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第22話
青風
投稿日: 2006/06/19 19:19:00
『絆と誇り』
お父さんが亡くなった翌日から、その兄弟はずっと喧嘩ばかり。
そのあまりのすさまじさに、見かねた親戚が兄弟をひとり、
また一人と引き取って、最後には仲の悪い兄弟達はみんな、
たった二人を残して別の家の子供になってしまいました。
その引き取られたお家の子の一人、クロアッチ君も今日の
シューキュー大会には参加しています。
だって、かつて兄弟だったセルビー君とモンテネグロ君ペアも出場して
いるのです。負けるわけにはいきません。
そして、試合前。
クロアッチ君は素晴らしいニュースを聞きました。
セルビー君とモンテネグロ君チームの予選落ちが決まったのです。
「ざまあみろ」
クロアッチ君は心の底から、彼らの敗北を喜びました。
これで、ブラジー君に負けて落ち込んでいた気分も吹き飛びました。
「さあ、あとはニホンに勝てば良いだけだ」
もう彼の頭の中では、二人がクロアッチ君の勝利を聞いて
足を踏みならして悔しがる姿がありありと浮かんでいます。
クロアッチ君は勝利を確信し、にやりと笑いました。
そして、試合は始まりました。
いざ戦ってみると、意外なことにクロアッチ君は気がつきました。
彼のカードがいくら威力の高い攻撃を繰り出しても、ニホンちゃんの
カードに当たらないのです。
一度や二度なら良いのですが、それが三度、四度と続くうち、
ようやくそれが偶然や幸運の結果ではないことに、彼は気がつきました。
「畜生、思っていたより手強いんじゃないか」
そのうち、ニホンちゃんの攻撃ターンになります。
自分よりは弱いハズのニホンちゃんに、クリティカルヒットを
くらいそこね、そのたびに冷や汗をかきます。
何度も、何度も、何度も。
「一体どうしたわけなんだ、これは?」
そう思い、ふと相手のニホンちゃんの方に目をやりました。
そこに居たのは、うだるような熱気に時々気が遠くなりそうになりながら、
必死に勝負を続ける、一人の少女でした。
「本気なんだ、あいつ。あいつも本気で勝ちたいんだ」
ニホンちゃんも本気。
クロアッチ君はそんな簡単な事実に改めて気がつき、呆然とし、
それから慌てて自分のカードを、今度は掛け値無しの本気で切り直しました。
結局、勝負は最後まで付かず、引き分けのまま終わりました。
「どうせ、アイツらは僕が勝てなかったことを喜ぶんだろう?」
そう思っていたクロアッチ君の予想を裏切り、
セルビー君とモンテネグロ君はちょっと寂しそうでした。
それからすぐ、クロアッチ君は、モンテネグロ君も親戚の家へ引き取られる
事を聞きました。
彼があんなに嫌いだった家庭は、もうすぐ本当に消えてしまうのです。
クロアッチ君は、なんだか何処かでひどい間違いをしてしまった
ような気がして仕方ありませんでした。
解説
青風
投稿日: 2006/06/19 19:26:00
【やや投げやりな解説】
勝てなかったですねー、ニホンちゃん。
と、言うわけで急遽、モンテネグロのセルビア・モンテネグロ
(旧名 ユーゴスラビア)からの独立をもって
遂に跡形もなく消えてしまう、旧ユーゴスラビアについて、
同じく旧ユーゴだったクロアチア視点で話にしてみました。
死んじゃったお父さんはチトー大統領をイメージしてます。
国家って、日本人が思っているより儚い存在ですね。
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