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第14話
書き人知らず ◆PWTa2EFE
投稿日: 2004/08/12(木) 22:46
〜 PRIDE 〜 その1
「いい加減にしろよ! これはシューキューの試合だろ!」
もともと気が長くないウヨ君ですが、完全に頭にきています。
4年に一度のアジア町杯のシューキュー大会、今回はチューゴ家での開催なのですが・・・
「ニホンちゃんは前回の優勝者だもん、注目もされるわよ。 チューゴ君の家の人って、弱いほうを応援するのね。
それと、やっぱ反省足りないんじゃない?」
「ケッ、チューゴ家の人は弱いものを助けるって? そんな話聞いたことないぜ。」
アサヒちゃんの言い草には、呆れるほかありません。
一方で、前回優勝者として挑むニホンちゃん、デッキの中身はというと、
「ニホンはカードをまともにそろえていないアル。 まさに小ニホン、つまりは2軍。 可可可。」
と、チューゴ君が冷笑するようなレベルでした。
しかも厳しい日程と、中立の意味を知らない審判のおかげで、ニホンちゃんはかなりの苦戦を強いられていました。
「そうか・・・。 ポルとガルの姉妹に、マカロニーノ、フラメンコ先生もこうやって負けたのか。」
地球最後の日のように落ち込んで帰っていった姉妹。
伊達男の看板を粗大ゴミに出した色男。
激情家の本性を丸出しにした教師。
あの日あの時の4人の気持ちが、少しだけ分かった気がするウヨ君でした。
しかし、ただ手をこまねいているわけにはいきません。 姉思いのウヨ君はとうとう決心しました。
「姉さんだけにつらい思いはさせない。 決勝はオレもチューゴの家に乗り込んでやる。」
「気をつけてな。 コレをよく読んで、変なことするなよ。」
ニホンパパが渡してくれた紙には、こう書いてありました。
1.青い服は<ペキンの間>の中だけで着ること。
2.日の丸は隠しておくこと。
3.勝っても負けても挑発しないこと。
「なにこれ?」
いまから突撃! なのに、思いっきり出鼻をくじかれたウヨ君、恨めしそうにパパを見ます。
「約束を守れるな? 分かっていると思うが、今のあそこはとても危険だ。」
「分かったよ。」
かくしてウヨ君は、チューゴ家<ペキンの間>に乗り込むことになりました。 その後姿を見つめるニホンパパが
そっとつぶやきます。
「あの家にも困ったものだ。 ODA賃、やめようか・・・。」
〜 PRIDE 〜 その2
意気込みと鼻息を荒くして、<ペキンの間>に乗り込んだウヨ君ですが、のっけから熱烈歓迎を受けることに
なりました。
「君の席はあっち。」 係員が指差す方角は、場末の安い安い席です。
「なんでだよ。 オレちゃんとチケット持ってるぜ?」
「安全第一。 君のためアル。 嫌なら帰ってもいいアルが?」
そう言う係員の目はしつけの悪い犬を見るようでした。 一方で、チューゴ家の人々は見晴らしのいい席に続々と
入っていきます。
「ふん、これくらいなんだ。」
嗚呼、ツヨガリータの心意気。 この場はおとなしく、ウヨ君はあてがわれた席へと向かいました。
さて、いよいよ試合開始です。 ウヨ君も起立して胸に手を当て、さあ<君が代>の演奏、なのですがチューゴ家の
人は誰も席を立ちません。 代わりに多人数のブーイングの洗礼が待っていました。
「てめえら、そんなことしていいと思ってるのかよ?」
四面楚歌。
多勢に無勢。
ウヨ君の声量豊かな歌声も、かき消されてほとんど聞こえません。
アジア町杯シューキュー大会の決勝が始まりました。 お互いに慎重な出だしですが、ウヨ君の目には姉の動きが
いいとは思えません。 しかも、
「なんであれがファウルじゃないだ! おい審判、いくらもらった!?」
チューゴ家の人々の雰囲気に圧倒されたのでしょうか? 中立であるはずの審判は、かなりチューゴ君よりです。
さらに・・・
「よしチャンスだ、って、なんでオフサイド?」
不可解きわまるジャッジで、ニホンちゃんの攻撃チャンスは芽吹く前に摘み取られる始末でした。
なかなかシュートまで持っていけず、いらつくウヨ君。
そんなとき、ニホンちゃんが得意とする、<セットプレー>のチャンスを得ました。
「がんばれ姉さん、頼むぜ<シュンスケカード>。 よし! やった!」
この試合、初めてのチャンスをニホンちゃんがモノにし、1点先制です。
とはいえ、まだ時間はたっぷりあります。 チューゴ君はニホンちゃん防御陣の弱点、両サイドからの攻撃を開始。
しかもこれはチューゴ君の得意技なのです。
まずい、とウヨ君が腰を浮かせたそのとき、チューゴ君はシュートを宣言しました。
同点。 <ペキンの間>は、「加油! 加油!」の大合唱が始まりました。
〜 PRIDE 〜 その3
後半、一進一退の攻防のなかで、ニホンちゃんのチャンス<セットプレー>です。
ボールは抜群の精度を誇る<シュンスケカード>から、ゴール前の密集地帯を越え、<ナカタコカード>へ。
ウヨ君が最も期待した、この大会中のニホンちゃんが持つ最強の攻撃コンボが炸裂です。
「やったぜ! さすが<シュンスケ>、お前最高!」
2−1、ニホンちゃん再びリードを奪いました。
負けられないチューゴ君、攻撃は熾烈さを増してきます。 そのたびに、<ナカザワカード>がはじき返し、
危ないところを<ミヤモトカード>が抑えます。
そして守護神<カワグチカード>が、鉄壁の守りを見せ、チューゴ君の攻撃を止めていたのですが、
ちょっと開いたスペースをついてくるパス。 それをモノにしたチューゴ君のFW陣は、そのままゴールめがけて
突進してきます。
やられた、とウヨ君が思った瞬間、<カワグチカード>のディフェンス力が突如跳ね上がりました。
ノーゴール。
さらにもう一度、チューゴ君がシュートを宣言しましたが、<カワグチカード>の確変状態は続行中でした。
ノーゴール。
「すげえよ、<カワグチ>すげぇ・・・」 思わずへたり込んだウヨ君でしたが、<カワグチカード>は神々しくも
雄々しく、そして不敵に光り輝いていました。
「もう時間もない。 なんとか逃げ切ってくれ、姉さん。 こないだみたいなのはゴメンだぜ。」
そう思うウヨ君の眼の前に、鮮やかな攻撃が展開されました。
<シュンスケカード>が放つ、狙いすましたパス。 DF陣の間を切り裂きぽっかりと開いたスペースへと出された
それは、強力な攻撃コンボ<スルーパス>の発動です。
すり抜けるボールに追いつく、快速FW<タマダカード>。
必死で戻るチューゴ君のDF陣、しかしもう届きません。 <スルーパス>、成功です。
阻止せんと前へ出るGKを軽くいなして、高らかに宣言されたシュートは無人のゴールへ。
あれほど人がいたのに、がらんと静まり返った<ペキンの間>。 うなだれるチューゴ君は銀メダルをもらうと、
そそくさと帰ってしまいました。
「勝った、勝ったぞ! 俺たちは勝ったぞ!」
歌うは、アイーダの凱旋行進曲。 2年前の記憶は、いまなお鮮明にウヨ君の胸中にあります。
こぶしを突き上げ歓喜の雄たけびをあげるウヨ君に、ニホンちゃんは高らかに優勝カップを掲げて見せました。
「武士、意地を見せるって、こういうことよ!」
< おわり >
解説
書き人知らず ◆PWTa2EFE
投稿日: 2004/08/12(木) 22:49
やあっと書けました。
むろん、先日までのサッカーアジアカップです。
どこで終わりか分かるように、「おわり」の文字を入れておきます(自爆
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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