうだ! カンコ君、アメリー君と仲直りしたいんだよね? ねっ、そうだよね?
 私アメリー君に電話してお願いしてあげようか? うん、決定! じゃ、ちょっと待っててね!」
「ニダ?」

ニホンちゃんは慌ててコタツの上に置いた携帯電話を手に取ると、カンコ君に背中を向けました。
そして、何回か親指を動かした後、携帯電話を耳にあてます。
「……あ、もしもしアメリー君? ……そう、うん……え? いやそうじゃないんだけど……
 今日ね……アメリー君ちにカンコ君行かなかった? ……そう……でね……うん……えっと……」
ちらりと、ニホンちゃんがカンコ君を横目で振り返りました。
カンコ君はニホンちゃんの方をじっと見つめながら、ニホンちゃんの食べかけのみかんの一切れを
チュ―チュ―吸っていました。
「…………あ、ううん、なんでもない……でさ、カンコ君のこと……許してあげてくれないかな?」
「許すとは何ニダ! ウリは何も悪いことはしてないニダ! ウリの自尊心が著しく傷ついたニダ!」
その後、『謝罪と賠償(ry』が続くのは目に見えていたので、ニホンちゃんはみかんをカンコ君の口に
突っ込みました。
「はい! まだみかんあるからどんどん食べてね! ……あ、ごめん……うん……そうなの……」
また何事かニホンちゃんは話し始めます。
「だからね……えぇ〜……でもでも〜……ねっお願い! ねっ?ねっ?」
カンコ君はみかんを口の中でクチャクチャ言わせながら、何だかよく分からないけど妙に必死な
ニホンちゃんの姿を見て、ぼんやり考えました。

(……ニホンがウリのために一生懸命アメリーにお願いしているニダ……)
(……元々はニホンが悪いニダが、今日は素直に反省しているみたいニダね……)
(……ニホンもようやく自分の立場を理解し始めたと見えるニダ……)
(……今日のところは許してやるニカ。さすがウリ、太っ腹ニダ。ウリマンセー……)
(……そうニダ、礼には礼で返してやるニダ。さすがウリ、東方礼儀の人ニダ。ウリマンセー……)
(……勿体無いから、持ってきた食べものを再利用するニダ。エコマンセー……)

「ねっ、カンコ君をパーティーに入れて……え?……ま、まぁ、そういう言い方もあるけど……」
ニホンちゃんがアメリー君を説得している最中、チョンチョンと肩をつつかれたのを感じました。
「え? 何?」
ニホンちゃんが振り返ると、そこには……

「……………………へ?」

   ……体中の突起部分をドーナツの穴に通し……

         ……目の前でコタツの上に仰向けに横たわる……
              
               ……パンツ一丁のカンコ君の姿がありました。


「さ、ニホン。ウリを召し上がるニダ。存分に堪能するニダ」
「…………」

目が点になるニホンちゃん。その手から携帯電話が音も無く畳の上に落ちました。

(……何ニダ? 体の奥底から癇癪とは違う何か……熱い何かが突き上がって来るニダ……)
(何だかよく分からないニダが、お腹の辺りに凄い力が漲ってくるのを感じるニダ……)
(そうか、これが「考えるんじゃないニダ、感じるニダ」という偉大な先人の言葉ニダネ……)
(……なんて瞑想的でリラックスできる文化的アートパフォーマンスニダ……癖になりそうニダ……)
(これが分からないなんて、アメリーもチョゴリもレベルが低いニダ。反省シル!)

「さぁニホン! パクッといくニダ、パクッと! さあ、一思いに……ハァハァハァハァ……」

他人ちのコタツの上で妖しく蠢きながら悶えるカンコ君。
一方、石像のように表情を硬直させたニホンちゃん、虚ろな瞳で携帯電話を拾い、耳にあてました。

「……アメリー君……お願い……早く引き取って……」
『やだ』

「ニ、ニ、ニホンンンンッ! は、早く、ウウ、ウリ、ウウウウリをオオオ〜〜〜〜〜!!」



最低に終わる。

解説 ナナッシィ 投稿日: 2003/12/26(金) 00:-6 ID:BjhlQCZU

あえてスレの雰囲気を無視して、賞味期限切れのネタをクリスマスにねじ込んで見るテスト。
強引なのは百も承知の助。無理矢理なのは言われるまでもないわぁ!!(←開き直り)
おげふぃんなのはスマソ。推敲不足なのは……面目ない。最近仕事が忙しくて(つдT)

女体盛りイベント 『Naked Sushi』
 ttp://mytown.asahi.com/usa/news02.asp?c=14&kiji=258
女体盛りの次は男体盛り!
 ttp://mytown.asahi.com/usa/news02.asp?kiji=5050

で、+αとしてかの国の日本文化解放と、李スンヨプ日本球界入りあたりを少し混ぜてみますタ。


それにしても……私は、クリスマスに一体何をやっているのだろう………?

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