戻る <<戻る | 進む>>
第1347話 ナナッシー 投稿日: 02/12/21 13:00 ID:ykAo5CpD
(勝手に第1331話>>29の続き!)

先日、カンコ君にぶつかって怪我をさせてしまったアメリー君。
カンコ君はご飯を食べないストを行ったり、ロウソクを4万本も立てたりなどして
しつこく謝罪(以下略)を続けていましたが、アメリー君今はそれどころじゃありません。
実は現在、中東班のイラク君が先生達の家庭訪問を受けている真っ最中。
イラク君は「俺は悪いことなんてしてないよ」ということを主張する文書を先生に提出し、
そのチェックを受けています。
イラク君を目の敵にしているアメリー君は、こっそりその報告文書を盗み見しては、
エリザベスちゃんと今後の対応を協議していたのです。
今日もその話し合いが長引き、下校する時にはもうあたりは真っ暗でした。
「う〜寒っ、早く帰ろっ」
マフラーをなびかせ、自転車を駆るアメリー君。
ひと気のない夜道に、自然とペダルをこぐ足に力が入りました。
アメリー君の吐く白い息が、みるみる長く引き伸ばされていきます。
そして街灯の下の角を曲がって小さなトンネルを抜けようとしたときです。
   『グチャ』
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
   『ガシャーン!』
アメリー君は道の真ん中に広げられた何かにタイヤを滑らせ、
そのままゴミ置場に突っ込んでしまいました。
「・・・・・・SHIT・・・・・・・」
ふらつきながらも何とか立ち上がったアメリー君。
額の痛みに手を伸ばすと、何かぬめりと濡れた感触がありました。
「・・・グ・・・一体何が・・・」
ハンドルを取られた場所まで歩いていくと、そこにはツンとする漬物の匂いがしました。
しゃがんで、付近に散らばっているものを確認しようとしたその時・・・

「アイムザパニージュ!!!」
  『バキッ』『ドカッ』『ボコッ』
「ぐはぁ!」
どこかで聞いたような怒声と繰り返し与えられる衝撃・痛み。
「くそっ、フラッシュピストンマッハパンチ!」
何とかシルエットを捕らえ反撃を試みましたが、
既にダメージを受けたアメリー君、思うように拳に力が入りません。
それでも何度かの手ごたえを感じると、相手は不審船並のスピードで逃げ出しました。
辛うじて勝利を物にしましたが、冬の寒空の下、
アメリー君の意識は少しずつ遠のいていきました。
「・・・OH・・・GOD・・・・」
「・・・ん・・・・」
次にアメリー君が意識を取り戻した時、彼は見たこともない部屋に寝かされていました。
白いウサギのぬいぐるみがアメリー君の顔を覗き込んでいます。
「ここは・・・」
頭だけ動かしてあたりを確認すると、一人の少女が新しい包帯の準備をしていました。
アメリー君の視線に気がつくと、少し怯えた表情をみせながらおずおずと近づいてきます。
「・・・君は確か・・・ラスカのクラスメートの・・・」
「・・・あ・・・はい・・・・チョゴリ・・・ニダ」
注意してなければ聞き逃しそうな程小さな声で、彼女-チョゴリちゃん-は答えました。
「・・・なんで俺が君の部屋に・・・イツッ」
上体を起したアメリー君でしたが、額の痛みに顔をしかめます。
その頭には少々不器用ながら包帯が巻かれていました。
他にも体のところどころに治療の跡があります。
「これは、君がやってくれたのかい?」
コクコク。チョゴリちゃんは少し頬を赤く染めながら、首を縦に振りました。
「慣れてないから上手くできなくて・・・ごめんなさいニダ・・・」
「い、いや、そんなことないよ。ありがとう。これで十分さ」
アメリー君は作り笑いをしながら、額の痛みに先程の出来事を思い出しました。
(あの声、それにシルエットだけだったが体型も覚えている。間違いない、あの野郎だ・・・)
途端に作り笑いは消え、アメリー君の顔に激しい憎悪と殺気が刻まれていきます。
それは、以前アメリー君の家が一部の悪意により大惨事を引き起こされた事件、
あの時にみせた物と同質でした。
そのアメリー君の変化をチョゴリちゃんは敏感に感じ取っていました。
「・・・あの・・・アメリーさん・・・カンコ兄を許してあげて欲しいニダ・・・」
「え?」
どうやら、チョゴリちゃんは事の一部始終を知っているようです。
「カンコ兄は根は悪じゃないニダ。
 ただ、ちょっと実のない自尊心と被害妄想が異常に激しくなる病気みたいニダ。
 アボジもオモニも同じみたい・・・でも、きっと話し合えば分かり合えるはずニダよ」
「・・・そんなことをお願いするために、俺を助けてくれたのかい?」
「!そ、そんなことないニダ!」
その小さい頭が取れてしまわんばかりに、激しく首を横に振るチョゴリちゃん。
「アメリーさんはいい人ニダ。家が今ちゃんと生活できるようになったのはアメリーさん家のお陰だし、
 キッチョム兄がウリ達を殴ったりしないのも、アメリーさんがちゃんと見張っていてくれるからニダ。
 ウリ達は、アメリーさんに感謝こそすれ、憎んだり反発する理由なんてないはずニダ。
 本当はカンコ兄もそう思っているはずニダが、病気のせいで劣等感が膨張して今あんなに・・・」
時々上目遣いでアメリー君の顔色を伺いながら、チョゴリちゃんは話し続けました。
その声はか細く弱弱しいものでしたが、小鳥のさえずりのように自然と耳に入ってきます。
それは、彼女が裏や虚実のない、心からの真実を語っているからでしょうか。
(・・・このお人よし加減は、ニホンちゃんに感化されたのかな・・・)
なぜか自然と笑みが込み上げてくるアメリー君に、キョトンとするチョゴリちゃん。
「ま、カンコとのことについては俺にも責任の一端があるんだし、事を荒立てるつもりはないよ」
チョゴリちゃんにすっかり毒気を抜かれてしまったアメリー君は、
カンコ君に仕返しする気もすっかり失せてしまいました。
心底安心した表情のチョゴリちゃんに「ま、これでいいか」と思うアメリー君でした。
そして、アメリー君が施設の玄関から出るのを見送るチョゴリちゃん、
うつむき加減に、もう一度アメリー君に話かけました。
「・・・あの・・・キッチョム兄のこと・・・」
キッチョム君に対しては厳しい態度で臨んでいるアメリー君、
優しいチョゴリちゃんが言いたいことはだいたい想像がつきます。
「・・・それについては、あいつの心がけ次第だな・・・」
やや険しい顔をしたアメリー君は、チョゴリちゃんに向かって手を伸ばしました。
殴られると思ったのか、ビクッとして身を縮めるチョゴリちゃん。
ですが、アメリー君はその手で、チョゴリちゃんの頭を優しく撫でました。
「・・・だけど、なるべく平和的な解決ができるように努力してみよう」
一転してぱあっと笑顔になるチョゴリちゃん、つられてアメリー君も笑顔になりました。

自転車を押しながら帰るアメリー君。
途中何度か振り返ると、その度にチョゴリちゃんが小さな手をブンブン振り回していました。
その姿も見えなくなるまで離れたところで、アメリー君は思いました。
(もし、親兄弟に今日のことが知られたら、チョゴリちゃんは怒られるかもしれない)
(それを覚悟の上で、俺を助けてくれたのだろうか)
(それでいて、俺に仕返しするのを止めるようにお願いなんて、お人よしにも程があるよな)
自分とはやや相容れない心情ですが、不思議と不快感はありません。
また、カンコ君のことも思い出しました。
(あいつのやってきたことって、結局俺と同じ事なのかな)
(やられたらやり返す、当然のことだと思ってたんだけどな・・・)
こっちの問題についてはいくら考えても結論が出ませんでした。
ただ、一つだけアメリー君が心に決めたことがあります。
(もう一度、謝罪してみよう)
(それでダメなら、もう一度話し合ってみよう)
(今までの関係を見直すことを望むなら、多少の譲歩もやむを得ないかもしれない)
(それでも、分かり合えないままでいるよりはよっぽどいいだろうな)

「・・・それっ」
元気に自転車に飛び乗ると、少し曲がったハンドルも気にせずスピードを上げていきます。
心地よい風がアメリー君の頬を撫で、その背後に吹き抜けていきました。

おしまい。

(解説)
ども、ナナッシーです。
えーと、reg様、勝手に続き作ってしまってゴメンナサーイ。
ソースは下のとおり。

http://japanese.joins.com/html/2002/1216/20021216185023400.html
http://japanese.joins.com/html/2002/1219/20021219122554400.html

かの国の良心をチョゴリちゃんに置き換えてみますた。
アメリー君の戦いとカンコ君の仕返しはちょっと意味が違うかもしれませんね。
それに現実はこんな甘い事にはならないでしょうが、ま、お話ということで。

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: