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第15話
貼り逃げ男
投稿日: 2006/01/27(金) 12:06:14 ID:qy4IJRKm
「地政学 -ランドパワーとシーパワー-」
昨日から続く大雪の為、学校はお休み。
しかし、勉強熱心な先進国の御仁方は勉強の予習に勤しんでいるようです。
従って、地球町が誇る町立図書館にも自然と人が集まってくるというもので。
エリザベス「もぅ〜、朝から雪・雪・雪!由々しき事ですわね。
早く図書館の暖房に当たりたいですわ。」
ユニオンジャック柄のバッグを振り回しながら、今日もエリザベスちゃんが悪態をついています。
半ば乱暴に両開きのガラスドアを観音開きで開け、学習室がある2Fへと急ぎます。
すると、何やら見たことのある後姿。アーリアちゃんです。
エリザベス「あら、アーリア。御機嫌よう。で、…何を読んでいますの?」
そう言うと、スッと視線を彼女が持っている本に向けます。しかし、字が細かくてよく見えません。
そしてアーリアちゃん、余程集中しているのか、エリザベスちゃんの問いに黙秘を決め込んでいます。
こうなるとプライドの高いお嬢様であるエリザベスちゃん。当然、口撃せずにはいられません。
エリザベス「…バトル・オブ・ブリテン…ですわ」(ぼそ)
アーリア「うわあああああああっ!!!
え、エリザベスか。寿命が縮まるかと思ったぞ!
し、しかも私の本を後ろから覗いていたな!これはプライバシーの侵害だっ!」
エリザベス「貴女が王族であるワタクシを無視する方が大罪ですわ。弁えなさい。」
と、アーリアちゃんの持っていた分厚い書籍が、エリザベスの目にまたも止まります。
アーリアちゃんが隙を見せたのをいい事に、全盛期ばりの手際のよさで取り上げてしまいました。
エリザベス「まぁ…地政学のお勉強をしていましたの?
それならこのような本に頼らずとも、ワタクシがご教授してあげましたのに。」
実はエリザベスちゃんの家は、大陸国家(ランドパワー)と海洋国家(シーパワー)の区別を
最初に行ったという学者さんを輩出しており、地政学に関する知識と意欲は並々ならぬものがあります。
アーリア「いや、気持ちは有難いが、結構だ。私の家でも地政学は昔から研究している。
ナッチ会の時にも祖父が熱心に研究を依頼していたくらいだからな。
この本を見ていたのは、改めて地政学についての基礎を抑えようと思ったからだ。」
「ナッチ会」という単語が出た途端、エリザベスちゃんの額からピキピキと青筋が出ましたが、
こと学問に関しては自負を持っているアーリアちゃんは、その程度では驚きません。
アーリア「先ほどお前、バトル・オブ・ブリテンと言ったな?
あれも地政学と関係があると聞いた。
ユーロ町とドーヴァー川を隔てたお陰で、我が最強の警備兵を上陸させずに済んだわけだ。
そう考えると、お前の土地は恵まれているな。『栄光ある孤立』…だったか?
アレも地勢上の環境がなければ実現は出来なかっただろう。」
いつもエリザベスに口では負けてしまうアーリアちゃんですが、
今日は何時に無く張り切ってます。すごい剣幕でエリザベスちゃんを追い詰めます。
エリザベス「…判りましたわ!こちらは親切心で言ってあげましたのに。
人間関係が冷たい方は性格も冷たいんですのね。」
エリザベスちゃん、最早語る事なしと思ったのか、プイと踵を返して奥の机に行ってしまいました。
実は、内心もうちょっと構って欲しかったと思っているアーリアちゃん。
しかし顔には微塵も出しません。エリザベスちゃんを見送ると、何事も無かったかのように机に向かいます。
その一部始終を覗いていた人影が2つ。
チューゴ君とカンコ君です。2人仲良く観葉樹の影に隠れてウォッチングしています。
話が終わったのを見届けた後、椅子に座って仲良く(?)語り合います。
チューゴ「朕の家は元来ランドパワーで成り立っているアル。
が、これからはシーパワーの力も手に入れたいアル。」
カンコ「流石はチューゴ様ニダ!やっぱりニホンのような凡人とは格が違うニダ」
チューゴ「だが、朕がシーパワーを手に入れる為に障害となる家が2軒存在するアル。」
カンコ「不届きものニダ!中華圏のルールに違反しているニダ!
アジアの盟主はチューゴ様以外にいないニダ!誰ニダかそいつらは!」
チューゴ「タイワン家と…日ノ本家アル!!
こいつらは揃いも揃って朕の太平湖進出を邪魔立てしているアル!
特に日ノ本家などは朕に対する嫌がらせとしか思えない位置に浮かんでいるアル!
これは世界の秩序に対する挑戦アル!朕としては直ぐにでも刑罰(※)を加えたいアルよ!」
カンコ「やっぱりチョパーリニダ!ウリは情けないニダ!
出来損ないの弟を持つ兄は苦労するニダ!アジアの糞尿の分際でチューゴ様に楯突く愚か者ニダ!」
チューゴ「…そこでだ、カンコ」
カンコ「二カ?」
チューゴ「ニホンから、シマ模様のパンツを奪ってくるアル」
カンコ「な、何でウリがやるニダか?チューゴ様は力があるんだからウリに言わなくても出来るニダ!
それに…最近のニホンは割と物を言うようになってきたニダ!迂闊に手を(」
チューゴ「カンコ…勘違いもいい加減にするアル。朕は何もお願いなどしていないアル。」
カンコ「え、何かくれる二カ?ホルホル」
それを聞いたチューゴ君は一笑した後、すばやく切り返します。
チューゴ「これは命令アル。…まさか断わったりなどしないアルな?
何百年お前の面倒を見てやったと思ってるアル」
カンコ「そ、それはチューゴの捏造ニダ!ウリは半万年に渡って栄えた名家ニダ!
古代には大朝鮮帝(」
何時の間にか敬称が取られた事に怒り心頭のチューゴ君。
しかし、そこは元アジアの盟主であるチューゴ家の跡取り。こうなる事も想定の範囲内です。
チューゴ「…判ったアル。朕がタイワンとニホンを属国にした暁には、
カンコにニホンをあげてもいいアル。これで悪い条件ではないアルよ」
その言葉を聞いた瞬間、カンコ君が目を少女漫画のようにキラキラさせて、
チューゴ君に擦り寄りました。
カンコ「ウリに任せるニダ!宗主様の御心のままに、ニホンからパンツを奪ってくるニダ!」
カンコ君は物凄いスピードでニホンちゃんを探しに行きました。
ニホンちゃんは喫茶スペースでタイワンちゃんとアメリー君を交えて雑談しています。
ニホン「さっき通りかかったらね、アーリアちゃんが地政学の本読んでたよ」
アメリー「HAHA!偶然とはあるものだね。ボクも地政学最近嵌りだしたんだ」
タイワン「私の家はシーパワーね。ニホンちゃん家もそうでしょ?
私たち警備員にそんなに力入れてないし、大きい船たぁくさん持ってるし」
ニホン「うん、そだね。私の家は殆どシーパワーなしじゃ今頃消滅してたって言われるくらい
重要なウェイトを締めてるから。お魚さんとも昔からお世話になってきたし」
アメリー「“GENKO”だろ?“SAKOKU”に“WW2”…。
確かにニホンちゃん家の歴史はシーパワーの恩恵そのものだね。」
と、そこにカンコ君が現れました。
ニホン「あ、カンコ君。どうしたの?」
カンコ「ニホン!さっさとパンツをよこすニダあああああああ!!!」
カンコ君は韋駄天の様な速さでニホンちゃんのスカートをめくり、
沖ノ鳥と書かれたシマパンツを掴むと、素早くズリ下げようとします。
タイワン「なにしてんのよバカンコ!!」(バキッ)
毎度毎度、タイワンちゃんを舐めすぎたカンコ君の敗北に終わりました。
ボロ雑巾の如く打ち捨てられたカンコ君を置いて、2人は泣いてしまったニホンちゃんと帰ってしまいました。
カンコ「あ、アイゴぉ〜…」
物陰に隠れていたチューゴ君がボソボソと何かしゃべっています。
チューゴ「カンコめ、真正面から奪う事しか知らないアルか。
これだから万年属国と呼ばれるアル。
パンツなど、本人が気づかないうちに取る方法など幾らでも見つかるアル」
やれやれ、とカンコの手を掴み、引きずりながら図書館を出ます。
悪態をつきながらも家に送り届けようとするチューゴ君。大昔からのお節介の名残でしょうか。
その手には、中華製のカメラがしっかりと握られていました。
その頃…
アーリア「(…みんな行ったか?)」
そう言うと、アーリアちゃんは地政学の本を置くと、忍ばせておいた耽美小説を取り出し、
熱のこもった眼で読み始めました。
アーリア「(エリザベスに何とかバレずにすんだが…誰かに見られてなかっただろうか?
いや、私の警戒範囲は常に5m近くまで達している。大丈夫、大丈夫だ…)」
家で読めば済む事なのでしょうが、スリルとサスペンスとは時に危険を顧みず求めてしまうようで…。
アーリア「(ああ…何と…。…綾香!なぜそこで由紀に告白しない!…何、こ、このような事が…)」
結局閉館間際まで図書館に居座ってしまい、寒さと火照った体に耐えながら家路に急ぐアーリアちゃんでした。。
解説
貼り逃げ男
投稿日: 2006/01/27(金) 12:11:12 ID:qy4IJRKm
【ソース】
地政学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%94%BF%E5%AD%A6
(※)中共様がおっしゃられるには、侵略戦争は刑罰だそうで…。
日清戦争も中国側から見れば勝手に欧米化した日本に対する刑罰の意味で言われていたとか。
中華思想の名残ですかね。
毎度毎度長文ですみません。。長文しか書けない性格なもので(^^;)
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