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第1954話 シェロ 投稿日: 04/08/13 22:39 ID:w+JKUUVo
〜 Granpa's memories 6 〜
あれから、我が家はアメリー家の監督下に置かれる事となった。
今までの態度とはうって変わって、アンクルサムは壊された我が家の修復作業を進んで行ってくれている。
自分で壊したものを自分で直すのも何か妙な話だが、アンクルサムは笑って言った。
「俺らは、お前らに早く元気になってもらいたいんだよ」
その笑顔の裏にある冷たさに気付かないほど、私は愚かではなかったが。

あの喧嘩は、地球町全体を大きく変えた。
西側で同時期に大暴れしたナッチのせいで、西側で力を持っていたエリザベス家もフランソワーズ家もボロボロになり、
それまで持っていた力を失った。代わりに力を持ってきたのは、
私達に勝ったアメリー家と、キョーサンの盟主ロシアノビッチ家。
二つの家は決して相容れない思想を持ち、共に地球町の盟主たらんという欲望を抱いていた。
両雄並び立たずは世の宿命。いつぶつかり合ってもおかしくはない。
どちらの家も、来るべき「その時」に備え、仲間を作るのに躍起になっていたのだった。
そのために彼らが行ったのが、監督下に置いた家の人間を手なずけること。
いざとなった時に先兵として使えるように。
私の家はまだいい。二つの家によって割られてしまったチョソン家やゲルマン家は、その時には家族同士で喧嘩しなければならないのだから。

そして「その時」は、現実のものとなる。
あの喧嘩の傷痕が癒えないうちに、チョソン家で起きた喧嘩。それはアメリー派とロシアノビッチ派による、家督争いだった。
家督を継いだ者がどちらの派閥の者かによって、地球町の勢力図は大きく変わる。
自分の派閥の者に家督を、という両家の思惑に踊らされて、彼らの喧嘩は苛烈を極めた。
そんな中、リクグンが我が家に帰ってくる。アメリー家から言い渡された使命を胸に。

「・・・・・・ただいま。ヒロ」
「リク!お前大丈夫だったのか?」
「ああ。あっちの冷や飯は糞マズだったけどよ。やたら寒いし。まぁその話は後だ。
それより、リクジたちはいくつになったっけ?」
「ん?今度小学生になるが、それがどうかしたか?」
私の問いに、リクグンは神妙な面持ちで答える。
「いや、な。アメリー家から言われたんだよ。俺の息子達に喧嘩のやり方をしこめってな」
「・・・・・・何だって?ウチの決まりは彼らに変えられたんだぞ。二度と喧嘩をしないように、喧嘩の道具を持つなってな」
「ああ、あっちで聞いた。でもそれはなんとかごまかせってよ。アンクルサムの奴が言ってた。
ウチの監督の命令だ。やるしかないだろ」
その時私は、アメリー家の思惑をはっきりと悟った。
同時に、私達は結局自分の足では立てないということも。
ああ、やっぱり私達アジア町の住人は、誰かに使われ続けなくてはならないのか。
黄色い猿は、白い人間の道具に過ぎないのか。じゃあ、あの喧嘩は一体なんだったんだ?
あの戦いで流れた私達の血は、まったく無駄だったのか?
「・・・・・・リク、ニッテイはどうしてるか知ってるか?」
「・・・・・・わりぃ。あれから一度も会えてないんだ」
私の問いに、リクグンは首を横に振った。 (続)

解説 シェロ 投稿日: 04/08/13 22:51 ID:w+JKUUVo
すいません、いくらなんでも長くなりすぎたので、分割しますた。
残りは終戦記念日に。
朝鮮戦争、警察予備隊結成とかそのあたりです。今までの他の作者様の話と
上手くかみ合うように作ってますので、捏造多いんですがf^^;

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