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第32話 雷峰伝 投稿日: 2005/06/12(日) 09:23
ニホンちゃんはマンガを描くのが得意です。
ニホンちゃんの描いたマンガはいつもクラス中で先を争って回し読みされます。

今日もニホンちゃんは完成したばかりの新作を持って登校してきました。
下駄箱の前で上履きに履き替えていると、チューゴ君が通りかかります。
「おはようチューゴ君、新作書いたから見せてあげようか」
「いや、いらないアル。ニホンのマンガは読まないアル」
「へえ、これはまたどうした風の吹きまわしだろ。マンガが回って来るのが待ちきれなくて、
職員室のコピー機を無断で使ってコピー本を作って廊下に立たされたどっかの誰かさんの
言うこととは思えないなぁ」
「うるさいアル。ニホンの考えに毒されないよう、中華マンションの子が読むマンガは朕が
描くことになったアル」
「え、それマジで」
びっくりするニホンちゃんですが、はげしく好奇心がうずきます。
「ねえねえ、どんな作品を描くの。教えて」
「ふむ、そんなに言うなら教えてやらないでもないアル。ちょうどネームが上がったところ
だから見てみるがいいアル」
チューゴ君は、尊大な態度でランドセルから描きかけの原稿を取り出して、ニホンちゃんに
渡します。

ニホンちゃんは興味深げに原稿を読みはじめましたが、やがてその表情は失望に変わります。
「何を描くかと思えば、これ昔ロシアノビッチが描いてた『スタハノフ物語』の丸パクリじゃない」
そう思ったけれど、さすがに口に出して言うとケンカになると思ってぐっと言葉を飲みこんだ
ニホンちゃん、
「あの、これさあ、雷峰という感心な少年がチューゴ家のために一生けんめい活躍して
みんなにほめられましたという話が延々と続いているだけで、ストーリーには全然起伏が
無いし、主人公が悩むところも無いし……」
「チューゴ家ではみんなが幸せに暮らしているから、登場人物に葛藤はないアル」
チューゴ君は開き直ります。

「まるでダメダメじゃない。ヤマも無いし、オチも無いし、意味も……。
ハッ、もしかして、こ、これは……」
ニホンちゃんは急に真剣な顔になってチューゴ君にたずねます。
「ねえ、ひとつ教えて。この雷峰って子、受けなの、それとも攻めなの」

解説 火病する名無しさん 投稿日: 2005/06/12(日) 09:50
>>766
本スレ補完スレ避難所から来た新参者です。つたない作品ですが性懲りも無く投下させていただきます。

元ネタはこちら、一応国産品保護が名目となっていますが、国民が日本に親しみを持たないようにという意図もあるのではないかと。
外国アニメ放映禁止へ 中国、国産品の振興狙う
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050610-00000026-kyodo-ent
>>768さん、>>769さん、感想多謝です。
あんまり解説が長くなるのもどうかと思って先ほどは省略しましたが、「スタハノフ物語」というのは
スターリン時代のソ連で「スタハノフという英雄的炭鉱労働者が、がんばって生産性を10倍にもした。
全人民はスタハノフを見習おう」というキャンペーンが行われたことをもとにしています。
中国でも文革時代にスタハノフ運動の中国版である「雷峰に学べ」運動が行われました。
それからチューゴ君の「登場人物に葛藤はない」というセリフは、「社会主義国では社会問題は解決
されているので、人間間の葛藤は存在しない。だから文学作品は、人間同士の葛藤ではなく、人間と
自然の闘いといったものをテーマとすべきだ」という、かつてのソ連で主張された「無葛藤理論」という
文学論のことです。こんな理論で文学が統制されたおかげで、ソ連の国家が認める文学は単なる
アジビラになってしまい、ロシアの文学的伝統はソルジェニーツィンら反体制派によって守られること
となったわけです。
蛇足スマソ

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