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第1192話 あすいうん(初投稿) 投稿日: 02/08/25 01:23 ID:MHZEJFru
<ドキュメント 不買運動対サイバーテロ>

「カンコに物申す!」
ある日のニホン家。突然、ウヨ君の叫び声がしました。
「……武士?」
ニホンちゃんが慌てて様子を見にきましたが、ウヨ君は気づいた風もなく、天井に向かって演説を続けています。
「シューキュー大会での誤折檻!
 歴史歪曲無用との叱り!
 また、竹島パンツと日本池を召し上げ、独島と東池にせよとの冷たき沙汰!
 いやまた、事あるごとに、気の弱い姉に謝罪と賠償をたかられた仕打ち!
 など、語り尽くせぬ恨みあれども、此度の運動、決して、私心にあらず!
 地球町のため、カンコの首を取ることこそ、天の道!」
「……武士!?」
ポカーンと見つめるニホンちゃんを尻目に、ウヨ君は自分の部屋へ駆け戻って行きました。

ウヨ君はパソコンに向かい、キーボードを叩いています。
独り言も相変わらず続いています。
「カンコの首だ! 首を取れ、逝け、首だ首だ、晒すのだ、カンコを晒せ!
 幼き頃より尊敬いたした、ニッテイ祖父の守り神、天照大神に誓った。
 二度とカンコを責めぬと心に決めたが、もう我慢ならん、わが命に代えて、許して頂きたい!
 地球町のため、諸刃の剣を抜く!」
ウヨ君は、ウェブサイトを作っていました。
タイトルページにはでっかく、
「カンコ家から物を買わないようにしよう!」
と書いてあります。
そこには、カンコ家の悪事を糾弾する数々の資料が集められていました。
シューキュー大会での、イカサマ疑惑や対戦相手への誹謗中傷の数々。
ニホン家に対する、これまでのさまざまな理不尽な要求と非難。
カンコ君が、ニホンちゃんや他の女の子のスカートをめくっている証拠写真。
「スカートめくりの証拠写真など、どうやって入手したのか」という疑問はさておき、ウヨ君が「もう我慢ならん、カンコの首を取る!」といっていたのは、このことだったのです。
「これ以上カンコになめられるがままになっていたら、我が家はおしまいだ。
 こちらから声を大にして、カンコこそ間違っていることを主張しなければ!」
ウヨ君は夜遅くまでかかってサイトを完成させ、アップロードしました。
翌朝。
ウヨ君は眠い目をこすりながら、サイトの掲示板をチェックしていました。
「……な、何だこりゃあ?」
掲示板は、汚い罵倒と非難の言葉で埋め尽くされていました。
『ニッテイはひどいことばかりしたのにこのサイトは事実捏造してるニダ!』
『ジォックバリ反省足りないニダこんなくそサイトつぶしてやるニダ!』
『fucking jab ミチンノムニダhahaha!!』
「くそう、カンコ家のやつらの仕業か。いつの間に気がついたのやら……。まあいい、これこそ動かぬ証拠だ。まったく、自分たちはこっちの悪口言い放題の癖して……」
ウヨ君のサイトのトップページに、「速報・カンコ一族によるサイバーテロ発生中!」という注意書きと、「馬鹿な真似は止めろ、町内の評判を落とすだけだぞ!」という警告文が付け加えられました。

その頃のカンコ君。
「ニダアアアアアアアッ!! 歪曲ニダ捏造ニダニホンは謝罪しる反省しる賠償しるうう!
 ていうか、こんな外道サイト、なんとしてもつぶさなきゃ気がすまないニダあっ!!」
猛然とキーボードに向かうその顔はキムチ色に染まり、頭からは湯気まで立っています。
「チョッパリ、ウェノム、ケエセッキ、シパル、チェッブ、ポッキン、エスホル、ええそれからパガパガパガ……」
カンコ君、こういう語彙は実に豊富です。
もう御昼過ぎだというのに、カンコ君はまだディスプレイに張り付いています。
「『馬鹿な真似は止めろ』!? パガはおまえニダハハハ!! ……ハハハ」
でも、恨(ハン)エネルギーもさすがに切れてきて、少々お疲れ気味です。
「……!」
と、ウリナラマンセー脳が何か思いついたようです。
「これでサーバーダウンに追い込んでやるニダア! ハハハ!」

「……」
ウヨ君が、ディスプレイの前で絶句しています。
『uriuriuriuriuriuriuriuriuriuri……』
掲示板が、わけのわからない無意味な文字の羅列で埋め尽くされています。不気味です。重くて重くてかないません。
「せめて意味のある発言なら、こっちも返事のしようもあるのだが……。しかしわざわざ警告まで出してやったのに、馬鹿としか言いようがないな……」
ウヨ君にできたのは、ログを保存して、この醜態を町中に晒すことだけでした。
『uriuriuriuriuriuriuriuriuriuri……』
『uriuriuriuriuriuriuriuriuriuri……』
夕べとなり、また朝となりました。
空虚な荒らし行為は、結局夜を徹して続きました。
連日の夜更かしに精神的荒廃も加わって、ウヨ君は疲労困憊のていです。
「武士……どうしちゃったの? 昨晩もほとんど寝てないみたいだし、おとといも……」
「姉さん。実はね……かくかくしかじか」
ウヨ君はこれまでのいきさつをニホンちゃんに話しました。
「バカンコの奴がまたやったの!?」
「懲りないな。ユーロ中町の連中には私から伝えておく。私たちはニホン家の味方だ。」
一緒にいたタイワンちゃんとアーリアちゃんが、口々に言ってくれました。

そこへやってきた、飛んで灯に入るカンコ君。
極度の興奮状態と徹夜、そしてかのサイバー攻撃に対する妙な達成感のおかげで、怪しいテンションの高さも当社比2.25倍です。
「ちょっとバカンコ! あんたウヨ君の掲示板荒らしたんだって?」
「ホー? 何のことニダ? ウリナラマンセー! デーハンミングク!」
「とぼけようとしても無駄だぞ。前科もあるしな、スパムメール送ったり、リロードでサーバーをつぶそうとしたり……。ウヨは証拠もあるといっているが?」
「なっ……!? そ、そうニダ! これはウヨの陰謀ニダ、ウリを陥れるための自作自演ニダ! ウヨとニホンは謝罪とば……」
「黙れ!」
一喝とともに、動かぬ証拠「過去ログ」がカンコ君の鼻先に突きつけられました。
「IPから何から丸わかりだったからな。どう見ても犯人はお前だ!」
勝ち誇るウヨ君。
冷たい視線が、氷刃のごとくカンコ君に突き刺さります。
「アイゴーーーーーーーーーーッ!」
<追伸>
「まあカンコ家の人間がみなアレなわけでもないし、ああいう行動が自分の同胞に恥を晒していることがわからないのかな……」
そういいつつ、サイトをチェックしたウヨ君は愕然としました。
親類のチューボー君やドキュソちゃんたちが掲示板に来て、カンコ家に対してお下劣な罵倒や低レベルな非難を繰り広げていたのです。
(……これじゃ同じ穴の狢だよ!)
ウヨ君は頭を抱えてしまいました。
「いずこも同じ、秋の夕暮れ」(←時期はずれ)

なにやら新人フェア開催中?のようなので、参加させていただきました。
国際関係から萌えまでという懐の深い、大きな魅力のある世界に参加できたことを光栄に思います。
元ネタは、韓国製品不買運動ページと、同ページに対する韓国からの攻撃。
http://ex.2ch.net/test/read.cgi/korea/1029984615/l50
サイバーテロネタは過去にもあったようですが、私自身あの現場に居合わせ、英語で書き込みなどしたこともあり、初投稿の題材に選ばせて頂きました。
大体事実の経過をもとに書いたつもりです。アーリアちゃんの最初のセリフは、実際にそういう趣旨の発言がドイツ語(!)でなされていたようなので。
お話では割愛していますが、荒らしのさなか、一人の良識的「韓国人中学生」が現れ、意思疎通を試みていた(そして心ある日本人も答えようとしていた。ログを流されうまくいかなかったが)ことを、韓国の名誉のためにも特筆したいと思います。
最後に、長文失礼いたしました。

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