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第1532話 siki 投稿日: 03/05/22 21:55 ID:a6fUMzXZ
「彼方から謝罪を」
ニホンちゃんが縁側でのんべんだらりと日曜をすごしていると
口やかましい来客者がやってきました

「ニホンはいるハセヨ、しゃっしゃと出てくるニダ」

やってきた客人を迎え入れるニホンちゃんの顔はあからさまに、げんなりとした顔
お客はお隣りさんなのに、これからもご近所づきあいもあるのに、こんなんでいいのでしょうか?
でもニホンちゃんがそんな顔をするのも無理からぬ事
お隣りさんがニホンちゃんちに来る理由といえば、謝罪請求と謝罪請求と謝罪請求
あっ!あと賠償請求もありましたっけ
まあ、毎度毎度そんな理由で来られたら、げんなりするのも当然でしょう

「なに?カンコ君、なんのよう?また謝罪」

玄関を少しだけ開け、少しだけ顔を覗かせ来客に応対するニホンちゃん
その態度を見れば五歳の子供でも、ペットの犬でも嫌がっている事が丸分かりですが
来客者はそんな事は気にも止めませんというより嫌がってる事に気が付いていません

「ニダ、何度も何度もニホンに謝罪させているがウリの恨はちっともおさまらないニダ」
「ほんと、何度も何度も謝罪してるのに・・・・」
「で、ウリは考えその理由に気づいたニダ」
「どうせ、私の謝罪には誠意がこもってないっていうんでしょ」
「違うニダ、ウリの恨がおさまらない理由は・・・」
「理由は?」
「それはウリを酷い目にあわせたニッテイ本人からの謝罪がないからハセヨ」
「なるほど・・・でもそれは無理よ だってウチのおじいちゃんはもう・・・」
「そこで彼女に一つ頼んだニダ」
「彼女って誰?」
「だれって彼女ニダ」
「ごきげんようニホンさん」
「あれ?ハイチちゃん、たしかさっきまでカンコ君一人で・・・・あれ?」
「とにかく話の続きは家の中でニダ」
「おかしいなぁ 確かにカンコ君一人で・・・・」
「おじゃまします」
「あれ〜?」

家の中に入った三人、カンコ君は部屋の住みに座りこみ勝手に茶箪笥からとりだしたお菓子を文句を
いいながらパクついています
ニホンちゃんはそれを横目にハイチちゃん指示で訳の分からぬまま、椅子や机を動かしたり
カーテンを閉めたり・・・
それが一段落するとハイチちゃんは奇抜な燭台やら妖しげなナイフやらを机の上に並べながら
自分がココに呼ばれた訳を説明し始めました

「ワタシが今日よばれたのはカンコ君がニッテイさんに謝罪をしてほしいと・・・」
「だから、もうお爺ちゃんは亡くなって」
「ですからワタシが呼ばれたわけです、これよりココで交霊の儀を執り行います」
「はぁそうですか・・・」
「それでニホンちゃんには霊を寄せるための依童になってもらいます」
「はぁしかたがないなぁ」
「あら、えらくあっさりと引き受けますのね、普通は依童になるのは嫌がるものですが」
「ワタシにも学習能力はあるもん、いやがっても結局、やらせられる運命」
「過去に何があったのか知りませんが・・・とにかく始めましょうか」

カーテンを締め切った薄暗い部屋の中で交霊の儀は始まりました、
部屋にたちこめる香、ハイチちゃんの唱える不思議な呪文がニホンちゃんの意識を深い闇のなかに
沈めていきます

「ウルラウルラウルラ ウルラウルラウルラリー ウルラウルラウルラ
 ウルラウルラウルラリー・・・・・・彼方の名前は?」
「わしの名前はニッテイ」
「・・・・・・・カンコ君、ニッテイさんが来て下さったわ」
「ようやくニダか、だいぶ待たされたハセヨ やいニッテイ」
「ん? ヌシはもしかしてカンコの倅か、そうであろう顔が奴に似て個性的ゆえに直ぐに分かったぞ」
「ウリの顔の事などどうでもいいニダ、それよりも、ニッテイの爺はウリに謝罪しる」
「謝罪?なにを謝罪すると言うのだ、我はヌシに謝罪しなければならぬ憶えはないぞ」
「お前が過去に行なった数々の悪行非道、忘れたとは言わせないニダ」
「我が知らぬまに他人に迷惑をかけたのなら謝罪もするが、
 お前には感謝こそされ謝罪する憶えは無いぞ」
「アイゴー 過去の謝罪をしないばかりか、開き直りニダか!
 そっちがその気ならこっちにも考えがあるニダ」
「ほう」
「反省しないのならニホンの家を攻め滅ぼしてやるニダ」
「ほほう、ヌシにそんな事ができるかな?」
「できるニダ、ニホンのジエイタイなんか怖くないニダ、数々の実戦で鍛え上げられた
 ウリの前ではニホンなんか敵では無いニダ」

カンコ君のその発言を聞いたニホンちゃん(ニッテイさん)は
椅子から立ち上がり、両手を広げ天にかかげ 

「愚かなり、カンコ!!」
「ニダ?」
「ニホンを守るわジエイタイだけに有らず
 その濁った眼では真を見る事はできずや、心の眼を見開きしっかと見よ
 ニホンを守りし二百四十六万余柱の英霊を」
「ひぃ〜〜〜」

いったいカンコ君は何を見たのでしょう、何も無いはずの空間を見つめ顔面蒼白になっています

「ひぃひぃひぃぃぃぃ」

腰が抜けたらしく、這いつくばって部屋の隅で休んでいるハイチちゃんの側に擦り寄り
震えて歯の根がかみ合わない口から必死で声をあげます

「ハ ハ ハイチ、しゃしゃとニテお ジョレいしる!」
「あら いいのですか? まだ謝罪を聞いていませんが」
「そんなのは、どうでもいいニダ、早くしるニダ」
「まあ、そういうわけですからニッテイさん今日のところはお引取りを」
「うむ では帰るとするか、ニホンには我がよろしくと言っていたと伝えてくれ」
「はい」
「でわ 然らばだ」
そう言い残しニッテイさんの霊は帰ったらしく、ニホンちゃんは椅子に座り込み
目を閉じます

「ニホンさんニホンさん」
「ん? ハイチちゃん?」
「おつかれさま、儀式はもう済みましたよ」
「終わったの? あれカンコ君そんにへたり込んでどうしたの?」
「ゼェゼェゼェ」
「これでもう、カンコ君に『謝罪しる』なんていわれないのよね?」
「・・・・・・・アイゴー ニホンは謝罪しる〜〜〜!!!!」
「ひぃ〜〜〜ん やっぱり変わらぬまま、お約束はけんざいなのねぇ(泣」

おしまい



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