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第10話 貼り逃げ男 投稿日: 2006/01/24(火) 04:58:18 ID:dr8YwqSk
「爪弾き者の狂宴」1/3


ちょっと昔のお話。
背の低い、しかし端正な顔立ちの男が忙しく身だしなみを整えています。

ニッテイ「━━━いよいよか」

今宵は地球町、イタリー家・ローマの間にて親睦会の日。
参加者はそれぞれ自分の家の自慢話をする、とても楽しい親睦会です。
しかし、これには別の顔も持ちます。親睦を深めるのもそうですが、
ご近所から評判の悪い会社同士が傷を舐め合い、運命共同体として誓いを立てる日でもあり、
お互いが今後、それぞれの店の経営が傾かないように援助する約束をしたためる日でもあるのです。
特に、最近何かと気に食わないユーロ町やアメリー家などから経営に必要な技術や材料を規制され、
尚且つロシアノ家やチューゴ家のプレッシャーで頭の痛い思いのニッテイさんにとって
この親睦会は充分に赴く価値がありました。

ニッテイ「この親睦会が上手くいけば、我々はアメ公なんぞに平伏しないで済むかもな」

ニッテイさんが言うのも無理はありません。
この時、ユーロ町ではヒトラー社長が運営するナッチ会が市場を独占。
まさに破竹の勢いでした。ニッテイさんの会社の社員や幹部もこの勢いに心酔中です。
ナッチ会の勢いは、アメリー家を牽制するのには充分だと思ったのです。

ニッテイ「さて、と。タイも締めた。ペンも持ってる。営業スマイルは…よし。
     …では、いくとしよう」

「行ってくる」とナデシコさんに告げ、ユーロ町へ渡るボートに乗り込もうとして、
ニッテイさんはふと思いました。

ニッテイ「そう言えば、カイグンは反対してたっけか」
「爪弾き者の狂宴」2/3

「…ん、兄さん、何度言ったら判るんだ…!相手はあのアメリー家だぞ!?
 彼らを怒らせて困るのは資源を抑えられている我々日ノ本家だ!
 それに!…ナッチ会と言えば、今やユーロ、いや!地球町の嫌われ者!
 目的の為なら、物の怪とでも手を結ぼうと言うのか兄さんは!!」

今回の議題は勿論、ナッチ会・日ノ本家・イタリア商店での業務提携について。
社運を掛けた提携だけに、乗っけから激論が交わされているようです。

カイグン「私は以前アメリー家の力をこの目で見てきた!
     見て判った、彼らの商売スキルと物量は我々とは桁違いだ!
     無理なんだよ。我々が逆立ちしても勝てる相手ではない!」

カイグンさんの意見は少々乱暴ですが、実際に見てきただけはあり、
説得力はなかなかのものです。まあ、元々彼が親アメリー派である事も影響しているのですが。と。

リクグン「…だが、この提携は北の露助を牽制するには非常に有効である事は明白だ。
     あー、実は…私の庇護を受けているマンシューもアイツの卑しい目つきには困っていてな。
     少しでも憂いを取り除いてやらねばならんと思うのだ」

カイグン「何を言うリクグン!お前はアメリー家の恐ろしさを知らんのだ!」

リクグン「お前こそ。露助の強かさを忘れたか?あの会社の大きさを忘れたか?」

話は平行線。決定はニッテイさんに委ねられる事になりました。
「爪弾き者の狂宴」3/3

ニッテイ「最早我々も地球町から爪弾きにされた以上、同じ境遇の者同士協力するしかない。
     ここでアメリー家に譲歩したとて、状況の改善は難しいだろう」

確かに、日ノ本家がチューゴ家の荒れ果てた庭に支店を立ち上げたからと言うもの、
アメリー家の執拗な囲い込みは目に余るものがありました。

カイグン「…そうか。…いや、決定は決定だ。異論は無い。
     こうしてはおれん。急いで喧嘩の道具をかき集めてこなくては」

心なしか、カイグンさんは寂しく、同時に何やら覚悟を決めた目をしていました。
カイグンさんが去ったのを確認したリクグンさんは、ニッテイさんに話し掛けます。

リクグン「兄さん、さっきはあんな事言ったが、俺も出来れば露助との摩擦は避けたい。そこんとこヨロシクな」

ニッテイ「…善処しよう」

リクグンさんはその一言に苦笑すると、
漆黒のマントを羽織り、彼方を見据えるように背筋を伸ばし、会議場を後にします。

ニッテイ「物の怪、か。欧米諸国からすれば、我々もそのような化外の民として見られているのだろう。」

その日、会議場は夜遅くまで明かりが灯っていました。
「爪弾き者の狂宴」おまけ

親睦会は無事終了、3社とも業務提携の締結に合意、終始和やかなムードとなりました。
ニッテイさんとかつて公の場で激論を交えた事のある(※)ムッソリーニ親分も、
昨日の敵は今日の友、と言った所でしょうか。ホクホク顔でニッテイさんに話し掛けます。

ムッソリーニ「おお!私のトモダチ!いや、この間の事はお互い水に流そうではないですか!

ニッテイ「ええ。貴方の会社も生存を掛けての止むを得ない手段だったと理解しています。」

ムッソリーニ「そ、そうですな。いや〜ハッハッハ!」

バツが悪くなったのか、ムッソリーニ親分はイタリア商店式のお辞儀で早々に会場を去ります。

ニッテイ「…これでロシアノ家を入れればより強固な地盤が出来るのだが」

彼は、漁夫の利を狙わんと日ノ本家の支店を窺うロシアノ家が不気味だったのです。

ニッテイ「さて、と。ふふ、忙しくなるなこれからは。
     鬼畜米英ども、見ていろ。貴様らの言う猿の底力を思い知らせてやるわ」

爪弾きから少しでも仲間が増えた事で、随分救われた気がしたニッテイさんでした。
━━━━━その頃…

メリケン「黄猿とナッチと他が三国同盟を結んだKA!HAHA!締めてやる必要があるNE!」

ビクトリア「最早手加減する必要はありませんわね。一刻の猶予もゆるされませんわ!
      …特にあの男は、よりによって、よりによってナッチ会と手を結ぶなど!
      直ぐに取り潰すべきですわね!そしてワタクシに謝罪と賠(ry」

スタリン「ようやく面白くなってきたか…。
     どれ、日ノ本家とアメリー家に忍ばせたスパイに連絡をいれるとするか。ククク」

解説 貼り逃げ男 投稿日: 2006/01/24(火) 05:40:07 ID:dr8YwqSk
ソースは日独伊三国同盟です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%8B%AC%E4%BC%8A%E4%B8%89%E5%9B%BD%E5%90%8C%E7%9B%9F

(※)については2232話を勝手ながら参照させていただきます。。
ttp://nihonchan.himegimi.jp/org/html/2232.html

まあけど、日本の4国同盟構想も独ソ戦でオシャカになるんですけどね。
ソ連こわいソ連怖いソレンコワイ

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