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第25話 貼り逃げ男 投稿日: 2006/02/02(木) 02:51:33 ID:/UBUG8/p
「古酒」

━━━━━酒!!!!!

それは、百薬の長とも言われる人類が生み出した神秘の水!
この秘水を欲せんがため、人々は太古の昔から地球町各地で作り続けてきた!
そして…わが家、日ノ本家でも古代から脈々と受け継がれてきた知恵と伝統がある!
だが!時は明治となり、他家の珍酒が好まれるようになり、わが家伝統の酒、「古酒」は一時衰退、
近年では伝統を守り続けた者が、細々と作り続けるのみとなってしまった…。

しかぁしっ!現在ではこの「古酒」の味覚の多様性に惹きつけられた者が後を絶たない!
その甲斐あって、この先人の代弁とも言うべき酒が、ブーム復活の兆しを見せているのだ!
今宵は、そんな大人の魅力、古酒に迫りたいと思う…。

ロシアノ「…ニホン、前置きはいいから早く始めてくれよ。
      俺はこの日の為にウォッカを抜いてきたんだぞ。舌回りを良くする為になぁ。」

マカロニーノ「ニホンちゃん、君は何をやらせても可憐だ…。
         テースティングは僕に任せてくれ!ハニーの為なら何でもやるさ、ハッハッハ」

フランソワーズ「ちょっとお2人共、はしたないですわよ。
          ここは学校では無く、気品漂う空間なのですからね。慎んで頂きませんと。」

今日は日ノ本家の地下バーでお酒の品評会。
と言っても大っぴらに宣伝はしていないので、集まった面々は何れもお酒に煩い兵(マニアとも言う)揃い。
しかもロシアノビッチ君とフランソワーズちゃんは普段から歯に衣着せぬ辛口で通っています。
かなりの強敵です。…一拍置いて、奥からニホンちゃんが顔を出しました。
ニホン「アハハ、前置きした方が雰囲気出るかなぁ〜、とか思ったんだけど、ダメだった?」

そう言うと、ニホンちゃんは奥から3本の大瓶を持って来ました。
3本とも色が違います。カウンターに左から透明、赤褐色、黒と並べました。

ロシアノ「よし。何でもいい、早く飲ませろ。出ないとここで暴れるぞ」

フランソワーズ「…貴方、もしやと思ったのですが、アルコール依存症ではありません事?
          普段から飲みすぎですわ。少しは自制しなさいな。」

ロシアノ「余計なお世話だ。お前はシベリアの極寒を体験していないからそう言えるだけだ。
      何なら片道切符くらい便宜してやるぞ?」

フランソワーズ「結構ですわ。それでニホンさん、こちらの透明なお酒は何ですの?
          見た感じ日本酒のようにも…」

フランソワーズちゃん、早くもソムリエ気分です。
色を一つ一つ凝視し始めました。

マカロニーノ「ニホンちゃん、ロシアノの言う事に賛同する訳じゃないけど、
        お酒はやっぱ舌で転がして見ないとハッキリは判りづらいよ。
        そうだね…、深みというか、コクというのかな。」

マカロニーノ君も自分の舌に自信があるのか、やる気満々です。
何を隠そう、彼は女性と食事を何よりも大切にする男なのです。

ニホン「うん、そうだよね。判った。じゃあ、左の透明なお酒から開けるね。」
3人のグラスに勢いよく透明なお酒が注がれます。
そして、「乾杯」という合図とともに、この場の全員がほぼ同時に口に含みました。

ロシアノ「うむ…んん……日本酒だな」

フランソワーズ「日本酒ですわね」

マカロニーノ「美味しいよニホンちゃん。けど、これは僕も結構飲んだ事あるんだ。
        清酒、つまり日本酒の味だと思うんだけど…。」

3人とも、少々拍子抜けしたようにグラスに注がれたお酒とニホンちゃんを見比べます。
流石はお酒に煩いだけはあり、この程度は常識のようです。

ニホン「では、今度はコチラの赤褐色のお酒をどうぞ。…多分、ビックリするんじゃないかなぁ、ふふっ」

ニホンちゃん、何やら含み気のある笑いを浮かべます。
ソムリエ達は(マカロニーノ除く)はそれを見て面白くなさそうです。
それを意に返さず、ニホンちゃんは2つめのグラスに赤褐色のお酒を注ぎました。
そして、口に含みます。

ロシアノ「……ん?何だこの味は」

フランソワーズ「貴方、この程度が判りませんの?この様な物、常識ですわ常識。
          …ニホンさん、これはシェリー酒ですわね?」

マカロニーノ「うん。当たってると思うよ。僕たち若者にも割と飲みやすい。
        サッパリしているね。味も悪くない。」
ニホン「ふふっ。じゃあ…これが最後。早速飲んでみて。」

ニホンちゃんが最後に並べられたグラスに、今度は黒色のお酒を注ぎます。
色はブドウ酒より少し濃い程度。強烈なインパクトです。

フランソワーズ「これは、ブドウ酒ではないのですわね?
          それにしても、黒光りしていますわね、血が騒ぎますわ。」

ロシアノ「興奮しすぎだぜフランソワーズ。顔面がサルみたいに真っ赤になってるぞ。ククク」

ロシアノビッチ君、笑いを堪え切れません。一方フランソワーズちゃん、
ホロ酔いでしょうか。ほんのり顔が朱色に染まっています。

フランソワーズ「お黙りなさい下郎。…では、頂きますわ。
          ━━━━━━な、何ですのこれは」

フランソワーズちゃん、未知なる体験に思わず絶句してしまったようです。
刹那、大声で「思い出すのです!思い出すのですわ!」と叫び、必死に記憶を辿ろうとしています。

ロシアノ「どれ…うおっ、これは…また大人の味だなぁ…こりゃ。
      俺には未だコイツの味を知るのは早いかもなぁぁぁ」

マカロニーノ君も沈黙したままです。どうやら皆飲んだ事のない味だったようで…。

ニホン「…何となく、味が紹興酒に似てない?」

気配りの利くニホンちゃん、すかさず助け舟を出します。
マカロニーノ・フランソワーズ「それだよ(ですわ)!!」

2人とも、どうやら迷宮から帰還したようです。
名前を言われても一向に判らない顔をしているロシアノビッチ君は置いていかれる事になりました。

フランソワーズ「とにかく、これで大体味はつかめましたわ。
          けどニホンさん、これと貴女が先ほど言った古酒と、何の関係があるんですの?」

フランソワーズちゃん、湧いてきた新たな疑問に堪らず尋ねます。
マカロニーノ君も同意見(?)なのか、うんうんとニホンちゃんに熱い眼差しを送っています。

ニホン「へへ、あのね、実は今飲んで貰ったお酒、全部”日本酒”なの。気づかなかったでしょ?
     この透明なのが”清酒”。コッチの赤褐色のお酒が大体10年くらいかなぁ、
     その位日本酒を寝かせた”古酒”で、今みんなに飲んで貰ったのが約30年間寝かせた”古酒”なの。」

マカロニーノ「えっ、これ元は全部同じお酒なの!?…まるでワインだよ。…凄い。」

フランソワーズ「素晴らしいですわね。味も一級品ですわ。
          ちょっと癖がありますわ、けれども、慣れれば問題なく飲めますことよ。」

ニホン「ホント!?あ、有難う、ちょっと自信出てきたかな。わぁい!」

ニホンちゃんはもう有頂天です。子供のように(子供ですが)大ハシャギでマカロニーノ君と
フランソワーズちゃん、そして何やら難しい顔をしているロシアノビッチ君をを家に送り届けました。…その夜…

ロシアノビッチ「へん、コクだぁ?ハッ、色だぁ?ハッ!酔えりゃいいだよ、温まりゃいいんだよコッチは!」

あくまで酔う事一筋に酒を愛す事を誓う、ロシアノビッチ君でした。。

解説 貼り逃げ男 投稿日: 2006/02/02(木) 02:56:59 ID:/UBUG8/p
ソースというか、参考までに。。

古酒チョコ バレンタインデー前に発売 北海道の小林酒造
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060120-00000019-maip-soci

古酒(長期熟成酒)について
http://www.ink.or.jp/~mineland/news/top.html

いやはや、先人の知恵とは素晴らしいですね。江戸時代から確立していたそうで。
全く驚かされます。ていうか飲んでみたい…

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