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第2295話 U−33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2005/07/10(日) 07:11:23 ID:o6bFSL46
「いけないアルバイト」

「エリザベスちゃん、アフリカ班の子たちは給食費さえろくに払えないのよ。そんな子たちにメリケンサック
や木刀を売りつけるなんて、いけないことだと思わないの!」
 夕暮の公園の片隅、きびしい顔をしたニホンちゃんがエリザベスちゃんをつかまえて問い詰めています。
「あら、何が問題なのかしら。さっぱり分からないわ」
 何を言われてもエリザベスちゃんは、バカにしたように鼻先で笑うだけでした。
「みんな傷ついてるのに、よくそんなふうに……」
 言いかけたニホンちゃんをエリザベスちゃんがさえぎります。
「ニホンちゃん、そういうのを偽善っていうの。ケンカをやめられないのはその人の責任よ。そんな人たちを
相手に私がちょっとしたアルバイトをすることのどこが悪いのかしら。
 それに私がやらなかったら、フランソワーズあたりがその分を売るだけでしょ」
「……」
 ニホンちゃんは言葉に詰まりました。
「仲良くしようと叫んだらみんなが仲良くなれると思ってるとしたら、あなたも相当な能天気ね。
 さすがは、パンツを盗っていった人に文句を言うことさえためらってた甘ちゃんね」
 エリザベスちゃんは、捨てゼリフを残して行ってしまいました。

 言い負かされたニホンちゃんは、ひとりブランコに座ってうなだれています。
「私はただケンカでみんなが傷つくのを見たくないだけなのに。私は能天気な甘ちゃんなのかしら……」

 翌朝、
「どうしたの。エリザベスちゃん」
 腕に包帯を巻いて登校したエリザベスちゃんを見て、ニホンちゃんはびっくりして訊ねました。
「あのあと、帰る途中に地下道を通ったら、珍走団が仕掛けた花火が破裂してケガしちゃったのよ。まったく
ああいう連中にも困ったものね。あの人たち、どこからあんな危ない花火を手に入れるのかしら。きっと悪い
奴らが売りつけてるのよ。ほんとに許せないわ」
 エリザベスちゃんは、怒りの表情で答えました。
 ニホンちゃんはそれを聞いて、言いました。
「そうね。絶対許せないよね」
 そして一言、強い口調でこう付け加えました。
「儲かればいいなんて人は、誰であってもね」

解説 U−33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2005/07/10(日) 07:13:31 ID:o6bFSL46
(元ネタ)
この4年間の英国からアフリカへの武器輸出が大台の£1 billionに
http://ch.kitaguni.tv/u/917/todays_news_from_uk/0000229048.html

まぁ、日本の武器輸出三原則の運用も余りに硬直的で、それはそれで問題なしとはしないんですが、
こういうのを見るとこれは大きな問題だと思いますね。

もちろん、今回のテロ犠牲者にはなんの罪もないわけで、いくら欧米諸国のふるまいに問題な部分が
あったとしても、それでテロが免罪されるものではないわけですが。

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