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第16話
シェロ
投稿日: 2004/06/04(金) 21:18 ID:iMUMMnLs
「ビデオ好きのヒゲさん」
「やべぇ、すげぇアツイのが撮れたぜ・・・・」
アメリー君の家にはビデオを撮るのが大好きなヒゲさんがいます。
ヒゲさんは昔、クソガキがモデルガンを学校で撃ちまくって皆が痛い思いをしたから、
その子にモデルガンのBB弾を売ったコンビニに文句を言いに行って、
BB弾を売るのを止めさせる様子をビデオにしてたりするので、
一部にコアなファンがいるそうです。でも、皆に褒められるとその勢いで、
アメリー君のパパに喧嘩を売ったりするので、アメリー君とは仲が悪いみたいですね。
そんなヒゲさん、また何か新しいのを撮ったみたいです。
「こりゃ早く皆に見せねぇと。ビデオデッキのある部屋に急ごう。」
嬉々としてヒゲさんは走っていきます。ところが、
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁあ!!」
ビデオのある部屋にはどこも、「ヒゲ、お断り」の張り紙が。ヒゲさんがびっくりしてると、
「やぁあヒゲさーん!!ビデオはココでは流しちゃ、ダーメだよぉ!!」
気色悪い裏声がして、ヒゲさんが振り返るとそこには、
二足歩行のでかい手袋をした、心のきれいな子にはネズミに見えなくも無い生き物がポーズを取っていました。
「お、お前は、ミッ・・・」
「わ〜おぅ!そーれ以上は、お金とるよぉ〜?」
そう、ネズミっぽい生き物はこう見えて、地球町一のギャラの高さを誇るスーパースターなのです。
でも、ヒゲさんはギャラの高さには怯まず、ネズミっぽいのに食い下がります。
「なんで俺のビデオを流させてくれねーんだよ?前のはやらせてくれただろう?」
「だぁって、ヒゲさんのビデオは、CGが無くてつまらないじゃな〜い!それにここでは、
ボクの作った、お化け屋敷ビデオを流すんだぁ〜(^^)」
「でも、このビデオはなぁ、マジでアツイ話なんだぜ!!話題沸騰間違いねぇぞ!」
「とにかくダメさぁ〜。やっぱ海賊とか空飛ぶ奴とか出ないとおもしろくないね〜」
ヒゲさんは小一時間食い下がりましたが、ビデオ上映は結局させてもらえません。
「ガッデム! 俺はこのままじゃすまさねーぞ!!俺らの自由を返しやがれ!!」
ヒゲさんは涙を浮かべて、捨て台詞を残してアメリー君の家を飛び出して行きました。
ヒゲさんが走り去った後、隠れて一部始終を見ていたアメリー君が出てきました。
「ふぅ、今回のヒゲのビデオなんか皆に見せたら、家中大騒ぎになるからなぁ・・・
助かったぜ、ウォ・・・」
「わぁ〜おダーメだよアメリー!!中の人の名前はご法度だよぉ〜?」
ネズミっぽいのはアメリー君に張り付いた微笑を見せました。彼の表情は決して変わりません。
夕方の公園で、ヒゲさんがブランコに腰掛けてます。
「ちきしょう・・・俺らの家は自由がモットーじゃなかったのかよ・・・いつからこんななっちまったんだ・・・」
キィキィと音を立てて、夕日に染まったヒゲさんの背中が揺れていました。
長く伸びるヒゲさんの影。と、そこにもう一本の影、そして凛とした声が。
「あたくしは、感動しましたわよ。おじさま。」
ヒゲさんが振り返ると、そこにはフランソワーズちゃんが。
「アメリーの家でビデオが流せないなんて、たいしたこと無いですわ。
ビデオデッキは何も、アメリーの家のものだけではありませんもの。
おじさまのなさっていることは、アメリーにとって都合の悪いものかも知れませんけれども、
きっと、誰かがなさらなければならないことですわ。
負けないで。おじさまは正しいことをされているのですから。」
フランソワーズちゃんは微笑んで、ヒゲさんに小さな置物を手渡しました。
それは「ぱるむどうる」という置物。世界のビデオマニア垂涎の、激レアな名品。
「サ、サンキューお嬢ちゃん。そうだよな。俺は間違ってないよな。」
「ええ。いつか、おじさまの仕事をアメリーが認める日が、きっと来ますわ。」
ヒゲさんは目じりを拭いて、立ち上がって叫びました。
「オッケェェイ行くぜ!!アメリーパパ!俺は負けねーぞぉぉ!」
ヒゲさんは太った体を揺らして、夕日の道を駆けて行くのでした。いつものあの、燃える瞳で。
遠ざかるヒゲさんの背中を見て、フランソワーズちゃんはいつまでも微笑んでいました。
「これであのヒゲのビデオが話題になれば、いやでもアメリーの家で流さないといけなくなるでしょうね」
そう心の中で思ったかどうかは、きっと彼女にしかわからないこと。
元ネタは華氏911のディズニー配給拒否騒動とパルムドール受賞です。
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