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第66話 青風 投稿日: 2006/12/19 02:48:00
『暑い、ただひたすらに』

 滝のようにしたたる汗。
 温度計の水銀柱が35度を超えてなお、ガンガン焚かれたストーブはその役目を終えようとはしていません。
「おーお暑い。こんな部屋でそんな格好。お前らよく頑張るねえ。
 ――どうだ、ここいらでひとつ冷たいドリンクでも?」
 見せびらかすように氷の入ったドリンクのグラスを軽く揺らし、
涼しい音をさせてからロシアノビッチ君は大きく喉を鳴らして一気に空にしました。
「ぷっはぁ。
 ガンガンに暖房が効いた部屋で飲む冷たいドリンクは最高!
 ウォトカ入りなのが俺的にはオススメ。
 なぁ、もうあんまり頑張るなや。ニホンよぉ?」
「ふん。そんなモノ、ちっとも欲しくないよう、だ」
 寒さを吹き飛ばせとばかりに唐突に始まった
この「男女対抗暑さ我慢大会」。
 選手挫折誘導係の役割も見事に果たし損なったロシアノビッチ君は、へらへら笑いながら首をすくめ、また冷たいウォトカ入りドリンクのグラスをあおりました。

 それにしても、今日のニホンちゃんはがんばります。
 アーリアちゃんは元よりエリザベスちゃんやフランソワーズちゃんのやや真剣さに欠けるかも知れない声援も耳に届いているやらいないやら。
 着込むだけ着込んだスウェットの上下にセーター、オーバー、コート。毛布と布団にどてらとマフラー。ついでに毛糸の帽子まで被るありさまで、体感温度はおそらく40度を軽く超えていそうな勢いですが、その目に灯る炎の熱さはそれを凌いでなお、あまりがあります。
 まぁ、今日ばかりはそれも無理はありません。
 なぜなら、男子代表があの「キッチョム君」なのですから。

 学校にはろくに来ないくせに、ニホンちゃんへの嫌がらせだけはまめにするキッチョム君は、一方で立派な健康不良児でもあります。
 これに勝ったら腹一杯食べられる。みんなにだって尊敬される。
 そんな甘い言葉に乗って我慢大会にやってきたキッチョム君をへろへろにしてあげようと言うニホンちゃんのこれは高等戦術なのです。

 その高等戦術もなぜか思ったほど効果が上がりません。
「おかしいZE。
 どうしてキッチョムの奴、ギブアップしないんだYO?」
 ストーブ担当のアメリー君が、更に温度を上げようとしますが既に限度近くまで動いているストーブをこれ以上酷使するのは難しそうです。
 キッチョム君なら脱水症状で簡単に倒れるはずだという大方の予想は、今くつがえされつつあります。

 原因はすぐに明らかになりました。
「ニホンよ。何故、朕をそんな目で睨むアル?」
 薄笑いを浮かべつつ、チュウゴ君はキッチョム君の口にチューブをくわえさせていました。チューブの先には……三○サ○ダーのペットボトル(大)。
「ああ、それ私が飲もうと思って取っておいた奴!」
 ニホンちゃんの抗議の声もどこ吹く風。
 ちびり、またちびりととっておきの甘露が瀕死のキッチョム君の喉を僅かに潤します。これでは、なかなか堪えないのも当然です。
「あ〜ずるい。ずるいったらずるい!」
 あんたも何かしなさいよ、とニホンちゃんはアメリー君を睨みました。
「OK、OK。これで良いかYO?」
 申し訳程度にうちわでニホンちゃんの顔をあおぐアメリー君。
「あ、ありがとうアメリー君。だいぶ楽になった」
 口ではそう言いながら「イマイチ頼りにならない人だよね」と心で罵るニホンちゃんでした。

おわり

解説 青風 投稿日: 2006/12/19 02:53:00
ネタらしきモノ
ええ、六カ国協議もまた始まりましたねえ。
やや煮え切らない我慢大会の体が有りますが、それもそのはず。
某将軍が軍部掌握に使う贅沢品の類は中国経由で入ります。
日本がいくら頑張っているつもりも、効果はイマイチなんですねえ。
アメリカの制裁措置も、今のところ決め手に欠いてます。
(本気でやるとキッチョム君死んぢゃうし)
でも、日本としても降りるわけにはいきません。
と、言う訳で。
グダグダ感のある我慢大会は続く。

北エリートへのぜいたく品供与 大幅削減は中国の協力不可欠
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/061204/usa061204000.htm

一応、EUも制裁決議はしているらしい。
【核開発】EU、北朝鮮制裁案を正式に採択
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/21/20061121000010.html

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