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第28走者
書き人知らず ◆PWTa2EFE
投稿日: 2004/07/25(日) 17:37
「夏のニホンちゃん祭り『となりのニホンちゃん』第28走者」
どこまでも広がる海に、一隻の優雅な客船が波を蹴立ててしずしずと航行していました。 船の名は<クィーンエリザベスU>
そう、あの豪華客船です。
そのデッキでは、優雅で物静か、まさに純粋培養のお嬢様といった風情の少女が静かに、ティーカップを手にしていました。
潮風が少女のブロンドをやんわりとなびかせる様は、どこかの絵画を実写したのでしょうか。 やがてティーカップを静かに
おき、なにげなくあたりを見回すと、風にのって不思議な声が聞こえてきました。
「アイゴー寒いニダ〜」
少女はそばにあった双眼鏡をのぞいてみました。 すると、誰も住んでいないはずの南極町で寒さに打ち震える少年が、
レンズに映っています。 さすがに見捨てるわけにもいかないでしょう。 彼女は人をやることにしました。
「私、カンコ君を見直しましたわ。 南極の氷でカキ氷を作るなんて、なかなか風流なことをなさるものですね。」
「助かったニダ。」 毛布にくるまり、それでもなおガタガタを震えるカンコ君、熱い紅茶を飲み、ようやっと
落ち着いたようです。
「まだ助かってはいませんよ。 カンコ君はどちらに行くおつもりでしたの?」
「ユーロ街ニダ。 しかし大きな船ニダ。 これならウリも安心してユーロ街へいけるニダ。」
犬にかまれて、池に落ちて、サメに襲われて、トラップにだまされて、トラに追われて、ロケットで飛ばされた、そんな
冒険譚を延々と解説し、要求もしっかり付け足すンコ君、しかし聞いているほうは、それほど感銘を受けた様子ではありません
でした。
「そう、この船は我が家へ帰る途中。 ですからあなたをユーロ街へ送り届けることは可能ですわね。」
「おおお、半万年の感謝を」 カンコ君、今にもひざまづきそうです。
「ですが、条件があります。」
「ニダ?」
「見てのとおり、この船は大きいのです。 ですから掃除も大変。 というわけで、よろしくね。」 そして、むこうに
あったデッキブラシを指差すと、典雅な身のこなして席を立ち、船室に戻っていきました。
「どうして、四角いスペースを丸く掃除するんだ!」
「まだゴミが残っているぞ。 お前の目ン玉は節穴か?」
「遅い! 日が暮れてしまうぞ。 さっさとてきぱきする!」
「このあたりはフカが多いらしい。 おっと、お前さんを突き落とすことはしないさ。 でも事故で落ちたらしょうがない
なぁ。」
かくして、カンコ君は<クィーンエリザベスU>の清掃係として、船員に怒鳴られながら、広い広いデッキのあちらこちらを
走り回ることになりました。
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