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第1308話  投稿日: 02/11/28 03:20 ID:XSx5ejLb
「黄金の薙刀1」

「なぁ、ニホン。ちょっと聞いていいか?」
 ある日、珍しくためらいがちに質問してくるのはアメリー君。
「うん、いいけど?」
 いつになく及び腰の彼を不思議に思いながらも
可愛らしく小首を傾げるニホンちゃん。
「あ…あのな、日ノ本家の女性はみんな、
 素手で男の首をへし折るってホントかい?」
「へ??」
「あと、ナギナタっていうのかな。鎌のついた槍を
 振り回して押し寄せる敵をバッタバッタと」
「ええ?? ニホンちゃん、それって本当なの?」
「…まさかとは思ってたが、そこまでの実力の持ち主だったとは…
 イカすぞ。ニホン!」
 そばで聞き耳を立てていたタイワンちゃんとアーリアちゃんも
寄って来ました。
「黄金の薙刀2」

 鬼気迫る勢いで語るアメリー君に「すごいすごい」を連発する
タイワンちゃん。それに自らも体術を極めているためニホンちゃんに
尊敬の眼差しを注ぐアーリアちゃん。
 放っておいたらどんな噂が広がるかもわかりません。
「ちょっと、ちょっと待ってよ二人とも! アメリー君も
 いきなりそんな事言わないでよ。出来るわけないよ!」
「でもさ、これに書いてるんだ。
 ニホンがそう言うならそうなのかもしれないけど」
 まだ疑うような顔つきで一冊の本を差し出します。小説のようです。
「ええと? …<トモエ・ゴゼン・サーガ>……!?」
 その本はジェシカ・アマンダ・サーモンスンというアメリー家出入りの
作家さんが書いた、明らかにニホン家を舞台にした冒険小説のようです。
「じゃあ、そのトモエ・ゴゼンてのは架空の人物なんだな?」
「違うよ、実在するご先祖様だよ」
 と言ってしまってから、“しまった!”という顔で思わず口を塞ぐニホンちゃん。
「なら…なら、この素手で首の骨をへし折ったとかいうのは…」
 じりっと一歩身を引きながら聞くアメリー君。スーパーヒーローものの
お話は大好きな彼ですが、今回ばかりはちょっと違うようです。
「黄金の薙刀3」

「……それも、ホントなの…」
 さすがにウソをつくわけにもいかず、小さな声で答えるニホンちゃん。
 と、その瞬間。ガタン!と椅子がひっくり返る音と
「ヒイィィィ、ニホンは化け物ニダァァァ!!」
 泡を吹いて倒れる生物学的な絶叫が響きます。
「うわぁぁん! またヘンな噂広がっちゃうよぉ!」
 思わず机に突っ伏すニホンちゃん。最近のカンコ家との絡みで
色々と注目される彼女、いつも周囲の目が気になっているようです。
「でも、でもさ、小説は小説なんだしニホンちゃんはニホンちゃんだよ。
 ね? ね?」
 そこは付き合いの長いタイワンちゃん。間髪入れずフォローに回ります。
「あ、ああ。そうだ。例えニホンがそうであっても私はニホンを支持するぞ」
 相槌を求められてトンチンカンなことを言い出すアーリアちゃん。
「ま、こいつにはいい薬なんだろうけどな」
 そう言って見やった先には、泡を吹いて気絶したカンコ君がひくひくと
ひっくり返っています。

 その後数日の間、カンコ君は決してニホンちゃんに背中を向けなかったそうです。
「…いまのうち背後を取ってやるといいのかなぁ?」
 コソコソとこっちを向いたままカニ歩きの彼を見てボソリと呟くニホンちゃん。
その目がいつに無く危険な光を宿していたのは内緒です。
                              おわり
   

解説  投稿日: 02/11/28 03:57 ID:XSx5ejLb
 &です。たまたま手元にあった本に、
巴御前を主人公にしたアメリカの小説家、ジェシカ・アマンダ・サーモンスンの
“トモエ・ゴゼン・サーガ”のことが載っていましたのでネタにしました。
タイトルの「黄金の薙刀」というのも“ゴールデン・ナギナタ”という副題を
そのまま使ったものです。さしずめ黄金の国のスーパーヒロインといった
ところでしょうか。
 このお話、どうもクトゥルフ神話等と同時期の古いペーパーブックらしく
アマゾンでも検索できませんでした。なのでソースは
「ファンタジーの冒険」小谷真理 ISBN4-480-05774-9 P107
 です。どうも未訳らしいので詳しい内容までは分かりませんでした。
 詳細が分かれば、続編も作ってみたいと思いますけれども

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