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第59話
青風
投稿日: 2006/11/01 03:32:00
『悪戯かお菓子を』
トリック オア トリート、トリック オア トリート!
奇怪な一団が夜を行きます。
トリック オア トリート!
小さなオバケ達は容赦がありません。
町中の家を廻ってドアを叩き、出てきた大人に決めゼリフ。
『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!』
この日、子供だけに赦された脅しの言葉。
脅かされた方の大人達は、「こりゃ大変だ」とにこにこ呟き、
小さな袋を取り出して、妖怪どもに配ります。
トリック オア トリート、トリック オア トリート。
小さな妖怪達が夜を行きます。
さて、その小さなオバケ達。今は墓地の側で会議中。
今日の成果はまずまずだ。
オバケ達は満足げ。
そのうちに、血まみれの白装束を来たオリエンタルな妖怪が一人、
頭に被った蝋燭付きの鉄環を外して言いました。
「あはは。これ、やってみると面白いねえ」
ユーロ地区で恒例のお祭りに初めて参加したニホンちゃんです。
彼女のうちにも似たようなお祭りの行事がないでもありませんが、
やっぱり、普段やらないことが出来るのは刺激的。
『……お気に召したようで、何よりですわ』
くぐもった声に、ひぃっと悲鳴を上げて振り向くと、
そこには、血まみれのドレスに紙袋を被り、血糊でべったりななたを持った
怪人が一人、こちらをじっと見つめてたたずんでいました。
「…なんだ、エリーちゃんか」
紙袋を取って微笑むエリザベスちゃんの姿に、ほっとするニホンちゃんです。
それにしても――墓場の中は、凄まじい。
まるで、本当に地獄の門が開いたかのよう。
あそこに見える、チャイニーズチックな衣装の額にお札を貼った、
彼は多分チュウゴ君でしょうか? 真っ青な顔が恐怖を誘います。
古風な魔女のスタイルのアイルちゃんに、お姫様ルックのケベックちゃん。
その隣にひっそりと佇む首無し男は、カナディアン君かも知れません。
バンパイアの紛争で張り切るネーデル君は、どういう訳か普段着で参加の
ルーマちゃんに迫力で負けています。
『おやつをよこせ! で、なきゃ悪さをしてやるぞ!』
突然、大きな声が響きます。
学校には来ないくせに、何故か参加していたキッチョム君です。
変ですね。彼もちゃんと、おやつを貰っているはず――無い!
「YOお前、後でのこのこやってきて、おやつだけ貰おうなんて
わがままが、通るわけ無ェZE!」
顔面の半分が機械で出来た、えらくサイバーな妖怪に扮した
アメリー君が怒ります。
ああ、キッチョム君。どうやら、墓場でみんなのおやつを戴く
魂胆の様ですね。これはいけません。
「うるさいニダ! よこさなければ、こうニダ!」
キッチョム君は、手元の花火に火を付けて当りにばらまきました。
ひゅるるるる、しゅぱん、しゅぱん、ぱぁああん
当りに響く、炸裂音。
どうやら、いくつかは湿気て爆発しなかったようですが、
それでも充分大騒ぎ。
「てめぇ、脅かすんじゃねぇ! 酔いが醒めるだろうが、ひっく」
真っ赤に顔を塗りたくった、いやウオトカの飲み過ぎで真っ赤になった
ロシアノビッチ君が怒鳴ります。
「これだけじゃないニダ!」
キッチョム君は、今度は大きな火薬玉を取り出しました。
「いい加減にするアル! シャレじゃすまないアルよ!」
チュウゴ君の制止も虚しく、キッチョム君は導火線に点火しました。
『ぎゃああ、やばい!』
誰もが思った瞬間。
しゅぽん
想像したよりもはるかに景気の悪い音がして、
当りの雰囲気を一気に冷やしました。
「あ〜〜、もう帰ろう、帰ろう」
誰言うとも無しに、妖怪達の集会はお開きになり、
みんなお家へ帰りましたとさ。
解説
青風
投稿日: 2006/11/01 03:34:00
解説とか。
要するに、絵師さん達がおえびで開催したハロウィーン祭りに
便乗したわけですが、とりあえず元ネタも付けてみましょう。
ハロウィーン ハリー・ポッターも一役?日本各地で広がる
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061028-00000011-maip-soci
日本だけでなく、グローバリズムの展開と共に米国スタイルの
ハロウィーンが各国に広まりつつある。
そして、後段は北朝鮮のミサイル発射から核実験に至る騒動を
取りあえずネタにしてみました。
(投げやりですが、この辺りを参考にどうぞ)
http://www.asahi.com/special/nuclear/TKY200610310533.html
『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』
って言っても、悪戯先にしちゃ駄目ですよね。
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