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第1293話 黒瓶 ◆L3dPScc3M2 投稿日: 02/11/19 14:22 ID:cLBJSaOX
名称問題2(前編)

地球組のみんながチリ君家に集まっています。ここである会議が開かれるのです。
それぞれのお家にいる放し飼いの動物に対して、家どうしでちゃんといろんな
約束事をつくって、それを守ろうという会議です。
その約束事はワシントンの約束事と呼ばれています。
初めて主要キャラとなるチリ君は張り切ってるはず・・・
・・・ですが、何か元気ありません。
もちろんこの会議に出席してるニホンちゃん、心配してチリ君に声をかけます。
「大丈夫?顔色悪いよ」
するとチリ君、驚いたようにニホンちゃんを見て、目をそらしながら言います。
「あ、・・・いや、だ、大丈夫だよ。は、はは・・・・・・」
といって忙しそうに去っていくチリ君。
(・・・お招きする方も大変だもんねえ・・・)
とニホンちゃん、気にもとめずにいました。
しばらくして会議が始まりました。
地球組のほとんどが集まっています。ただしタイワンちゃんはいろいろあって
参加していません。
司会をつとめるチリ君、ぎこちないながらも開会の挨拶をします。
「え、えーとじゃあ、最初は、ニホンちゃんが意見したいというのでニホンちゃん、
 お願いします」
「あ、はい。えーと、今日は、私ん家の横にあるニホン池にいるクジラに・・・」
「ちょっと待ったニダアァッ!!」
いきなりの大声の主は、そう、カンコ君です。
カンコ君、いつもと違う不敵な笑みを浮かべています。
「え?え、・・・どうしたの?カンコ君」
「みんな、今ニホンが言ったニホン池というのは間違いニダ!あの池はウリの家では
 昔から東池と呼んでるニダッ!!」
「・・・・・・はあぁぁ・・・・・・」
ニホンちゃん、大きなため息をつきます。
「カンコ君、この池の名前はこの間学校で地図をつくるときに『ニホン池』にしよう
 ってみんなで決めたじゃない」
「何言ってるニダ!あの池はニッテイがウリの家を別荘代わりに使ってた時に町に
 広がった名前ニダ!ニホンはニッテイがやったことをまだ反省してないニダか!?」
「ニッテイお祖父さんは関係ないでしょ?」
と、ここでチリ君、司会らしく話をまとめようとします。
「まあまあ、二人とも落ち着いてください。・・・えっと、このニホン池の呼び名に
 関して他に何か意見のある方はいますか?」
この言葉にニホンちゃん、部屋のみんなを見渡します。みんな何か反論してくれると
思ってたのですが、誰も挙手しません。
(え?・・・なんで・・・・・・?)
ニホンちゃんが戸惑っていると、静かにアメリー君が手を挙げます。
「この話は本来の議題から外れてると思います」
至極まっとうな意見にニホンちゃん、少しほっとしたのも束の間、
「・・・この件に関しては少し休憩をとって、みんなそれぞれの考えをまとめて
 それから多数決をとるのがいいと思いますが、どうでしょう?」
(・・・え?!)
「賛成ですわ」
「異論はない」
「問題ねえな・・・ぅぃっく」
みんな次々と賛成します。
で、司会のチリ君、
「ニホンちゃん、こういうことなんだけど、異論はない?」
「・・・え?あ、・・・うん。別に私は・・・」
「じゃあそうゆうことで、始まったばかりだけど少し休憩をとりましょう」
「よろしいんじゃないですこと」
「意義なーし」
と口々にしながらみんなは部屋を出ていきます。
ニホンちゃんも後を追いかけるように部屋の外に出ます。

廊下では、何やらみんなひそひそと話し合っています。
「あのぉ・・・」
と、ニホンちゃんが声をかけてもみんな気づかなかったように通り過ぎます。
仲良しのポーラちゃん、トル子ちゃんも、うつむいてなにも話してくれません。
カンコ君はといえば誰かを捕まえてはひそひそと説得しています。
もちろん相手の方は聞き流しているようですが・・・
そんなカンコ君を見てちょっと不安になるニホンちゃんですが、
(一度決まったことだし、きっと大丈夫よね・・・みんなわかってくれてるはず・・・
 それにカンコ君みたいなやり方大人気ないし・・・)
と思って、みんなへの説得はしないこととしました。
しかしこの考えが甘かったのです。ニホンちゃん、後で現実を知ることとなります。
と、隅の方で誰かが頭を抱え込んでしゃがんでいるのを見つけます。チリ君です。
「チリ君、どうしたの?大丈夫?」
「あ、ニホンちゃん。あ、いや、その・・・」
ブブブブッと音がします。携帯のバイブの音とすぐわかりました。
「・・・・・・まただ・・・・・・」
チリ君、ポケットから携帯を取り出します。
ちら、とニホンちゃんを見て
「・・・・・・実は・・・・・・」
携帯の画面をニホンちゃんに見せます。
そこにはなんと、
件名:日本海は東海ニダ!! 送信者:カンコ
というメールが、画面いっぱいにならんでるのです。
「うわっ!・・・なにこれ?」
「昨日からずっと、しかも夜通しかかってくるんだ・・・」
(夜通しってことは、もしかしてカンコ君徹夜明け・・・?)
カンコ君を見やると、相変わらずまわりのみんなに精力的に説得しています。
みんなの顔は迷惑そうですが、カンコ君そんなことおかまいなしです。
チリ君、神妙な顔でニホンちゃんを見上げると、
「・・・それで、実はニホンちゃんにお願いがあるんだけど・・・」
「おい、チリ!」
声の主はアメリー君です。
「ちょっと話があるんだが・・・」
「あ、・・・ああ、うん。わかった」
「え、何?」
「悪いがニホンちゃんは遠慮してもらえるかな」
「えっ?・・・」
とまどうニホンちゃんをよそにその場を離れるチリ君とアメリー君。
ニホンちゃんの胸に、何ともいえない不安が広がります。
会議が再開されました。
始まるやいなや、チリ君、
「えー、先ほどカンコ君から発議のあったニホン池の呼び名に関してですが、
 カンコ君の言い分を聞いたところ、とりあえずこの会議に限って、ニホン池、東池の
 両方の名前で呼ぶことにしたいと思います」
「えええええっ!!!???」
驚くニホンちゃん。
「当然ニダ、ニダ、ニダ」
動揺するニホンちゃんを尻目にウンウンと悦に入って頷くカンコ君。
「ちょ、ちょっとま・・・」
「じゃあ多数決をとります」
ニホンちゃんの言葉をさえぎるように進行するチリ君。
「両方の名前で呼ぶことに反対の方、手を挙げてください」
ニホンちゃん、助けを求めるように周りを見渡します。が、誰も手を挙げません。
ポーラちゃん、トル子ちゃんはうつむいたまま目を合わせてくれません。
アメリー君は少しムッとした表情で前を見据えたままです。
(・・・アメリー君?・・・・・・私がクジラ食べるのそんなに怒ってるの?)
「えー、それでは多数決により、この会議ではニホン池は東池と両方の名前で呼ぶこと
 にしたいと思います」
「そっ、そんな・・・」
「それじゃあニホンちゃん、さっきの意見、両方の名前で言い換えてもう一回言って
 くれないかな?」
「ええっ?・・・・・・」
ニホンちゃん、もう一度周りを見渡します。誰も目を合わそうとしません。
不運な事にカンコ君と目が合います。
カンコ君、こともあろうにニホンちゃんに向かって勝利のVサインを見せます。
一瞬殺意を覚えるニホンちゃんですが、他のみんなの表情を見渡すと、何だかすごく
みんなとの距離が遠く感じられます。
部屋の中で、自分が一人っきりになったような感覚を覚えます。
「・・・ニホンちゃん、いいかな?」
チリ君が発言をせかします。
「あ、ごめんなさい。・・・え、えと、・・・あの、私ん家の横にあるニホン池、
 ・・・と、・・・・・・と、・・・東池にいるクジラに関して・・・・・・」
ニホンちゃん、次の言葉が出てきません。
「・・・・・・・・・・・・」
ニホンちゃんの目にみるみる涙がたまってきます。
・・・悲しくて、悔しくて、寂しくて、それより何より、自分のふがいなさに情けなく
なったのです。
最近、地球組のみんなに、『ニホンちゃん変わったね』とよく言われます。
自分の意見をしっかり言うようになったと言ってくれます。
だけど、以前とぜんぜん変わらない自分がここいるのです。
・・・・・・部屋の中は気まずそうに静まりかえります。もちろんカンコ君を除いて。
「ニホン何やってるニダッ!後がつかえてるニダ!さっさと・・・」
「うるさいカンコっ!発言中だ!」
アメリー君が一喝します。
「どうぞ、ニホンちゃん・・・」
ニホンちゃん、意を決したようにチリ君を見据えると、震えながらも断固とした口調で
こう言いました。
「・・・こ、この、池の名前のことについては、私、正式に抗議したいと思います!」
「!!」「??」部屋の中が一瞬ざわめきます。さすがにカンコ君も慌てます。
「な、何言ってるニダッ!さっきみんなで多数決とった・・・」
ドンッ!!と机をたたくアメリー君。思わず黙り込むカンコ君。
チリ君、取り繕うように
「え、えーとじゃあ、この件に関してはまた次の時にでも話し合うこととして、
 他に意見のある方から進めたいと思います」
アメリー君は憮然とした表情で何も言いません。
ニホンちゃんも、納得できないところはありながらもチリ君の進行に従います。
そんなこんなで、気まずい雰囲気に包まれたまま、会議は進みました・・・


糸売

解説 黒瓶 ◆L3dPScc3M2 投稿日: 02/11/19 14:28 ID:cLBJSaOX
長くなったのとPCの調子悪いので前後編わけました。
書いてる途中でいろいろおきるんだもん・・・

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