戻る <<戻る | 進む>>
第2289話 青風: ◆BlueWmNwYU 投稿日: 2005/07/05(火) 02:01:47 ID:y1Z0CyKe
「まごころをあなたへ」

 その喫茶店が面している通りは、大通りから外れているとは言え結構
人通りが絶えません。朝ともなれば特に沢山の人や車が行き交います。
そんな通りを眺めながら、マスターのサヨックさんは一生懸命にパソコン
で副業の子供向け番組のシナリオ書きに精を出しています。
「さぁ次はどうしようかなぁ。本当はもっと難しい話を書きたいんだけど」
そんなサヨックさんに後ろから声を掛ける女の子がいました。
「お父さん、小学生の理解力を甘く見すぎだよ」
振り向くとサヨックさんの一人娘、アサヒちゃんが立っていました。
「わっ、脅かさないでくれよ小夜。これから学校か、朝ご飯は食べた?」
「お父さん知ってる?子供騙しのお話じゃ子供は騙せ無いんだよ」
其れだけ言うとさっさとアサヒちゃんはさっさと学校へ向かいます。
「うーん、我が娘ながら人の話を聞かないねぇ。
 一応子供からプレゼントも来るくらいには人気出てるんだけどなぁ」
そう云いながらサヨックさんは棚の上から小包を取り出しました。

 そんな日の朝、地球組の教室では、いつものようにカンコ君が何やら
不気味な笑顔を浮かべていました。
「ホルホルホル、女は三日打たねば狐になるニダ。ここいらでひとつ
自分の主人が誰なのか、はっきり教えてやるニダ!」
ニダリと笑うとカンコ君が取り出したのは女の子向けのパンツ。
其れを右手で振りかざし、近くに座るニホン目掛けて声を張り上げます。
「やいニホン!今日こそはオマエに此を穿かせてウリのシモベで有る事を
 はっきりさせるニダァ!証拠の写真も撮ってやるニダァ!」
見るとカンコ君は左手にしっかりとカメラを用意しています。
「うわぁ、最悪だよう」
がたっ、と席を立ったニホンちゃんが思わず走り出します。
「オマエが返して欲しがっていたパンツニダ、ナジェ逃げる?」
絶好調のカンコ君追いかけます。もう彼を止められない、のか?
 逃げ回るニホンちゃんと追いかけるカンコ君。
女の子の中では足の速いニホンちゃんですが、本能と煩悩で
加速されたカンコ君の足に徐々に追いつかれそうになります。
もうちょっとで捕まる、まさにその瞬間です。
「カンコォオオ!!」
怒声と共に捻り上げられるカンコ君の左のほっぺた。
振り向くと鬼のような形相のフラメンコ先生が立っていました。
「オマエ、ちょっと職員室へ来い!」
アイゴー、と云う絶叫と共に引きずられて行くカンコ君。
後に残るはひらひらと舞い落ちる一枚のパンツ。
その表面にはマジックで黒々と”ドクト”と書かれていました。

「で、結局カンコの奴このパンツを何カ所にも送ったらしいの」
カンコ君の机の上のパンツを遠巻きにしているみんなを相手に、
仕入れたばかりの情報をアサヒちゃんが披露しています。
どうやらカンコ君、ニホンちゃんにパンツを届ける為に
ニホンちゃんに少しでも関係の有りそうな住所に片っ端から小包を
送りつけたらしいのです。
「意味が判りませんわ。で、何方ですのその不幸な方達って?」
意外ですが、エリザベスちゃんもゴシップは大好きなのです。
「まずはニホンの家でしょ。それからなんとね、自分の家にも送ったのよ。
 宛名と送り主を間違えて逆にしたらしいのね。
 で、カンコのお父さんが激怒して学校に連絡したらあの騒ぎって訳よ」 
何とも云えない結末にみんな呆れ顔。もし、ニホンちゃん自身が顔を真っ赤
にして拳を握って俯いてなければ笑って済む話だったのですが。
「でも、後の何カ所かって何処なのよ?」
タイワンちゃんの疑問に頸をすくめてアサヒちゃんはこう言いました。
「さあ、其処までは判らなかったなぁ。
 でもそのうちの一人にはなりたくはないわねぇ」
 その日の夕方、アサヒちゃんがお家に帰るとサヨックさんが開いた小包
を目の前に腕組みをしていました。
「ああ、小夜か。ちょっと聞いて良いかな?」
嫌な予感を感じながら、大人しくお父さんの前に腰掛けるアサヒちゃん。
「なぁ小夜。最近小学校でこんなものを送るのが流行っているのかい?」
見ると、サヨックさんの前には例のドクトと書かれたパンツが有りました。
まさか、と思って小包の宛名を見ると其処には、
”ウルトラニホンの人へ”と読み辛い字で書いてありました。

おしまい

解説 青風: ◆BlueWmNwYU 投稿日: 2005/07/05(火) 02:16:35 ID:y1Z0CyKe
後書きやら解説やら、のようなもの

さて、今回の元ネタは >>139さまご依頼の
ドクトパンツですね。
序でに自分のレス >>141
ネタに使ってしまいました。

それにしても、カンコ君を使うとコメディが楽にまとまりますなぁ。
根っからのコメディアンか、近くにいたら面白いだろうなぁ。
・・いや、やっぱり要らない。

それと、遂にサヨックさんに副業をさせてしまいますた。
そうです、此からはウルトラニホンの
クレームは全て地球町の喫茶 Peaces のサヨックさん
当てでお願いします。

それでは、出来る限り近いうちにお会いしましょう。

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: