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第1256話 黒瓶 投稿日: 02/10/23 12:52 ID:ftctnSAO
ニホンパパの苦悩

ある日の夜のことです。
ニホンちゃんは早寝早起き。もうベッドに入ってます。
だけどなかなか眠れません。
ニホンちゃんは、最近パパが少しいらいらしているのが気になって
しょうがないのです。
パパの会社が大変なことになっているというのは何となくわかっていました。
(どうしたらいつものパパに戻ってくれるのかなぁ・・・)
いろいろ考えてると、なんだか喉が乾いてきました。
ニホンちゃん、水を飲もうと部屋を出て静かに階段をおります。
ふと、リビングのドアが少しあいてて、話し声が聞こえてくるのに気づきます。
何となく中を覗くと、パパとシシローおじさんが何やら話しあってました。
二人は難しい顔をしてます。
その厳しい雰囲気に、ニホンちゃんは息をのんで固まってしまいます。
「・・・経理のことは全てタケナカ君に任せているが、基本的な方針は
 間違ってないと思います」
シシローおじさんの声は低く小さいので耳をすまさないと聞こえません。
「会社の借金が経営を圧迫しているのはわかるが、ここまで売り上げが
 落ちているのは非常事態だ」
パパの声は、ニホンちゃんが初めて聞くほどの厳しさを伴ってます。
パパは続けます。
「こんな時に売り上げが落ちている部門をきるなんてことしたら我が社は
 倒産してしまうかもしれない」
倒産という言葉にニホンちゃん少し驚きます。そんなに悪い状態だとは
思ってなかったのです。
「もちろんそうならないように大胆かつ柔軟な対応は必要でしょう」
シシローおじさんは表情ひとつ変えずに話を続けます。
「しかし借金の元になっている部門をきらずして借金が減ることは
 ありません。またそうすることで売り上げが多い業種へ資金や人手が
 まわります。そうやって借金がなくなれば我がグループの信用も上がり、
 売り上げも回復するはずです」
「しかしそれは社員をリストラすることでもある」
「多少の痛みなくして改革はありえません。痛みが大きくならないように
 方策の検討もしています」
「シシロー君のいうことはわかる。が、こうは考えられないだろうか。
 君は今借金が減れば売り上げは上がるといったが、売り上げが減った
 ために借金が増えているんじゃないか?そう考えると先に売り上げを
 上げ、それから借金をかえすというのが筋だと思うが」
「ジミンさん、あなたはそういって解決を先延ばしにしてきたじゃない
 ですか。確かに今は借金の処理ができるような状況ではありません。
 アメリー家はじめ町全体の売り上げも下がってます。しかしこれが
 最後のチャンスなんです。今やらなければどのみち我が社は倒産する
 しかないんですよ」
「・・・しかし、タケナカ君は不用意な発言が多すぎるんじゃないか。
 彼の発言のせいで 我が社の信用が落ちている」
「今後慎むように注意しておきます。あと農林水産担当のオオシマさんの件も
 調査するようにいってあります」
(オオシマさん・・・?)
ニホンちゃんはタケナカさんのことは何となく知っていましたが、オオシマ
さんというのはあまり聞いたことがありません。
「さくら、何してるの?」
振り返るとそこにはビールとおつまみを用意してきたママが立っていました。
その声でもちろんパパもニホンちゃんに気づきます。
ママがドアをあけるとパパは少し怖い顔で立ち上がり、
「さくら、こんな時間に起きてちゃダメじゃないか。早く寝なさい!」
思いがけないパパの厳しい声にニホンちゃん
「ご、ごめんなさいっ」
といって頭を下げると、シシローおじさんに挨拶するのも忘れて
走って部屋に戻っていきました。
その後ろ姿を見ながら部屋に入るニホンママ。
机にコップとおつまみを置いていきます。
「・・・あなたそんなきつい言い方しなくても・・・」
と、二人にビールを注ぎながらパパをたしなめます。
「そ、そんなにきつかったかな?」
ママ、ため息をつきます。
シシローおじさんは表情を変えずに、ドアの方からニホンパパに目をむけると
「・・・娘さんが大人になった時、つらい思いをするかもしれないんですよ?」
その言葉に、パパは無言でビールを飲み干します。
苦い顔でニホンちゃんがいたドアの方を見つめます。
一方、ニホンちゃんはベッドにもぐりこんで考えこんでいました。
(うちの会社、そんなに大変なことになってたんだ・・・)
ニホンちゃんは、パパが本気で怒ってないことはわかってました。
それよりも自分がパパのことを何にもわかってないことを知って、少し悲しい
気持ちになっていたのです。
(何か私にできることはないかな・・・)
いろいろ考えていたのですが、やっぱり成長期。しばらくするとすーすーと
かわいい寝息をたてはじめました・・・。
翌朝。
「・・・おはよう」
ニホンパパが寝ぐせのまま食卓につきます。
「・・・さくらと武士は?」
台所で食器を洗っているママが答えます。
「もう出ちゃいましたよ」
ニホンパパはあの後もキッチョム家のことなど夜遅くまでシシローおじさんと
話していたので、今日は遅めの出勤です。
「そうか・・・・・・ああ、お茶だけくれんか」
「あら、ご飯は?」
「ああ、今日はいい」
「だめよ、朝はちゃんと食べなきゃ」
「・・・食欲がないんだ」
と新聞をひろげるニホンパパ。ママ、ちょっと肩をすくめます。
と、机の上に『パパへ さくらより』と書いてある封筒を見つけます。
「何だこれ?」
「・・・ああ、さくらがパパに渡してくれって。何が入ってるの?」
エプロンで手を拭きながら、パタパタとママも食卓にやってきます。
かわいいイラストつきの封筒をあけると、中には2つの小さなメダルが
入っていました。
それはノーベル君の家から、町の平和と発展のためにがんばった人に送られる
メダルでした。ニホンちゃんは今回2つももらうことができたのです。
便せんも入ってました。それには
『さくらもがんばるから、パパもがんばってね』と書いてあります。
下の方にはガッツポーズしているニホンちゃん自身のイラストがあります。
思わず笑みがこぼれるパパとママ。
ママはいたずらっぽく笑いながら
「・・・がんばんなきゃ、ね」
パパはメダルと便せんを封筒に戻し、それを仕事のカバンのなかに入れます。
「・・・あ、・・・やっぱりご飯食べてくよ」
「はいはい」
そう言うのをわかってたかのように台所に戻るママ。おみそ汁のはいった鍋を
火をかけます。
「・・・がんばんなきゃ、な・・・」
パパもそうつぶやき、いつもの優しい笑みを浮かべながら新聞をひろげます。
いつもと同じ、いつもとちょっと違う日之本家の朝です・・・。
「タイワンちゃんっ、おっはよおーっ!」
「あ、おはよーっ!ニホンちゃん」
すがすがしい、よく晴れた朝です。
ニホンちゃんとタイワンちゃん、いつもと変わらず楽しそうにおしゃべり
しながら学校へ向かいます。
「姉さん今日妙にテンションたかいな・・・」
二人の後ろでウヨ君がつぶやきます。
(・・・私にできること。それは、たいしたことじゃないかもしれないけど、
 私自身が元気に、がんばってやっていくこと。
 そうすればパパもきっと元気になるし、パパの会社もうまくいくはず。
 うん、きっとそう・・・)
いつものとびきりの笑顔で笑う、ニホンちゃんでした。


糸冬

解説 黒瓶 投稿日: 02/10/23 12:59 ID:ftctnSAO
ギャグなしですいません。
ニホンパパの会社→日本経済
会社の借金→不良債権
部門→企業
痛みが大きくならないような方策→セーフティネット
売り上げ→景気
会社の信用→日本株
倒産→破綻かな?
ノーベル賞はオチがないんで書いただけで深い意味ないです。
まあ、技術系のサラリーマンには多少勇気づけたかな、くらいで。
オオシマさんは他の大きな話題の陰に隠れて助かってるなと。
同じく深い意味なしです。
パパ×シシローおじさんの会話はあまり深くつっこまないでくださいまし・・・
フィーリングっつうことで(苦笑
どっちかつうと萌えメインで・・・w。親思いのニホンちゃん萌え。

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