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第33話 766 投稿日: 2005/06/15(水) 22:43
ネズミさんの絵(1/2)

ニホンちゃんが低学年の頃のお話です。
その頃、クラスではアメリー君の描くマンガが大人気でした。
中でもネズミさんの絵は大変な人気で、みんなノートやTシャツにアメリー君にたのんで
ネズミさんの絵を描いてもらっていました。

「いいなあ。なんでアメリー君はあんなにマンガがじょうずなんだろう」
マンガが大好きなニホンちゃんですが、どうしてもアメリー君のようにはネズミさんを描く
ことができませんでした。
今日も学校から帰ってきて宿題のノートを広げましたが、マンガのことが気になって少しも
はかどりません。
「さくら、宿題は終ったの。終ったらおやつがあるわよ」
ママが子供部屋に入ってきました。
でもニホンちゃんのノートは真っ白です。

「さくら!またマンガのことを考えてボーッとしてたのね。そんなことでどうするの!」
ママはかんかんに怒りました。そして、ニホンちゃんのえり首をつかまえると、庭の隅の
物置まで引きずっていきました。
ガラガラ、ピッシャーン
ママはニホンちゃんを物置に放り込むと、扉を閉めて表から鍵をかけました。
「そこで反省してなさい」
そう言って、ママは行ってしまいました。
ネズミさんの絵(2/2)

「えーん、ごめんなさーい」
ニホンちゃんは、大声で泣き叫びますが、どこからも答はありません。
やがて泣き疲れたニホンちゃんが床に目を落とすと、そこには涙で小さな水たまりができて
いました。
ニホンちゃんは、なんとなく指の先をその水たまりにつけてみました。それから、その指を
床の上に這わせました。そこには丸がひとつ描かれていました。その丸に小さな丸をふたつ
つけて描くと、丸はネズミさんの顔になりました。

小一時間後、

「さっきは厳しすぎたかな。さて、少しは反省してるかしら」
ママが物置の扉を開けました。
「あらあら、寝ちゃってる。起きなさい。さくら……」
ママが視線を床に落とすと、ママの目に飛び込んできたのは何十匹ものネズミ。
「!!」
叫び声を必死でこらえたママがよく見ると、それはニホンちゃんが涙で描いたネズミでした。
ネズミたちは、まるで今にも走り出しそうに生き生きと描かれていました。
「どのネズミも今にも動き出しそう。どれも耳をくっつけたら血が流れる音がしそうな気持ち
にさせるほど。さくら、……恐ろしい子」
ママはつぶやきました。

その後、ニホンちゃんはどんどん絵もストーリーも上達して、やがて、作品をアメリー君に
パクられるという事件がおきるほどになりましたが、その話はまたの機会にいたしましょう。
本日のところはこれまで。
雪舟かい(w

>さくら、……恐ろしい子

ママは白目を剥いてるんでつね!

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