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第19話
どぜう
投稿日: 2004/06/10(木) 10:26 ID:eBUU/hU6
『女神の天秤』
今日も今日とて平和な地球町。
「――タァラララぁラ〜、テコンV〜♪」
上機嫌で走っていくのは他ならぬカンコ君です。
折しも地球町は夕御飯の時間。カンコ君は買い物かごを片手に、
両手を飛行機のように広げて、たったかとお買い物に出かけているのでした。
「チョングロ、ウンチン、デュモ、ロボッチィ、テコン…」
と、その足が止まります。そして、商店街の端っこのおもちゃ屋のウインドウに、
ふらふらとまるで夢遊病者のようにカンコ君は引き寄せられていきました。
「…チェゴ…テコンV…」
細い目を目いっぱいキラキラと輝かせながら、ハァハァと吐息も荒く、
カンコ君が眺める視線の先には、
おおざっぱ…いえ、ダイナミックなカラーリングをした、テコンVのおもちゃが見栄を切っていました。
けれどもここは世知辛い地球町、トランペットを買ってくれる素敵紳士はいるかもしれませんが、
ダイカスト製DXテコンVを買ってくれる紳士は到底現れそうにありません。
「…」
切ない視線を落としながら、掌の中のお金を開いて確認してみます。
アメリー君とニホンちゃんの家へ送るおすそ分けの分も渡されていたので、
なんとかテコンVが買えるお金はありました。
けれどもそれではオモニに頼まれた夕食のお買い物は買えそうにありません。
買うべきか、買わざるべきか。それが問題です。
「……ニダ!!」
頭の電球マークが点灯したカンコ君、迷わずにおもちゃ屋さんに入っていきました。
…
そしてしばらくたった後で、ホクホクと笑みを浮かべながらテコンVを手に、
カンコ君はおもちゃ屋さんから出てきました。
しかし、一体どうするつもりなんでしょうか?
『女神の天秤』
「ただいまニダ!」
カンコ君の帰宅です。
間髪入れずに台所に駆け込みます。
「あら随分遅かったニダね、カンコ」
「オモニ!今日はウリが夕食を作るニダ!!親孝行ニダ!感謝しる!!」
ばーん!
カンコ君、突然チューボー入り宣言です。
「おや随分感心な事を云うニダね」
殊勝な発言にカンコママ、目を丸くして驚きました。
「さあさあさあ、ウリが今日は美味しいご飯を作るニダ、
オモニは台所から出てってくれニダ」と、いささか強引にカンコママを台所から追い出してしまいました。
ぴしゃん。
「さて、ドキドキウリナラクッキング開始!…ニダ!!」
眼光鋭くカンコ君が、買ってきた買い物かごを見やります。
『女神の天秤』
「いやあカンコ、料理の腕は意外にいいニダね!」
マッコリで上機嫌になったカンコパパが誇らしい息子の背中を、
ばしばし叩いています。
今日の夕御飯のおかずは餃子でした。
少し厚めの皮が丁寧に包まれています。
ピリ辛のタレに、とってもジュ〜シィな餃子をつけて、
ご飯がご飯がススムくん。
「そのうち地球町でも屈指のしぇふになるかも知れないニダよ!」
カンコママも上機嫌です。
「オッパ、見直したニダ」
チョゴリちゃんもにこにこぱくぱくと餃子をついばんでいます。
「ウェー、ハッハッハ!ウリの腕にかかればざっとこんなもん…うぐぅ…!」
突然カンコ君がぺっ!と皿の上に食べていたギョウザを戻してしまいました。
「な、汚いニダ!オッパ」抗議しようとするチョゴリちゃん。
しかし、その視線はお皿の上の餃子に釘付けになります。
その餃子からは、なんだかぐんにゃりとした緑色の何かがはみ出ていたのです。
それはまごうことなきかみ終わった後のガムでした。
「し、しまったニダ!」
急いで「ないない」するカンコ君、しかし、食卓の全員がそのガム入り餃子を見てしまいました。
『女神の天秤』
「カンコ…今のは一体何ニカ?」
額に青筋を浮かべて、カンコパパが尋ねます。
「オモニには、かみ終わった後のガムに見えたニダ…
返答次第によっては、新しく考案したテッキョンの(しゅ!しゅっ!!)実験台になってもらうニダが…」
カンコママも凄みます。
生命の危機を感じたカンコ君、かくかくしかじかとなり行きを説明します。
お金が足りなくて、仕方なくゴミを使ってギョウザを作ったこと。
そのゴミ入り餃子は、ニホンちゃんとアメリー君のおすそ分け用にしたことを説明しました。
なぜお金が足りなくなったかは、あえて説明しませんでした。
ちなみに説明の途中で呆れたチョゴリちゃんは席を立ってしまいました。
「なあんだ、そうだったニダか」
意外なことにカンコパパが胸をなで下ろしています。
「じゃあ、カンコが食べたのは、あれは間違って入っていた餃子ニカ?」
真剣な表情でカンコママが尋ねます。
「…そう、ニダ」恐る恐るうなずくカンコ君。
「ならばいいニダ」カンコ君、あっさりと解放されてしまいました。
「?」附に落ちないカンコ君、
それでも、まあいいかケンチャナヨ、と、残った餃子に箸をつけようとしたその時。
『女神の天秤』
――ぴんぽおおおおん♪
なぜか、いつもの呼び鈴の音が、カンコ君の耳には間延びして聞こえました。
『こんにちわあ、アメリーですー!』
『夜分遅くすみませーん、カンコくーん?ニホンですけどー♪』
インターホン越しの、妙に陽気な二人の声。
「あっ、はい。ああ、カンコニカ?…ええ…『います』ニダ」
――そんな、オモニ。
――ウリを褒めてくれたのにウリを売るニカ?
そうカンコ君は口に出そうとしましたが、何故でしょう?声が出ません。
「じゃあ、ちょっとの間ですけど、カンコ君お借りしまーす!」
「しまーす♪」
カンコ君は思いました。
『ドナドナの子牛の気分って、こんなんだったんだなあ』と。
二人に連れられて家を出て行く途中、カンコ君の部屋の窓越しに、雄々しく見栄を切るテコンVが見えました。
『テコンV…それでもウリは…ウリはオマエを愛してる…ニダ…』
そしていつもの悲鳴が地球町に響き渡りました、とさ。
どっとはらい。
http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2004060858588
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/06/06/20040606000034.html
元ネタは、『生ゴミからできた材料が餃子・中華まんの具に』です。
以前SAPIOかどこかで、中国人は『日本人は、いい車は自国民用に、
欠陥車や質の悪い車は中国などの輸出用に仕分けている』
と云う風説、と云うか妄想を読んだことがあるんですが、
あの辺りの人たちはみんなそんな思考なんでしょうか。
あと、さすがにガムは入ってないんじゃないかなあと思います。
ま、ちょと覚悟はしておけ。
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(*^ー゜)b Good Job!!
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