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第20話
熱血君 ◆x3A1GrPw
投稿日: 2004/06/11(金) 01:16 ID:5Dd.3frk
「オーケストラ」
アーリアちゃんは楽器演奏が得意です。シュタージの訓練の他にもそうした
芸術のレッスンも受けていたのです。
「兄上程ではないがな」
謙遜してそう言いますが実際にその腕はかなりのものです。あのハプスブルク
先生ですら舌をまく程です。
ですが楽器も手入れが必要です。たまたま全ての楽器を修理に出していた時
です。急に演奏してくれとクラスの皆に頼まれました。
「しかし今は楽器が・・・・・・」
いきなりのことですし渋っています。
「僕のを使う?」
「私のでも」
皆はそう言ってくれます。けれど他の人のを使うのは申し訳なくて気がひけます。
「気持ちは有り難いが・・・・・・」
当然ゲルマッハ君のものも借りようとは思いません。正直困っていました。
「参ったな、せめて一つでも手元にあれば」
台所でジャガイモの皮を剥きながら考えています。
「よし、イモは全部剥き終わったな」
今度は人参を手にとります。
「今日は野菜が多いな。たまにはこんな日もあるか」
アーリアちゃんは人参に包丁を入れました。
「やけに細長い人参だな」
そこでふと思いました。
「まるで笛みたいだ。・・・・・・笛!?」
そこであることが閃きました。
「そうだ、何も普通の楽器だけ使えばいいものじゃないぞ!」
冷静な彼女が何時になく興奮しています。そして台所に
ある野菜を一通り手にとりました。
「これを使って・・・・・・」
自分の部屋で野菜に色々と彫を入れます。そして次々に
作っていきます。
「よし、これで準備は整った!」
彼女は机の上に置かれている野菜を見て満足気に微笑んで
います。
「あとは演奏の日だけだ。皆を驚かせてやる」
彼女の自信に満ちた笑みが机の灯りに照らし出されました。
かくして演奏の日。何とアーリアちゃんは野菜を持っているだけです。
「おい、楽器は!?」
「ここにある」
彼女は微笑んで答えました。
そしてまずは人参を手にとりました。そして口に近付けます。
「な・・・・・・」
何と人参から綺麗な音色が聞こえてくるではありませんか。まるで
天使の調べのような。
キューリのサクソフォーン、ネギのバイオリン。どれも美しい音色
ばかりです。皆の拍手が収まりません。
「気に入ってもらえたみたいだな」
演奏を終えたアーリアちゃんも嬉しそうです。
「楽器が全部修理中だったのでな。こうして代わりの楽器を作ったのだ」
「それが野菜ってのがいいね」
「ああ。台所で思いついた。まさかこれ程素晴らしい音色が出るとは
思わなかったが」
彼女は顔を赤らめて言いました。
「ところでこの野菜どうするの?」
誰かが尋ねました。
「え!?」
アーリアちゃんはそこまでは考えていませんでした。
「ううむ、捨てるのも勿体ないしな。どうしようか」
「食べちゃおうよ」
ここでニホンちゃんが言いました。
「野菜さんも本当は食べられる為にあるんだし。楽器と
して使った後はそうしてあげた方がいいよ」
「成程」
アーリアちゃんはニホンちゃんの言葉に頷きました。
「ニホンの言う通りだな。皆、ここはこの野菜を使って
スープにしないか」
「賛成!」
かくして演奏のあとの心地良い御馳走に舌鼓を打つ一同
でした。
解説
熱血君 ◆x3A1GrPw
投稿日: 2004/06/11(金) 01:18 ID:5Dd.3frk
今回のソース。ドイツの野菜を使ったオーケストラです。
ttp://cnn.co.jp/fringe/CNN200405250024.html
楽団のホームページ。
ttp://www.gemueseorchester.org/
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