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第1237話
初心者
投稿日: 02/09/29 02:17 ID:NeywEQZ1
「さくら、何読んでるんだ?」
「あ、ごめんなさい。私、お祖父さんのこと、もっと知りたくて…」
いつも、カンコ君とアサヒちゃんにお祖父さんの悪口を言われているニホンちゃんは、
今日も、カンコ君とアサヒちゃんにニッテイ祖父さんが、なにかある度に、子供に
ケンカをしろという文章を読ませたり聞かせたりしていたと言うので、それで、お父さん
の書斎の本を読んで調べていたのでした。で、それらしき文章を見つけたのですが、
昔の言葉で書かれているので、なんだかよく意味がわかりません。
「いいんだよ。本を読んで、勉強することはいいことだ。今、さくらが見つけたの
はキョーイクチョクゴていって、お父さんも覚えさせられたし、今も忘れられないよ。」
「覚えさせられたって、やっぱり、お父さんもいやだったの? やっぱり、カンコ君
とかアサヒ君の言うとおり、ケンカしろとかひどいことを言わされてたの?」
ニホンちゃんは少し涙目です。
「いや、そんなことないよ。覚えるのはたしかに面倒だったし先生にも怒られたけどね。」
ちょっぴり苦笑いをしたお父さんは、なぜか、いつのまにか少し涙目です。
お父さんは、淀みなく、それを暗誦し始めました。
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣
民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ
精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和
シ朋友相信シ恭儉己ヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓
発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ
いつしか、お父さんの涙は瞼をあふれ頬を濡らしていました。
始めはすらすらと暗誦していたお父さんでしたが、声ももう涙声で途切れ途切れです。
一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕
ガ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古
今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳拳服膺シテ咸其
徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
「意味はね。」 お父さんは、一つ一つ優しく諭すようにニホンちゃんに話します。
私たちが、今こうして幸せに生きていられるのは、ご先祖様のおかげなんだということ。
今の幸せを私たちの子孫に伝えていくために、ご先祖様の立派な教えを受け継いでいかなくてはいけないこと。
そして、それを受け継いでいくことは、私たちの最も優れた点であり、またあり続けるようににすること。
具体的には、お父さん、お母さんを大切にすること。兄弟は仲良くすること。夫婦は仲むつましくすること。友達同士信頼しあうこと。
礼儀を守り、自らは身を慎み、人には博愛の心をもって親切にすること。勉強して、仕事を身につけ、さらに知識をひろめ、
才能を磨き、立派な人になって、自分からみんなの為のことを考えて社会のためになり、みなで決めた約束事はきちんと守ること。
もし、家族になにかあったときは、正義を守って、家族のために自分のことを投げ出してでも、家族を守っていかなくてはいけないこと。
それは、単に、家族のためだけでなく、ご先祖様の残してくれたことを、私たちの子孫に伝えることにもなるということ。
この教えを守ることは、まさにご先祖様から残されたものだけれども、これからもずっと伝えていかなくていけないということ。
そして、この考え方は、私たちでなく、どこの家族にあっても通用するものであること。
私は、この考え方を、家族と一緒に、自分自身によく言い聞かせて、その教えを守り、家族と一緒に立派な人間になりたいということ。
「カンコ君やアサヒちゃんは、ニッテイ祖父さんのことが嫌いだから、ニッテイ祖父さんの言うことはなんでも
反対なのかもしれない。でも、ニッテイ祖父さんの教えは、今聞いてもわかるとおり、いつの時代も、世界の
どこでも通用する立派な考え方だ。別に、この文章を暗誦する必要なんてないけれども、この教えの内容は、」
「さくら… 必ず守るようにしないと。」
「わかったわ。さくら、約束する。」
ニホンちゃんは、力強く、誓ったのでした。
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